底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜

第十三章

鬼退治

「で、何で私たちが行かなくちゃいけないんですか？」

「いや、鬼退治って言われたから……」

「修行とかって、ご主人様が断食するみたいなものじゃなかったのかの？」

　リムの言いつけによって、近くの山へと向かうウィル一行。
　いつものように、エルネとレフィーは納得できていない様子だった。

「俺も断食で済むならそれで良かったけど、老師は精神よりも肉体派らしいぞ」

「面倒くさいですね。私がその老師よりも上ってことを示したら、早く帰れるんじゃないでしょうか」

「そんな乱暴にしなくても良いんじゃないかな……レフィーお姉ちゃん」

「変に怪我させて儂らの責任にされても困るからな。今回だけは大人しく従うしかあるまい」

　エルネは気だるそうに武器を取り出す。
　暗黒の空間から出てきたそれは、禍々しい瘴気をしっかりと纏っていた。
　これを見せただけで、大抵のモンスターは逃げ出してしまうだろう。

　手っ取り早く終わらせたいというエルネの気持ちが見て取れる。

「でも、鬼退治ってどういうことなんだろうね？　本当に鬼なんているのかなぁ？」

「どうせオーガだったというオチでしょう。もしかするとオークかもしれませんね、人間基準ですから」

「いや、オーガなら大問題じゃないか。普通の人間なら絶対に勝てないぞ……」

　謎が多い今回の相手。
　オーガだとするなら、修行中の冒険者に頼むようなことはしないはずだ。
　しかし、オークだとするなら、わざわざ鬼などと表現はしないだろう。

「そうだ、エルネお姉ちゃんの力で探すことはできないの？」

「あぁ、そうじゃな――おるにはおる、としか言えんぞ」

「そこまで強い気配ではないということですね。シンプルにその程度の魔物なんでしょう」

「今が昼じゃから――というのもあるかもしれんな。寝ているようじゃし、如何せん強さが分からん」

　精度が高いエルネの気配察知も、曖昧な情報だけを残して終わる。
　大まかな場所までは分かったが、鬼の戦力などは不透明なままだった。

「飼い主様。とにかく行ってみたら？　どうせ倒さないと帰れないし、ワタシが何とかするから」

　チキンなウィルを見かねて、ネフィルが二つの意味で背中を押す。
　早く修行から解放されて、酒を飲みたそうな表情だ。

「しかし、このままじゃと、鬼の元へ着く頃には夜になっておるな。負けることはないじゃろうが、頭の中にだけ入れておけよ？　ご主人様」

「その時はみんなで頑張ろう」

「調子に乗って死なないでくださいね、マイマスター」

「は、はい……」

　戦う前から諭されるウィルだった。