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Pride(傲慢)

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 息を潜めて階段を降り、丁度踊り場に足を着けると、窓から白い月が浮き出ているのを見た。アリスは何故か内心ホッとした。だが、アリスの向おうとしている使用人の老婆の部屋の廊下にも蝙蝠男が何人も佇んでいた。

「モート……」
 アリスは無意識にモートの名を呟いていた。

Pride 6

 漆黒と化した闇の中から、薄暗いアリスの屋敷の外観が見えて来た。
 モートは更に急いでアリスの屋敷へ、雪の掻き分けられた橋に、凍っていない鉄柵。綺麗に磨かれた大扉を通り抜けていく。周囲は質素な家具だが、実は値の張る調度品などを通り抜け、二階へと真上に飛んだ。

 床を勢いよく通り抜けると、そのまた上の階へと飛んだ。

 モートはやっと、五階に到達すると、すぐさまベッドの周りに浮いている蝙蝠男の首を次々と狩って行った。 
 その一体がモートに大口を開けて襲いかかる。
 階下、東、西、階上。全てにおびただしい数の蝙蝠男が羽音を発し、浮遊していていた。
 Pride 7
 
「ヘレンさん! 今からジョンの屋敷へと私と一緒に行くのです! さあ、早く! そこにはジョンの最大の秘密があります! 前はまだ時期尚早だったのです!」
 オーゼムはナイトガウン姿のヘレンを促した。ヘレンは頷くとすぐに着替えに自室へと向かった。
「手遅れにならなければいいのですが……。モート君。この賭けは今までとは違い。レートが高すぎますよ……」

 オーゼムの独り言がヘレン走っている小耳に聞こえていた。

Pride 8

「ぐっ!」

 モートは蝙蝠男の牙で凄まじい苦痛を与えられていた。噛まれた右腕からは鮮血がおびただしく床に落ちていった。
 なかなか蝙蝠男の口を引き離せず。困っていると、突然にガツンと蝙蝠男の頭に誰かが花瓶をぶち当てた。モートは驚いてみると、アリスが割れた花瓶を持って佇んでいた。
「アリス! 危険だからどこか安全な場所に隠れていてくれないか!」
「それより、モート。使用人のアンネおばあちゃんが危ないのです! すぐに助けに行ってください! お願いします!」
「わかった……すぐに行くよ」
 モートは鮮血で塗れた右腕をコートで拭ってから、すぐに頷き斜め下の赤色の魂を持つもののところへと真下の床を通り抜けると、斜め下へと壁の中を通り抜けながら急いだ。
 幾つも幾つも有名な天井画家による天使の絵や花々が描かれた天井、透き通った透明感のある壁、重厚なカーペットの床を通り抜け、モートは西館と東館の中央まで赤色の魂に向かって走った。老婆の使用人部屋は廊下の端っこにあった。こじんまりとした部屋だった。その部屋のドアの面前に蝙蝠男が数人。パタパタと羽を鳴らし浮遊していた。

 モートは素早く近づくと同時に、全ての首を狩った。
  鮮血で汚れた銀の大鎌を洗いたくて、老婆のドアをノックした。
「アンネおばあちゃんですね。ここを開けて下さい。お願いします」
 老婆が恐る恐るドアを開けると、モートの姿を見て「ヒッ」と短い悲鳴と共に失神した。

「……」

 モートは仕方なく。銀の大鎌を洗うのを諦めて、この老婆が立ち直るまで、護衛にここにいることにした。
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