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第十三章
番外編 メイドのお仕事
しおりを挟む「ふぅ、疲れたー」
「お疲れ様。フィー」
「あ、ククリちゃん! おつかれー」
ひと仕事終え、休憩を取っているフィーの元にククリが現れる。
フィーも魔王城に仕えているメイドの一人であり、ククリと同じ立場だ。
「随分頑張ってたみたい。どんな仕事だった?」
「大したことないよー。無駄に生えている木を全部伐採するだけだったから」
「それは重労働。本当にお疲れ様」
フィーの仕事内容は想像以上に過酷なものだった。
このような仕事に慣れているのか、まるで草引きかのように話している。
「でも、今日はこれで仕事終わりだー。やっとゆっくりできるよー。そうだ、ククリちゃんの部屋に行っていい?」
「それはダメ」
「えー、なんでー?」
「フィーがうるさいから」
「お願いー。お昼に仕事終わっちゃうから、どうしても暇なんだよー」
「ダメなものはダメ」
ククリは、心を鬼にしてシーの頼みを断る。
かつてフィーを部屋に招き入れたことがあるが、ずっと騒いでいたため、趣味の読書に集中することができなかった。
それどころか、髪を勝手にいじってきたりなど、ククリ一人では到底手に負えない。
「あ、じゃあさ、ククリちゃんの仕事手伝おうか?」
「良いの? 今日はソフィア様のバイオリンのレッスン」
「やっぱりやめとく」
あまりにも暇だということで、ククリの仕事を手伝おうと立ち上がったフィーであったが、仕事内容を聞くとすぐさま座り直す。
フィーは、バイオリンを弾くことが出来るため、教えることも可能だろう。
しかし、相手がソフィアとなったら話は別だ。
ソフィアが奏でる耳を破壊するような音は、慣れていないフィーでは耐えることが出来ない。
バイオリンで直接殴られた方が、ダメージが少ないのではないか――というほどである。
「でも、最近力仕事しかしてないからなー。もっとお淑やかな仕事を回してもらえるように、レレーナ様に頼んだ方が良いのかなー?」
「レレーナ様は効率を重視するはず。力仕事を任せられるような人は、フィーしかいない」
「うーん……」
「逆に言うと、フィーはこの魔王城で必要とされている。とても素晴らしいこと。自信を持って」
「あ! 確かにー!」
フィーは驚くほど簡単に言いくるめられる。
自分だけ――という箇所が、フィーの心をくすぐったようだ。
この一日の中で、一番上機嫌になった瞬間だった。
「よし、あそこにある木も全部引っこ抜いてくる!」
「あの辺りの木に手を出したら、庭師とレレーナ様が尋常じゃないほど怒るから、やめておいたほうがいい」
フィーは、丁寧に揃えられた木に向かって走り出す。
ククリの言葉が聞こえていたかどうかは、後に判明することになった。
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