底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜

第十五章

収穫

「「「今日はありがとうございました！」」」

　全ての授業が終わると、生徒たちはウィルの元へ集まる。
　いつの間にか、仲間に変な呼び方をさせているという噂が広まっていたが、そのようなことを気にしている余裕はない。

「ウィルさん！　これからも頑張ってください！」

「ど、どうも……」

「私たちも、ウィルさんのような召喚士を目指して頑張ります！」

「が、頑張ってください……」

　ウィル自身が思っているよりも、生徒たちにとって有意義な時間になったようだ。
　別れを惜しむような顔をしている生徒が多く、握手を求めてくる者もいる。

「ふぅ、何かくたびれた一日じゃったのお」

「エルネお姉ちゃんは何やってたの？　途中からいなくなってたけど」

　エルネは疲労をあらわにする形で馬車に乗る。
　ウィルが生徒たちによって引き止められている以上、エルネたちは待つしかない。

「あまりにも暇じゃったから、適当にウロウロしておったぞ。そのおかげで、なかなか面白い奴も見つけられたのじゃ」

「そうなんだー！　ずっと眠ってたかと思ってたよ！　それに、面白い人ってどんな人？」

「不思議な奴じゃよ。純粋に天才なんじゃろうな。一人きりでおったから気になっただけじゃが、話しかけて正解だったかもしれん」

　エルネは、気だるそうな表情から少しだけ明るくなる。
　ここまで人間に興味を持つことは、矢が降るほどに珍しいことだ。
　少なくとも、ウィル以外では初めてかもしれない。

「えー、リリも会ってみたいなぁー」

「そのうち遊びに来ると言っておったぞ。学校に飽きとるらしいからな。名前はオズというらしいのじゃ」

「めちゃくちゃ仲良くなってる!?」

　想像以上に打ち解けていたエルネとオズ。
　リリの願いが叶う日は、そこまで遠くないだろう。

「生徒を家に連れ込んだら、飼い主様が怒るかもしれないにゃ」

「心配せんでも良いぞ。ご主人様には全く興味が無いらしいからな」

「それはそれで連れてこない方が良いかもしれないにゃ……」

　やはりエルネが気に入るというだけあって、オズはかなり変人らしい。
　アムベント召喚士学校の生徒とは思えない性格だ。


「お待たせ。やっと終わったよ……」

「お疲れ様、ウィルお兄ちゃん」

　まるで逃げるかのように、ウィルは急ぎ足で馬車へと駆け寄る。
　生徒たちとは無事に別れられたようだ。
　ウィルも同じように、表情から疲れが見て取れた。

「ウィルお兄ちゃん、オズって人知ってる？」

「……え？　誰？」

「知っとるわけないじゃろ。これから面白い奴が来るから楽しみにしておれよ、ご主人様」

「……え？　あ、あぁ」

　ウィルは現状を理解できてない顔で頷く。
　ただただ、その言葉の意味が分からなかった。