水の失われた神々

主道 学

文字の大きさ
上 下
116 / 134
水淼の神々

116

しおりを挟む
 微睡みから……。
 目を開けると……。
 柔らかい光が……。
 
 そして、優しい声が、伝わってくる……。
 
 きっと、あいつだ。
 今頃は、俺の家で階下へ行って父さんと母さんに挨拶している。

 いつもの食卓には、麻生の料理が半分載って、お替りをあまりしない俺に、少しは食べなさいと言って……。

「武……」
 ほら、きっと、階下からあいつ……麻生が呼んでいるんだ。

「武さん……」
 ほら、きっと……?

「起きろ!」

「わ!」
 俺は飛び起きた。
 俺は温水と冷水の入り混じった川の流れの中にいた。いや、正確には川に浮きでた岩の上にいた。岩の上は所々、苔が生え微量な熱を帯びている。隣には東龍が俺の顔を覗いていた。

 天井を見上げると、くっきりと丸い穴の開いたガラス窓があり、遥か空が見える。そこにバルコニーのようなところがあって、美しく、しかも可愛らしい女性が立っていた。
 彼女は、こちらを見下ろしては、こちらへ焦りながら手招きをしていた。

「姫?!」
 東龍の声に、俺はあの女性が乙姫だったと思い出した。
 確か竜宮城の奥の間で、東龍と戦って、それから……?
 それから……。
 何だったっけ……?

「武よ! 起きろ! 先に行っているぜ!」
 隣の東龍が叫んでいる。
 俺には何が何だかわからなかった。
 東龍は先に川の中へと飛び込み。その勢いで水を掻き分けながら流れに逆って、泳いで行った。珊瑚の壁面にぶら下がる縄梯子へと泳いでいるようだ。

 俺は上半身を起き上がらせた。身体はどこも痛くなく。いつもの状態だ。 
 東龍は縄梯子を登りながら、こちらに振り向くと、
「武! これから奴と戦うんだ!」
「え?! なんだって?! 誰とだ?! 地球での決着はまだついていないわけか?! ……ここはどこだ! 湯築! 高取! 鬼姫さん! 光姫さん!」
 俺は辺りを見回しても、蓮姫さんも地姫さんも誰もいない。
 
「東龍よ! 早く! 水淼の大龍が(すいびょうのおおりゅう)が! 来る!」
 乙姫の傍に、北龍が駆け寄って来た。
 均整のとれた北龍の顔がここから見えたが、その身体はボロボロで、満身創痍だった。

「武! 俺と一緒に来てくれ! 何故、この星の水が無くなったのか! その理由! 何故、地球へと侵略しないといけなかったのか! その理由! それを自分の目で確かめてくれ!」
 東龍はあっという間に縄梯子を登り切り、乙姫たちと消えた。いや、俺の視界から消えたんだ。

 俺は左手に、手紙が握られていることに気が付いた。
 開けてみると、高取からの手紙だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

お父様の相手をしなさいよ・・・亡き夫の姉の指示を受け入れる私が学ぶしきたりとは・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
「あなた、この家にいたいなら、お父様の相手をしてみなさいよ」 義姉にそう言われてしまい、困っている。 「義父と寝るだなんて、そんなことは

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

親戚のおじさんに犯された!嫌がる私の姿を見ながら胸を揉み・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
親戚のおじさんの家に住み、大学に通うことになった。 「おじさん、卒業するまで、どうぞよろしくお願いします」 「ああ、たっぷりとかわいがってあげるよ・・・」 「・・・?は、はい」 いやらしく私の目を見ながらニヤつく・・・ その夜。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...