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第三章 アルフス様に作られたゴーレムの無念を晴らす戦い

決着

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伝説級魔法レジェンドマジック隕石落下フォールメテオ!」

「きゃー! 危ないです! アルフス様ー!」

「あ、ずるいにゃ! ボクも!」

 ラピスは伝説級魔法レジェンドマジックの一つ、隕石落下フォールメテオを放つ。

 それと、ほぼ同時のタイミングで、何故かカトレアがアルフスへと抱きついた。
 そして、それに遅れてネローもアルフスへと抱きつく。

 ラピスの隕石から、アルフスを守ろうとしての行動だろうか。
 しかし、それにしては二人ともアルフスの両腕にしか抱きついていないため、効果があるのかは不明である。

「……気持ちは嬉しいが、そこまでしなくていいぞ。実際に当たったとしても、大したダメージも食らわないしな」

「ダメージなんて関係ありません! アルフス様に攻撃が当たることが許せないんです!」

「そうですにゃ! だ、だからもうちょっとこのままで……」

「ちょ、ちょっと! 私も」

 やはり、カトレアたちはアルフスを守ろうとしての行動だった。
 しかし、隕石が降り終わった今も離れないのは少し気にかかる。
 なんなら、しがみつく力が強くなっているのではないか。

(何だこの状況は……)

 何故かラピスに関しては、降り終わった後に抱きついてきた。
 現在、アルフスの右腕にカトレア。左腕にネロー。胸元にラピスがいる。


「……まだ半数ほど残っているな。隕石落下フォールメテオは攻撃範囲は悪くないのだが、命中率に難ありといったところか」

「――も、申し訳ありません! 私が未熟な故だからです!」

 ラピスが胸元に顔を埋めていた状態から、急いで顔を上げた。
 隕石落下フォールメテオは、隕石を作っても軌道操作自体は出来ないので、確実に命中させることは不可能なのだが、そんなことはラピスにとって関係ない。
 楽しむためにあえて弱い魔法を使ったのだから。

 この様子だと、アルフスは一撃で決めて欲しかったのだろうか。
 それならば、期待に応えることが出来なかったラピスが悪い。
 今度は一撃で決めるだけだ。

「お望みならば、今すぐにでもプロメシル王国を殲滅致します!」

「うーん。折角だからカトレアとネローにも楽しんでもらいたのだが、数が多すぎるか? どうだ二人とも」

「とても嬉しいご提案なのですが、私は多数を相手にするのに適していませんので、遠慮しておきます! なので、アルフス様の身を守っておきますね」

「ボクも同じですにゃー」

 カトレアとネローの意見が変わることは無かった。
 何があってもこのポジションを譲るまいという鋼の意思だ。

 ならば、とアルフスは呟き。

「ラピス。お前に任せるとしよう」

「かしこまりました!」

 ラピスは嬉しそうに返事をすると、もう一度空中に飛びたつ。
 そして、プロメシル王国殲滅のために、ラピスの容赦ない魔法が襲いかかる。

液体の世界リキッドワールド!」

 ラピスの使った魔法は神級魔法ゴッドマジックだ。
 確実に殲滅するという意志が、痛いほどに伝わってくる。

「すごいな……」

 あまりにも過剰な魔法に、アルフスも驚きを隠せない。
 何か嫌なことでもあったのだろうか――なんてことを考えていた。

 液体の世界リキッドワールド
 神級魔法ゴッドマジックなだけあって、プロメシル王国は甚大な被害を受ける。

 隕石落下フォールメテオによって出来上がった死体。そして生き残った半数の戦士たち。
 彼らが全て――液体になった。
 溶けた――と表現してもいいだろう。

 彼らはどうしようもなかった。
 液体の世界リキッドワールドは、制限こそあるものの、プロメシル王国全体を包むには十分な射程距離を誇る。

 たとえどんな防具を持っていても、防ぐことはできない。
 逃げることも、ガードすることも、だ。

 アルフスのように耐性、もしくは防御スキルを持っていれば話は別なのだが、どうやらプロメシル王国の戦士たちは持っていないようだ。

 戦士たちは為す術もなく溶けて、地面に吸い込まれてゆく。
 地獄絵図。
 という言葉がピッタリだろう。

「ラピスが張り切ってますにゃ」

「……そうだな。ストレスでも溜まっていたのだろうか。それなら、こういう機会も作ってあげた方が良いのかもしれん」

「多分、ずっと部屋に引きこもってたからじゃないですかねー? ストレスが爆発するようなタイプじゃないですし、放っておいてもいいと思いますよー」

「そ、そうなのか? ならばいいのだが……」

 目の前で国が崩壊しているとは思えないような雰囲気がアルフスたちにはあった。
 一家団欒――と言うべきか。
 ピクニックにでも来ているかのような雰囲気だ。

「この様子ならジェニーも連れてきてやれば良かったな。いいまとがあって魔法の練習も出来ただろうに」

「そう言えばジェニーちゃんって、全然私の所に遊びに来てくれないんですよー! エマの部屋には行ったっていうのにー」

「ジェニーは、カトレアと違って忙しいんだにゃ。図書館で勉強してることが多いから、カトレアから出向いてあげたらどうにゃ?」

「え! そーなんだー。確かにそっちの方がいいかも」

「フフフ、ジェニーもディストピアに馴染めてきたということか――お、終わったようだな」

 雑談に花を咲かせていた三人が、何かに気付く。
 こちらへ戻ってきているラピスの姿だ。
 そして、それは戦いの終わりを合図していた。

「終わりました!」

「ご苦労。少々警戒していたが、拍子抜けの相手だったな」

「アルフス様に喧嘩を売った愚か者には相応しい最期ですにゃー」

「自業自得ってやつですね!」

 アルフスたちが見渡すエレマー平原には、文字通り何も残っていない。
 戦士たちはもちろん、戦士たちが纏っていた鎧でさえもだ。

 全部が全部、これも文字通り土に還ってしまった。

「プロメシル王国自体の制圧は、適当な下僕に任せるとしよう。戦士を失った国を堕とすなど、赤子の手をひねるようなものだからな」

「アルフス様に手をひねられたいですにゃー」

「……ネロー。分からなくもないけど、今はそんなことを言ってる場合じゃないわよ」

「よ、よく分からないが、まあいい。一旦ディストピアに帰って勝利を祝うとしよう」

 アルフスたちはそう言うと、瞬間移動テレポートでディストピアへと帰還した。

 プロメシル王国の国民たちが地獄を見るのは、これから数日後の話である。
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