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第十六章
天使様
しおりを挟む「お、焼けてきたのじゃ。どうじゃ、食うか? オズ」
「そうするよ。というか、僕が取ってきたキノコだし、僕が焼いているんだけどね」
持参した酒をチビチビと飲みながら、エルネは焼けつつあるキノコを眺めていた。
そのキノコは、まるで肉が焼けているかのような匂いを放っており、エルネの好みな匂いである。
「なんだか高そうなキノコですけど、沢山生えていたんですか?」
「うん、結構生えてたよ。ただ、高そうじゃなかったなー。沢山生えてるってことは、そういうことだと思うし」
「正直値段なんてどうでも良いのじゃ。問題は味じゃしな」
「確かに高いお酒が美味しいってわけじゃないもんね」
「それは微妙な例えじゃが、まあ良いじゃろう」
他愛のない会話をしながら、エルネたちはキノコの出来上がりを待つ。
オズはじっくりと焼くタイプの人間だ。その目つきは、獲物を狙う動物にも劣らない。
ウィルとは違って、安心して任せていられる。
「そういえば、もし毒があったらどうしますか? 私たちには効きませんけど、オズさんやマイマスターは危ないと思います」
「流石に毒があるかないかは見分けられるよ。レフィーさんを天使だと気付いたみたいにね」
「……分かっていたんですね」
「まあね。最初は目を疑ったけど、魔王様もいるし、天使様もいるんじゃないかなーって」
どうやら、オズはレフィーの正体まで気付いていたようだ。
この様子だと、リリやネフィルまで例外ではないだろう。
レフィーの驚く顔を見ながら、エルネは面白そうに酒を飲んでいた。
「あ、焼けたよ。どうぞとうぞ」
「気が利くのぉ」
「ありがとうございます」
完全にサポートに徹するオズ。
焼けたキノコをエルネたちに渡すと、新しいキノコを焼き始める。
こういった作業が性に合っているらしく、それなりにオズは楽しんでいた。
「……これは見事じゃな。本当に美味いぞ。ご主人様にも食わしてやりたいのじゃ」
「ウィルさんも呼んでこようか? そんなに離れてないと思うし」
「いや、マイマスターは向かってきていますよ。恐らくネフィルも一緒ですね」
「凄いね、そんなことも分かるんだ」
オズは感心するようにレフィーを見る。
本物の天使を見るのは初めての経験だ。有り余る好奇心が抑えられない。
「ウィルさんには興味無いって言っちゃったけど、こんなに凄い人たちを召喚したんなら、話を聞いとけば良かったかな」
「サボテンに関して話せば、すぐに仲良くなれるぞ」
「覚えておくよ、ありがとう」
飽き性のオズ。
しかし、少なくともウィルたちの近くにいる間は飽きることなく過ごせそうだ。
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