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水淼の神々
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微睡みから……。
目を開けると……。
柔らかい光が……。
そして、優しい声が、伝わってくる……。
きっと、あいつだ。
今頃は、俺の家で階下へ行って父さんと母さんに挨拶している。
いつもの食卓には、麻生の料理が半分載って、お替りをあまりしない俺に、少しは食べなさいと言って……。
「武……」
ほら、きっと、階下からあいつ……麻生が呼んでいるんだ。
「武さん……」
ほら、きっと……?
「起きろ!」
「わ!」
俺は飛び起きた。
俺は温水と冷水の入り混じった川の流れの中にいた。いや、正確には川に浮きでた岩の上にいた。岩の上は所々、苔が生え微量な熱を帯びている。隣には東龍が俺の顔を覗いていた。
天井を見上げると、くっきりと丸い穴の開いたガラス窓があり、遥か空が見える。そこにバルコニーのようなところがあって、美しく、しかも可愛らしい女性が立っていた。
彼女は、こちらを見下ろしては、こちらへ焦りながら手招きをしていた。
「姫?!」
東龍の声に、俺はあの女性が乙姫だったと思い出した。
確か竜宮城の奥の間で、東龍と戦って、それから……?
それから……。
何だったっけ……?
「武よ! 起きろ! 先に行っているぜ!」
隣の東龍が叫んでいる。
俺には何が何だかわからなかった。
東龍は先に川の中へと飛び込み。その勢いで水を掻き分けながら流れに逆って、泳いで行った。珊瑚の壁面にぶら下がる縄梯子へと泳いでいるようだ。
俺は上半身を起き上がらせた。身体はどこも痛くなく。いつもの状態だ。
東龍は縄梯子を登りながら、こちらに振り向くと、
「武! これから奴と戦うんだ!」
「え?! なんだって?! 誰とだ?! 地球での決着はまだついていないわけか?! ……ここはどこだ! 湯築! 高取! 鬼姫さん! 光姫さん!」
俺は辺りを見回しても、蓮姫さんも地姫さんも誰もいない。
「東龍よ! 早く! 水淼の大龍が(すいびょうのおおりゅう)が! 来る!」
乙姫の傍に、北龍が駆け寄って来た。
均整のとれた北龍の顔がここから見えたが、その身体はボロボロで、満身創痍だった。
「武! 俺と一緒に来てくれ! 何故、この星の水が無くなったのか! その理由! 何故、地球へと侵略しないといけなかったのか! その理由! それを自分の目で確かめてくれ!」
東龍はあっという間に縄梯子を登り切り、乙姫たちと消えた。いや、俺の視界から消えたんだ。
俺は左手に、手紙が握られていることに気が付いた。
開けてみると、高取からの手紙だった。
目を開けると……。
柔らかい光が……。
そして、優しい声が、伝わってくる……。
きっと、あいつだ。
今頃は、俺の家で階下へ行って父さんと母さんに挨拶している。
いつもの食卓には、麻生の料理が半分載って、お替りをあまりしない俺に、少しは食べなさいと言って……。
「武……」
ほら、きっと、階下からあいつ……麻生が呼んでいるんだ。
「武さん……」
ほら、きっと……?
「起きろ!」
「わ!」
俺は飛び起きた。
俺は温水と冷水の入り混じった川の流れの中にいた。いや、正確には川に浮きでた岩の上にいた。岩の上は所々、苔が生え微量な熱を帯びている。隣には東龍が俺の顔を覗いていた。
天井を見上げると、くっきりと丸い穴の開いたガラス窓があり、遥か空が見える。そこにバルコニーのようなところがあって、美しく、しかも可愛らしい女性が立っていた。
彼女は、こちらを見下ろしては、こちらへ焦りながら手招きをしていた。
「姫?!」
東龍の声に、俺はあの女性が乙姫だったと思い出した。
確か竜宮城の奥の間で、東龍と戦って、それから……?
それから……。
何だったっけ……?
「武よ! 起きろ! 先に行っているぜ!」
隣の東龍が叫んでいる。
俺には何が何だかわからなかった。
東龍は先に川の中へと飛び込み。その勢いで水を掻き分けながら流れに逆って、泳いで行った。珊瑚の壁面にぶら下がる縄梯子へと泳いでいるようだ。
俺は上半身を起き上がらせた。身体はどこも痛くなく。いつもの状態だ。
東龍は縄梯子を登りながら、こちらに振り向くと、
「武! これから奴と戦うんだ!」
「え?! なんだって?! 誰とだ?! 地球での決着はまだついていないわけか?! ……ここはどこだ! 湯築! 高取! 鬼姫さん! 光姫さん!」
俺は辺りを見回しても、蓮姫さんも地姫さんも誰もいない。
「東龍よ! 早く! 水淼の大龍が(すいびょうのおおりゅう)が! 来る!」
乙姫の傍に、北龍が駆け寄って来た。
均整のとれた北龍の顔がここから見えたが、その身体はボロボロで、満身創痍だった。
「武! 俺と一緒に来てくれ! 何故、この星の水が無くなったのか! その理由! 何故、地球へと侵略しないといけなかったのか! その理由! それを自分の目で確かめてくれ!」
東龍はあっという間に縄梯子を登り切り、乙姫たちと消えた。いや、俺の視界から消えたんだ。
俺は左手に、手紙が握られていることに気が付いた。
開けてみると、高取からの手紙だった。
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