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第一章 才媛
再対面
しおりを挟むジェニーをファミリアーに預けてから二日が経った。
この二日間は、ジェニーに大まかな基礎を学ばせるため、ファミリアーが切磋琢磨していた時間だ。
ファミリアーから、基礎を教え終わったという報告を受けたアルフスは、軽い足取りでジェニーの元へと向かっていた。
「お、おはようございます。アルフス様」
アルフスが到着するや否や、ジェニーが深々と頭を下げ、丁寧な挨拶をした。
アルフスも少し遅れて挨拶をする。
「おはよう、ジェニー。もう言葉は覚えたのか?」
「は、はい。ファミリアーさんから教えて頂きました」
まだ少々おぼつかない様子ではあるが、ジェニーはきちんと言葉を喋れていた。
元々内気な性格であり、アルフスを目の前にしているという事を差し引くと、なかなか上出来である。
「一応聞いておくが、私が何者か知っているな?」
「勿論です。アルフス様は、私を家畜の中から救い出してくださった、偉大なる御方でございます」
アルフスは念のため、ファミリアーがとっくに教えているであろうことを聞いた。
一応で聞いただけなので、特に追求はせず話を進める。
「うむ。それで、お前はファミリアーから基礎を教えて貰ったはずだが、これからは実践的な事を教えていこうと思う」
「わ、分かりました! 尽力させていただきます」
ジェニーはやる気に満ちたように答えた。
その目からは、がんばるぞといった意気込みが聞こえそうな程である。
「冥府の八柱の中から、数人に頼むとしよう。まずはラピスという者の元で、魔法について学ぶようにしている。場所はファミリアーに聞けば分かるだろう」
「かしこまりました。そ、それでは」
「ああ、お前の成長を楽しみにしているぞ」
アルフスは、そう言い終わると瞬間移動で姿を消す。
部屋にジェニーが残され数秒経過すると、部屋の奥からファミリアーが姿を現した。
本来なら主人が目通りになった際、姿を見せないことは不敬とも言える。
勿論ファミリアーもそのことは、耐え難いことであったが、泣いて馬謖を斬る思いで辛抱していた。これもジェニーの教育の一環なのだ。
アルフスとの会話は、この二日間の集大成ともいえる。
ジェニーが、緊張と恐怖で喋れなくなってしまうことも、ファミリアーは危惧していたが、どうやら杞憂で終わったようだ。
結果としては上出来という結果で幕を閉じた。
「ジェニー、お疲れ様でした。あなたの尊敬するアルフス様はいかがでしたか?」
「素晴らしい御方でした……偉大で不可侵で跪きたくなるというか」
「……また一歩成長しましたね。さて、ラピスを待たせてもいけません。案内するので付いてきて下さい」
「は、はい」
ファミリアーに先導され、ジェニーはラピスの待つ部屋へと向かう。
ジェニーがこの二日で学んだのは全て基礎だ。
今日からが本番と言ってもいいだろう。
わくわくと不安を半分ずつ抱えたまま、ジェニーは歩を進めた。
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