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孤島の戦い
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だから、私は武の方を見る。
薄暗いレストランの片隅で、武と光姫だけでなにやら話していた。
外は大荒れの雨風が吹き乱れ。龍の咆哮がそれぞれ近づいているかのようだった。いつの間にか、風に乗って不穏な空気がこのビルに集まっていた。
「その節は従姉妹の里奈が大変お世話になりました。これから一緒に旅に出ることを感謝しております」
武はいつもの几帳面で軽い調子ではなく。さすがにピンッと姿勢を正しているのだが、見惚れているかのようだ。なにやら光姫に対して静かに武者震いもしている。思えば鬼姫との最初の手合わせをした時にも武者震いをしていたようである。
武道の達人の武には相手の強さがよくわかるのだろう。
「はい。命を掛けて共に戦いましょう。では、よろしくお願い致します」
武は幾分ぎこちなく言うと深々と頭を下げた。
武は内心、これからの戦いに光姫が参加して光栄だと思っているのだろうか?
だが、恐らく光姫も内心同じく思っているのだろう。
二人とも相手に会えて、そして、旅に行けることが光栄なのだ。
「あ、ええと。光姫さん? あの、早速で悪いんですが。一度、お手合わせをお願いします。お互い実力をすぐに知りたいはずですし。このビルの外へ出たらどこか広い場所を探しましょう」
きっと、武は光姫にどうしようもない恐れを抱いているのだろう。
その気持ちは私にもわかるのだ。
これは目が離せないのではないだろうか。
だが、背後から切迫した空気を感じて周囲を見てみると、高取、湯築と鬼姫や蓮姫までもが武と同じ気持ちであった。
薄暗いレストランの片隅で、武と光姫だけでなにやら話していた。
外は大荒れの雨風が吹き乱れ。龍の咆哮がそれぞれ近づいているかのようだった。いつの間にか、風に乗って不穏な空気がこのビルに集まっていた。
「その節は従姉妹の里奈が大変お世話になりました。これから一緒に旅に出ることを感謝しております」
武はいつもの几帳面で軽い調子ではなく。さすがにピンッと姿勢を正しているのだが、見惚れているかのようだ。なにやら光姫に対して静かに武者震いもしている。思えば鬼姫との最初の手合わせをした時にも武者震いをしていたようである。
武道の達人の武には相手の強さがよくわかるのだろう。
「はい。命を掛けて共に戦いましょう。では、よろしくお願い致します」
武は幾分ぎこちなく言うと深々と頭を下げた。
武は内心、これからの戦いに光姫が参加して光栄だと思っているのだろうか?
だが、恐らく光姫も内心同じく思っているのだろう。
二人とも相手に会えて、そして、旅に行けることが光栄なのだ。
「あ、ええと。光姫さん? あの、早速で悪いんですが。一度、お手合わせをお願いします。お互い実力をすぐに知りたいはずですし。このビルの外へ出たらどこか広い場所を探しましょう」
きっと、武は光姫にどうしようもない恐れを抱いているのだろう。
その気持ちは私にもわかるのだ。
これは目が離せないのではないだろうか。
だが、背後から切迫した空気を感じて周囲を見てみると、高取、湯築と鬼姫や蓮姫までもが武と同じ気持ちであった。
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