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Pride(傲慢)

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 ノブレス・オブリージュ美術館の広大なサロンの一角で、暖炉がパチリと弾けた。その付近の質素な椅子でモートは首を傾け、しばらく寝むっていたが「あ! 忘れていた!」突然モートは叫んで飛び上がった。

「大事なことを忘れてしまうなんて! 蝙蝠男が空にたくさんいたじゃないか!!」

 モートは急いで一枚の絵画へと走り。
 銀の大鎌を取り出して、黒のロングコートと黒い服に着替えた。

 pride 2

「うん? 何?」
 アリスは無数の羽音でベッドから目を覚ました。
 暗闇の中。寝台の目覚まし時計を見ると今は深夜の2時を指していた。
 元は両親の寝室だった。アリスはたまに寂しさからこの寝室を使っていた。重厚なベッドから窓の外を見ると、黒い人影が数人この階の上。五階の自分の部屋へとパタパタと羽を鳴らしながら飛んでいた。
 
「モート……」
 布団を頭から被りアリスは小声でモートに助けを呼んだ。

 pride 3

 ドンドンとノブレス・オブリージュ美術館の青銅でできた正門が強い力で叩かれている。外はそれ以外は凍てついていた静かな夜だった。ヘレンは珍しく慌てているモートを連れ、ナイトガウン姿で正門に取りついた両開きの鉄柵を機械で開錠した。

 相手は血相変えたオーゼムだった。

 オーゼムは鉄柵が半開きなのに、顔を真っ赤にして身体を捻じ込み。モートのところへ転がり込んで来た。

 その拍子に120年前の巨匠の値が付けられない美術品がゴトリと傾いた。
 ヘレンは眉間に皺を寄せた。

「失礼! モート君! すぐにアリスさんのところへ! ルシファーの書。傲慢のグリモワールです!」

「わかった! すぐ行くよ!」

 モートはすぐさま半開きの鉄柵と正門を強引に通り抜けて、闇に溶けるかのように暗闇をかなりの速さで走って行った。

「いいですね! 蝙蝠は光に弱いですから!」
 オーゼムはモートの後ろ姿に叫んだ。

 pride 4

 銀世界の中の街。ここホワイト・シティをモートは一直線にヒルズタウンにあるアリスの屋敷まで様々なものの中を走り抜けていく。至る所にゴシック建築の建物が立ち並ぶヒルズタウンは、最高級の街並みだった。霜の降りたバロック建築の銀行も、お洒落なステンドグラスの窓を構え、400年前からある古城跡もそのまま街の外観としてあった。旅人たちからは皆、大いにいつかここヒルズタウンに住みたいと思われていた。

 高級車の往来も激しい道路も今の時間帯は何もない無音なぼっかりと開いた空間だった。モートは更に先を急いだ。

 猛スピードで数多の建造物も通り抜けていく。
 空からは真っ白な雪が舞い落ちていた。

 pride 5

 アリスは静かに両親の寝室から、階段を三階へと降りていた。丁度、この屋敷の中央に位置するところに唯一の使用人の老婆がいるからだ。
 老婆は祖父代々と長く世話役として雇われ続けていた。いわばアリスにとってはかけがえのない家族の一員だった。
 アリスは震える肩を極力抑え、モートが来るまでに三階へと降りようとしていたのだ。アリスの屋敷は大き過ぎるので、西館と東館とに区別されている。
 老婆の部屋はアリスの寝室と両親の寝室のあるところから少し離れた。東館と西館の真ん中辺りにある。
 















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