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第九章

番外編 魔王城

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「はい。ソフィア様、あーん」

「あーん」

 ククリは、フォークに突き刺した果実をソフィアの口元へ持っていく。
 甘えるのが好きなソフィアは、三日に一度ほどの割合でこういった食事を楽しんでいた。

「……何をやっているのですか、ソフィア様」

「げっ、レレーナちゃん!」

「そんな子どもみたいなことおやめください。ククリもです。恥ずかしくて見ていられません」

 レレーナは呆れたように割って入る。
 自分の主であるソフィアが、このように幼稚な振る舞いをしていると考えるだけで、涙が出るほどの思いだ。

「ごめんなさい、レレーナ様。ソフィア様の悪癖には困ったもの」

「ク、ククリちゃん!? 裏切らないでよー!!」

 ククリと一緒に戦おうとしていたソフィアだったが、戦いが開始するまえに詰みの状態に陥ってしまう。
 ククリが降参するだけでなく、寝返ってソフィアを差し出すという暴挙に出てしまった。

「ソフィア様、もうすこし魔王であるという自覚を持ってください。このままでは、誰も付いてこなくなりますよ」

「え!? レレーナちゃんも!?」

「別に私が付いていかないとは言ってないでしょう。例えば…………すぐには思いつきませんが、いるかもしれません」

 魔王城の全ての下僕を記憶しているレレーナは、頭の中で個人個人を精査するも、即座にあげられるようなことはできない。

 戦闘力が高いというわけではないものの、忠誠心が素晴らしい仲間ばかりだからだ。

「ゴホン。つまり私が言いたいのは、普段からちゃんとしてないと、いざという時に困るということです」

「そ、そうだね……気をつける……」

「レレーナ様。私たちの中にソフィア様を裏切るなんて人はいない。いざという時も、頑張れると思う……多分……」

「ククリちゃんは裏切ったばっかじゃん!!」

 ククリは、怒られてシュンとしたソフィアへフォローを入れる。
 しかし、裏切ったばかりのこの状況では逆効果だったらしい。

「もうちょっと大人になる訓練もした方が良いかもしれませんね。ソフィア様も一度メイドとして作業してみますか?」

「あ! それ楽しそう!」

「ソフィア様がメイド……かなり心配」

「大丈夫大丈夫! 私って意外とお茶入れたりするの上手なんだよー」

「あれはもう勘弁してください……飲むのにかなり苦労しました……」

「か、勘弁!? お茶に勘弁ってどういうこと!?」

 レレーナは、昔のトラウマを思い出したかのようにふらつく。
 お茶一つでここまでのダメージを与えるのは、もはや才能と言えるだろう。

「……あ、ちょっとトイレ行きたくなっちゃったかも……付いてきてほしいな」

「分かりました。近くにありますので、そちらに行きましょう」


(……これはギリギリセーフ? レレーナ様の判定はよく分からない)

 やはりソフィアには甘いレレーナだった。

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