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第十二章
尻尾バーベキュー
しおりを挟む「尻尾? にしてもデカイな……」
「五人分は十分にありそうですね」
「どんなサイズのドラゴンだったんじゃ。軽く国を滅ぼせるくらいの規模はあるぞ」
ネフィルが持ってきたのは、見たこともないほど巨大な尻尾だった。
尻尾の大きさから逆算すると、ソフィアの魔王城と並ぶほどである。
「流石に全部持ってくるのは無理だったから、尻尾だけ拝借したにゃ」
「え? それなら、今頃ドラゴンは怒り狂ってたりするんじゃ……」
「……いや、普通に逃げていったから多分大丈夫だと思う……かも」
「そこは言い切ってくれ……」
ウィルは周りを気にしながら、尻尾肉を切り分けることになった。
************
「やはり肉はドラゴンに限りますね。これを食べたら他の肉は食べられませんよ」
「そうだねー。レフィーお姉ちゃんもお肉好きなんだ」
「はい、これならいくらでもいけます。リリはあまり食べていないようですが大丈夫ですか?」
レフィーは、焼いたドラゴンの肉を次々に口に入れる。
人間界でドラゴンの肉を手に入れるとなると、一年間ほど待たされることになるだろう。
つまり、このような機会はめったにないため、ウィルたちは全力で満喫していた。
「あんまり食べすぎちゃうと太っちゃうかもだから……」
「うーん、意外と太らないものですけどね」
「むー……」
リリは、納得がいかないようにレフィーの体を見ていた。
出るとこは出ているにも関わらず、全体的にはスマートにまとまっている。
サキュバスとしても、一人の女としても理想的な体型だった。
「ご主人様、もう食わんのか?」
「お腹いっぱいだよ……よくそんなに入るな……」
「肉を食わんのじゃったら、酒でも飲んだらどうじゃ? 今日は酔っても儂が面倒見てやるぞ?」
満腹状態のウィルの隣で、エルネはバクバクと肉を口に運んでいる。
その手は一切止まる気配がない。
「お酒飲んでもすぐ酔いつぶれちゃうよ」
「かー、男として情けないのう。あの猫娘を見てみんか」
エルネは、酒と肉を楽しんでいるネフィルを指さした。
肉を焼いている時間は酒を飲み、十分に焼けたら一口で食べ切る。
その一口も、辞書のような分厚さだ。
明らかに女の子が食べるようなメニューではなかった。
「ネフィル、そんなに食べて大丈夫か……?」
「飼い主様、これ飲んで」
「いや、俺は飲めな――」
「いいから」
「はい……」
お酒の力を借りたことによって、少しだけ強引になったネフィルに絡まれるウィル。
この状況から逃げられないことは、直感的に察することができた。
これからは、弱みを握られないように祈るだけである。
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