底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜

第十三章

吸血鬼

「なるほどのぉ。その老師って奴も、なかなか分かりにくい表現をするもんじゃわい」

　エルネは面倒くさそうに武器を握った。
　吸血鬼だと分かった途端に、勝負は作業へと変わる。
　魔王であるエルネと吸血鬼では、天と地ほどの差があった。

　そして、この場にいるのは吸血鬼一人であり、仲間がいるような様子もない。
　実力でも人数でも有利な状況だ。

「鬼？　なかなか懐かしい呼び方で呼んでくれますね。さて、私も情報を出したのですから、貴女たちも教えるのが筋ではありませんか？」

「聞いても無駄になると思いますよ。どうせ、あとちょっとで退治されてしまうんてますからね」

「退治？　面白いですね。残念ですが私は不死身です。それこそ叶わぬ夢でしょう」

　吸血鬼は不敵に笑う。
　人を完全に馬鹿にしている時の表情だ。
　絶対に死なないという自信があるからか、この絶望的な状況でも余裕を見せていた。

「〈魔攻斬〉」

　そんな吸血鬼に対して、エルネは禍々しい剣を振り下ろす。
　本来なら、剣が触れた瞬間に絶命してしまいそうな一撃であったが、そう上手くはいかなかった。

　吸血鬼の体は、太刀筋に沿って空中に飛び散る。
　しかし、それは血などではない。
　無数に飛び交うそれは、悪魔のような顔をしたコウモリだった。

「きゃー!?　無理無理！」

　リリはそのコウモリを見るやいなや、ネフィルの背後に隠れる。
　魚などの生物には恐怖感を抱かないリリだったが、コウモリはその例外なようだ。

「……ちょっと、リリちゃん。尻尾を掴んじゃダメ」

「あ!?　ごめん！　忘れてた！」

　ついついネフィルの尻尾をギュッと握りしめてしまうほど、気が動転していたらしい。
　慌てて手を離しながら、今度はネフィルの服にしがみついた。

「これは本当に面倒ですね。バラけたコウモリを攻撃しても――多分意味が無いでしょうし」

「そうです。不死身の私を殺すことはできません。諦めて帰られたらどうですか？　私は貴女たちを殺すつもりはありませんから」

「何だか腹が立つ吸血鬼ですね、どうしますか？　マイマスター」

「いや、このまま帰ってリム老師が認めてくれるとは思えない。何とかして方法を探そう……」


「……今なんと言いましたか？　リム老師と聞こえましたが。そこの人間の貴方」

　ウィルたちが吸血鬼退治の方法を模索していると。
　何故か吸血鬼の方から質問が入った。
　リム老師――というセリフに反応したらしい。

「ああ、言ったぞ！」

「初めてあの吸血鬼の顔色が変わりましたね。人質に取ったら有効そうですよ、マイマスター」

「それは駄目」


「何故貴方の口から、私の妻の名前が出るのですか？」

　今なんと言いましたか――という言葉がウィルから出た。