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第九章

腹が減っては

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「やったー! リリたちまでお昼ご飯用意して貰えるんだね!」

「かなり豪華だな……やっぱり代表ってなると、これだけ凄いのか」

 ウィルたちに用意された部屋には、総額でいくらするのか分からないほどの料理が運ばれてくる。

 頼めば無限に用意される料理は、エルネとレフィーのお腹を極限まで満たす。

「なかなか美味いのじゃ。人間にしては良い働きをする」

「わざわざ私たちが動くのも、この料理を思ったら何とか我慢できます。早くマイマスターもこのレベルまで成長してください」

「多分無理だと思う。というか、これからも試合あるのに、そんなにバクバク食べて大丈夫なのか?」

 エルネたち(リリも含め)は、一切手を止めずに食事を続けていた。
 気持ちがいいほどの食べっぷりであり、作った方もここまで楽しんで貰えれば本望だろう。

「女に飯の量で文句を言うとは。ご主人様もデリカシーがないの」

「私たちでなければ張り倒されてますよ。気を付けてくださいね、マイマスター」

「……いや、でもスタッフさんだって、試合の前にそんなに食べたら動けなくなるって心配してたし……」

「儂らに人間基準の話をしても仕方がないじゃろう。ほれ、ご主人様も食わんか?」

「ウィルお兄ちゃん、あーん」

 リリは、フォークに突き刺されたウインナーをウィルの口元まで持っていく。
 ここまでされてしまっては、ウィルも食べざるを得ない。

 言われるがままに、ウィルはウインナーを口の中に迎え入れた。

「……マイマスター、私のウインナーもどうぞ」

「え?」

「なら儂のやつも食うのじゃ」

「ちょっと……」

 ウィルの口元へ、さらに二つのウインナーが集まる。
 モンスターのように迫り来るそれは、どうやっても拒むことはできない。

 もし断ったら、無理矢理口の中へ押し込まれてしまうはずだ。

 無駄なダメージを受けないように、ウィルは口を開いて身を任せていた。

「マイマスター、どうですか?」

「お、美味しいよ……」

「なら良かったのじゃ。まだまだ沢山あるぞ」

「お、おう……」

『ラズディア国のエルネ様とレフィー様は、これからの打ち合わせがありますので、本部までお願いします』

「あ、呼び出されてるぞ」

「チッ、良いところでしたのに」

 楽しみを邪魔されたレフィーとエルネは、渋々立ち上がりながら本部へと向かう。
 逆に運良く危機を逃れたウィルは、ホッとしたようにため息を一つ。

 行き場のなくなった料理たちは、全てリリの胃袋行きとなりそうだ。


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