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Sloth (怠惰)

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 ノブレス・オブリージュ美術館の入館料は金貨18枚にも匹敵し、普通の仕事では毎日、毎週も美術品を観て回るという贅沢はできなかった。着飾った人々はホワイトシティでも上位の裕福層の人々。つまりは公爵クラスの貴族の人たちだった。

 そんな貴族の人々をヘレンはいつも接待をしている。
 
 モートは母の絵をしばらく見つめていた。
「母さん……今はまだ何もお思い出せないけれど、きっとあの時……ぼくと共に死んだんだね」
 モートはその時、黒い魂の居場所に目が行った。
 このサロンの13枚の絵の中央に位置した絵画の向こう。
 ここノブレス・オブリージュ美術館から遥か南の方のヒルズタウンにある建物に、黒い魂を持つものが一人いた。
 モートは何故か懐かしさを覚え。口に出した。

「ギルズ……」
 ギルズは強欲の書で、グリーンピース・アンド・スコーンの組織を牛耳るボスの名で、オーゼムが逃がしてしまった男だ。

 モートは何か胸騒ぎがして、奇妙な感覚を覚えた。

「憤怒の書。サタンがあるな……ギルズがあの猿の集団を召喚していたんだ! オーゼムはまだ来ないけど、すぐにぼくが行かないと。後のグリモワールは怠惰と傲慢だ。このどちらかあるいは両方も警戒しないと、怖いけど行くしかない」


 モートは一枚の絵画からずっしりとした銀の大鎌を持ち、瑞々しい花の飾られた大扉を通り抜け、外へと向かった。
 
 
 真夜中の天空には顔馴染の白い月がでていた。昔のことだ。いつだったか、農作物を夜中まで運んでいた頃に、白い月とは友達になったかのようだった。姉さんは夜が明かりがないからきっと足元を照らしてくれているのよ。と言っていたっけ。
 不思議と親近感が湧く。

 ぼくには意外なほど不思議な力が小さい頃から備わっていて、あの殺戮の日にも夜空に髑髏が浮かんでいた。その髑髏はぼくを時には逃がしたり、時には人々の魂を喰らった。

 そう、ぼくの母は古の魔女だった。
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