水の失われた神々

主道 学

文字の大きさ
上 下
41 / 134
いざ、旅立ちの日

41

しおりを挟む
「龍が一匹近づいている……」
 高取が自室で占いをしている時に感づいていた。
「これなら………。私たちでも大丈夫……」
 ここ大船の中でも、高取は武のことを頻繁にタロットカードで占っていた。先のことはあまりわからないが、そうでもしないとと思っているのだろう。
 高取のライバルはほぼ全員なのだから。
 


 轟々と音のする大荒れの海で、武は刀を抜いていた。神鉄という特別な鉄を鍛えた刀身だった。
 ここは存在しないはずの神社から二日後の南西へ300キロの地点。
 もうすでに、太陽が厚い雨雲に覆われ。大泣きの雨が激しく降りかかる海であった。武の目の前には龍がいた。
 こちらに気が付き、咆哮を上げている。
 湯築が船から飛び降り、海の上で助走して海面下へと潜った。
 龍もすぐさま海面下へ潜って大口を開けて迎え撃とうとしたが、その時、雷が一本龍の頭上を直撃した。
 雷を降らしたのは高取である。
 もんどりうった龍の脇腹を湯築の槍が海面下で見事数回穿った。
 武が甲板から飛翔し、たまらず浮上してきた龍の頭を一刀両断にした。

「武様……凄い!」
「よくやったわ」
 鬼姫と蓮姫はただそう言うしかなかった。
 それだけ武たちのコンビネーションと腕は、もう申し分ないのである。

しおりを挟む

処理中です...