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第五章
アンデッド
しおりを挟む「ユキちゃん、お母さんはどんな人だったんだ?」
道中。
母親の元へ近付くにつれて、段々と落ち着きがなくなりつつあるユキを考慮して、ウィルが話しかける。
こういった時は、気さくに話しかけた方が緊張を緩和できる――ウィルの自論だった。
「……お母さんは凄く良い人でした。しっかりとしているってわけじゃないし、たまにおかしい事を言ったりするけど、とにかく優しいのです」
「いいお母さんなんだな」
「はい……ボクと同じで怖がりなので、今も多分苦しい思いをしていると思うのです――だから」
ユキは母親の事を思ってか、助け出すという覚悟を持った顔になる。
ウィルも、大変な思いをしているであろうユキの母親を想像して、心が痛くなった。
「――って、ちょっとしんみりしちゃいましたね。そうだ、レフィーさんのお母さんはどんな人なのですか?」
「私……ですか?」
母親の事を考えて暗くなった雰囲気。
空気を切り替えるために、ユキはレフィーに話を振る。
突然話を振られたレフィーは、いつもなら見れないような反応を見せた。
「母親というか、私をこの世界に生み出してくれた人なら」
レフィーはウィルの方をチラッと見る。
「そうですねー。頼りなくて、人任せで、すぐに調子に乗っちゃうような性格です」
「そ、それは凄い人なのです……」
「まぁ、優しい所もありますから、嫌いではないんですけれどね」
「――ほ、他の話をしないか!?」
ウィルはこの空気に耐えられなかった。
このまま、からかわれるのはマズイと悟ったのだろう。
サンドバッグ状態はゴメンである。
「どうしたのですか? ウィルさん」
「いやー、お母さんの話をしてたら故郷を思い出して寂しくなっちゃってなー、アハハ……」
「なるほど……寂しくさせちゃって申し訳ないのです」
「いや、この話を始めたのは俺だから心配しないでくれ……」
何故か謝られるウィルだった。
寂しくなったというのは嘘であり、レフィーの攻撃から逃れるためのものだったため、逆に謝りたいくらいだ。
「おい、よくわからん事を話しとる暇はないぞ、ご主人様。魔物の群れはダークウルフじゃなかった」
「え? ダークウルフじゃないのか?」
「あぁ、ダークウルフは使役されとるだけじゃ。明らかに違う気配が沢山ある」
「そ、それが何の気配か分からないのか……?」
「ちょっと待て。今それを探っとるのじゃ」
ウィルとレフィーが心理戦をしている間に、エルネから驚きの情報が入る。
ダークウルフを使役するということは、かなり厄介な敵だということだ。
先程までとは違う意味での緊張が走った。
「……これはアンデッド――ゾンビか……?」
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