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第八章

元凶

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「どこまで動けるか……その範囲に何かあればいいのですが……」

 この洞窟の謎を解くため、レフィーは恐れることなく歩を進める。

 レフィーの心配していたことは、どこまで自由に動けるのか――ということだ。
 レフィーは被召喚側のため、召喚側のウィルと離れすぎると何が起こるか分からない。

 これまでに試したこともないので、手探りの状態での進行だった。

「……やはり私には腐敗が効いていないようですね。エルネやリリたちもそうでしたが……」

 レフィーは自分の腕を見る。
 しかし、ウィルのように腐敗することはなく、いつも通りの綺麗な腕であった。

「マイマスターだけを狙って腐敗させるような実力者がいるということでしょうか。考えにくいですが……」

 現在考えうるパターンは二つ。

 一つはウィルに狙いを定めて腐敗させ、レフィーたちを一斉に処分しようとする相手。
 これは、ウィルが召喚士というのを見抜いた上で、かなり精密な技術が求められる技だ。

 二つ目はウィルが人間であるため、耐性を持っていなかったというパターン。
 これなら、レフィーたちが腐敗することなく、ウィルのみが腐敗したというのも納得できる。

「どちらにせよ、腐敗のことはもう考えなくていいですね。心配なのは距離だけです」

 レフィーは、自分の考えを口に出すことで冷静な判断を下す。
 こうすることで論理的な思考を保ち、問題を解決するための最適解を求めることができた。


「こんな所に人間とは珍しいこともあるんですねぇ。どうやって腐敗する空気を抜けたのか――教えて貰ってもいいですかぁ……?」

 突如暗闇の中で。
 声が反響しているため、どこから発せられたのか分かりにくい声が聞こえた。
 だが、耳だけであれば分かりにくい正体も、レフィーには関係ない。

 レフィーは、その目でしっかりと気味の悪い魔物を捉えている。

「距離に関しても考えなくてよくなりましたね。わざわざ姿を見せてくれるなんて」

「……どうやらワタクシの姿が見えてるらしいですねぇ。人間ではない? まぁ、構いません。実験に付き合ってもらえれば、人間でも人間でなくても」

 魔物は異変に気付いたらしく、レフィーが人間でないことを悟った。
 しかし、それでも態度は変わらない。

「実験というのは? 少し興味がわきました」

「イッヒヒ、特別に教えてあげましょう! 人間を魔物に変えるという物です! これはワタクシにしかできない――神と同等の能力!」

 魔物は、自分のことを自慢するかのようにペラペラと喋る。
 魔物でも人間でも。
 自己顕示欲というのは持ち合わせているらしい。

「やっぱりアナタが元凶ですか」

 レフィーは呆れたように首を振った。

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