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Sloth (怠惰)

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 空は今では粉雪は吹雪いていた。
 ヒュウヒュウと風もでている。
 真っ白な線路には一直線にギルズの乗った車の車輪の後がついている。
 途中、白線からよじ登り。ホームから切符は買っていないがローカル線に乗った。モートは椅子に腰掛けるとパラバラム・クラブの女性が持っていたグリモワールも回収しないとと思った。珍しくモートはウトウトとすると、アリスの優しい声が聞きたいなと想った。

 Sloth 6

「はあー、ではもう一回言いますよ。モート君の家系は魔女で、魔女裁判をする異端尋問官の一団がモート君の住む村へと来たのです。その一団は丁度、旅の途中でした」

 オーゼムは溜息混じりに言った。
 今は夜の20時を回ったところで、アリスとヘレンはもう三回も同じことをオーゼムに言わせていた。
 「あの。オーゼムさん? その一団と村人の罪は何か関連しているのですか?」

 ヘレンはここまではオーゼムから聞いていなかったようで、アリスもショルダーバッグを少し肩からずらして、ヘレンと同じような質問をしようとした時、オーゼムは急にニッコリと微笑んだ。

「さあ、答え合わせです! 村人全員がモート君の家族を一団に話したのです。何も言わなければ、通り過ぎるだけで、それで良かったのですが。モート君にはその村にフィアンセがいました。それを激しく嫉妬していた村長の息子が村人全員を抱き込んだのです。そして、モート君の家には火が放たれました。生き残れば魔女。死んでしまえば人間。こういうことですが……その時、銀の大鎌を持ったモート君が火の中から現れました。その日。病が蔓延している時期で、教会に呼ばれていたモート君は、死神になる素質を持っていました。それまでは魔女の母親と共に病を看病していたので、死んだ人の魂に多く触れていたのです。そう、誰よりもです……教会にはグリモワールが安置してあり、火を放たれた後に、モート君はまずはグリモワールを開けました。村人全員が罪を持った。そう狩りの対象です」

 オーゼムはそこまで話すと、一つ咳払いをし、

「モート君はグリモワールによって死にました。そして、ジョンの最愛の人が教会の絵画へと封印をしたのですが……その絵画は古の魔女の母親の絵だったのです」

 アリスは心底、モートに同情をした。
 肩にぶら下げたショルダーバッグが床に落ちた。
 アリスは自分が泣いていることに気が付いた。
  サン新聞より抜粋

 昨日18時26分から19時30分の間に起きた。セントラル駅での一台の車両の暴走は、多くの怪我人をだすも、線路上で何らかの事故により。犯人のギルズ・マイト容疑者は死亡。なお、同氏を警察は余罪について追及する姿勢であると発表。
…………
 ヒルズタウンの路上にて凍死寸前だったパラバラム・クラブ大量殺人のミランダ・アーリントン容疑者は、警察が保護。その後、事件との関連性を追及する模様。

 モートはオーゼムとノブレス・オブリージュ美術館の玄関先で新聞を読んでいた。空は凍てついているが、吹雪は止んでいた。アリスはすでに家に帰り今は夜中の23時を回った頃だ。

「期待以上ですね。さすがです。モート君……」
「ああ。今日は本当に疲れたよ……」

 モートは二冊のグリモワールをオーゼムに渡した。オーゼムは新聞を脇下に挟むとニンマリとし、そのグリモワールを片手で光の奥へとしまった。

「良かったですね。これでギルズの持つ憤怒の書。サタンに、ミランダという女性の怠惰の書。ベルフェゴールが回収できました。モート君。お疲れ。明日に備えてゆっくり休んでくださいね」
「……今日は久しぶりに寝よう……」
「それでは」

 モートはノブレス・オブリージュ美術館の館内へと重い足取りで向かい。
 オーゼムは新聞を折りたたんで持つと、そのまま軽い足取りで横断歩道を渡ってバス亭へと歩いて行った。
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