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第十一章
天使と魔王
しおりを挟む「天使がいますね」
「え? どうした、レフィー?」
レフィーは、追加で貰った紅茶を飲む手を止めた。
セリフは至ってシンプルなものだが、それを理解するまでに時間がかかる。
天使がいる――というのはどういう意味なのか。
自分がいるという旨を伝えたいのかとも考えたが、レフィーに限ってそのようなことはわざわざ言わないだろう。
「同じことを言わせないでください。天使がいると言ったのですよ、マイマスター。この魔王城は既に包囲されてますね」
「そ、それは本当ですか! レフィー様!」
「はい。リラックスしすぎていたせいで、気付くのが遅れてしまいましたが」
レレーナが席から立ち上がる。
囲まれている以上、どうやっても戦闘は避けられない。
ゆっくり座っている時間などないのだ。
「で、でも、何で天使がここに!? それに、天使たちにも迷惑はかけてないじゃないか!」
「ここは魔王城ですよ? それに、魔王がいるならば、それだけで戦う理由にはなります。私たちのように、天使と魔王が共存している方が異常なのです」
「まぁ、簡単にこの天使を迎え入れるソフィアも異常なんじゃがの。感覚がおかしくなっても無理はないのじゃ」
ウィルはそれ以上言葉が出てこない。
冷静に考えてみれば、エルネとレフィーも仲がいいとは決して言えない間柄である。
おかしいのはウィルの方だった。
「そ、それじゃあ……」
「戦うしかないでしょうね。まぁ、食後の運動と考えるなら我慢できます」
「風呂に入る前で良かったのじゃ。もう一回入るとなったら面倒じゃったからのお」
「も、申し訳ありません。このような事態は予想しておりませんでした……」
「構いませんよ。これだけ良くしていただいたのに、何もお返しをしないというのは気が引けますしね」
そこには、魔王側につく天使がいた。
特に悩む様子もなく、レフィーは戦うために立ち上がる。
「マイマスターはどうしましょうか。リリに預けても良いのですが、今はお風呂に入っているらしいので」
「ソフィアと同じ部屋に置いておけば良いのではないか? そっちの方がお互い守りやすいじゃろ」
「そうですね。ここのメイドさんを通じて、リリにメッセージを伝えることってできますか?」
「は、はい。可能です」
「では、リリは護衛に向かうように伝えておいてください。よろしくお願いしますね」
そう言い残して、エルネとレフィーは魔王城の外に出る。
広い魔王城であるため、どの扉を開ければ外に通じているのか正確には分からなかったが、運良く当たりを引き当てたようだ。
奇襲といった方法で、魔王と天使は共闘するらしい。
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