水の失われた神々

主道 学

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日本が沈没へと向かう日

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 武は教室の隅で高取と何やら話していた。
 武の隣の麻生もこの時ばかりは沈みがちな顔だ。
「明後日には辿り着いているわ」
 高取は机に広げたタロットカードから一枚引いた。
 世界のカードである。
「俺が、どこかの神社に行くのか?」
「そう、そうしないと世界が……終わるのよ。私の占いの的中率は知っているわよね。ねえ、武さん。でも、あなたはこれから大きな力を得るの。その存在していないはずの神社で……」
 高取は世界のカードを目を瞑って無造作に引いていた。
「何度引いても昨日から世界のカードを引いてしまうの」
 それから、高取はおかっぱ頭が左右に揺れ、独り言のように呟いた。
「……スケベ」
「は?」
「明後日? そういえば高取さん。明後日は日曜よ。いくら何でも学校は休みよ」
 麻生は疑問をていし少し肩を傾けた。その先にはいつまでも武の肩があるかのようだ。時と場合を気にしない。そんな二人である。
 高取の手は震えていたが、麻生と武は至って平然な態度である。
 突然にブルブルと震えだした高取は、深呼吸をして、またカードを引いた。
 そのカードは、やはり世界だった。

 高取 里奈は机の下へとタロットカードをしまうと、一人溜息をついた。
 どうやら、高取も武のことを好いていると思われる。
 いつもは、静かにしているような態度で、感情というものを外へと出さないが。ここから見ても武を見る目は少し違っていた。
 麻生とは中学の頃からの親友だった。
 何を考えているのかわからない性格で、教室で遊び半分に麻生を占い。将来、武と結婚すると占ったのがきっかけだったが、それから高取は武の占いを密かに頻繁にしているようである。
 不穏な未来が読めたのであろうか?
 それとも、ただの興味か?
 もうすぐ下校時刻なので、高取は最後の授業を受けたようだ。

 


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