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第六章
冬
しおりを挟む冬。
寒さを本格的に感じるようになった季節の中、一人の少女が風の当たらない隅っこで座り込んでいた。
少女の服はあまりにも薄く、冬とは思えないほどの格好だ。
寒さを全く防げておらず、ただ着ているというだけ。
最低限の服装である。
「寒い……」
少女は零すように呟いた。
助けを求めるわけでもなく、特に意味があるわけでもない。
自分でも意図せずに出てきた言葉だった。
************
「さっむ! なんだこの寒さ!? これ絶対にモンスターの仕業だろ!」
「うるさいです、マイマスター。ちょっとくらい我慢してください」
「人間は寒さにも弱いのか。本当に不便じゃのお」
「リリがあっためてあげよーか?」
ウィルたちは、冬の寒さの中買い物に出かけていた。
何の変哲もない人間であるウィルは、この寒さに凍えている。
手袋やマフラーをしていても、それを貫通するような風にはどうのしようもない。
「やっぱり買い物なんて来るんじゃなかった……」
「儂らがついてきてやっとるんじゃから、これくらい耐えんか」
「でも、買い物とか掃除とかしてくれる人がいたら便利ですよね。サクッと召喚してみてくれませんか? マイマスター」
「そんな簡単そうに言わないでくれ……」
くだらないことも言いつつ。
ウィルたちは帰り道を歩んでいく。
早く帰りたいがために、猫背になりながら早足で歩いていた。
「――え、この子大丈夫か?」
そんな早足のウィルの目に、隅っこで倒れている少女が映った。
冬という季節では考えられないほどの服装。
服が服として機能していない。
冷たい風に吹かれて、チラリチラリとへそが見え隠れしていた。
「……まだ死んでいないみたいですね。ギリギリの状態ですから、放っておいたらすぐに死んでしまうと思いますよ」
「――リリちゃん! この子を回復魔法で治せるか!?」
「できるけど、一旦暖かい所に移動させた方が良いよ」
「――な、なら、俺の家に移動させるぞ」
ウィルは、少女を自分の家に移動させるため、膝と肩を持って抱え上げた。
その少女の白すぎる肌は、まるで氷かのように冷たい。
手袋越しにでも伝わるような冷たさを持っていた。
「――痛っ! あいてて! 足釣った!」
「なぜその動きで足を釣ることができるのじゃ……」
「ウィルお兄ちゃんが普段から運動してないからだね」
ウィルは少女を傷付けないように崩れ落ちる。
もう一歩も動けなくなってしまった。
エルネたちも、あまりに情けないウィルの格好にドン引きだ。
「……仕方ないから儂がご主人様に肩を貸してやるのじゃ。その娘は天使が運んでくれ」
「…………分かりました」
少女をおんぶをしながら歩く美女。
ついていく幼女。
肩を貸されながらたどたどしく歩く男。
奇妙な集団がそこにあった。
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