水の失われた神々

孤島の戦い

６０

「では、私はこれからすぐにやることがあるので……失礼しますね」
　地姫は踵を返し、２年Ａ組付近に停泊している虚船丸へと戻った。虚船丸からは武士が数十人も降りて来ていた。きっと、これから龍との戦であろう。その準備である。
「これからどうなるんだ？」
　麻生の後ろに卓登がいた。

　生徒たちや教師は数人の武士と一緒に神鉄の入った瓶を自衛隊のいる教室へと運んでいた。自衛隊は神鉄を加工するのに忙しなく働いていた。

「この先、もう心配はないわね……」
「は？」

　卓登はそんな麻生の言葉にいつまでも首を傾げていた。

　雨が振り続ける海に囲まれたビルディング。海面の下には埋もれた道路や車がある。暗黒の空をカモメが飛び交う空の下。武たちは波立つ海水の上を歩いていた。
　もう武たちは東京にいるのだ。

　ここは東京都新宿区。
　武と鬼姫と蓮姫。湯築と高取。そして、三人組の少数で一番高いビルへ向かっている。エントランスへと辿り着くと、武たちは迷わずに高速エレベーターへ乗ったようだ。
　恐らくは高取が率先しているのだろう。
　さすがに、ここからは高速エレベーター内は見えなかった。