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第四章
決断
しおりを挟む「ご主人様、魔王城とやらに行くぞ」
「今サボテンに水あげてるから待って」
「そんなもん後でいいじゃろ! 魔王とサボテンどっちを選ぶというのじゃ!」
クエスト受付センターから一旦家に帰ったウィルたちは、妙に興奮しているエルネの相手をしていた。
「ほら、アナタもサボテンに水をやって落ち着いてください」
「落ち着けるわけないじゃろ! 魔王と名乗る奴がおるかもしれんのじゃぞ? 儂と同じなど百年早いわ」
「まあまあ、ほらエルネお姉ちゃんもやってみたら? サボテンって意外とかわいいよー」
「なんじゃそのサボテンブームは!」
どうしても魔王城に行きたいというエルネに対して、ウィルたちはクールな反応だ。
サボテンに水をやりながら、心を落ち着かせている。
しかし、それが続くのもこれまでらしい。
これ以上続けたら、エルネがサボテンの鉢ごと蹴り飛ばしてしまう恐れがあった。
そうなってからでは取り返しがつかない。
ついにウィルはエルネと向き合った。
「魔王城っていっても、本当にあるかは分からないんだぞ? それに、クエスト受付センターからの依頼でもないし」
「マイマスターの言う通りです。報酬が出ないのだから、わざわざ私たちが行く必要もないでしょう」
「うーん……リリは魔王さんの邪魔するのは良くないと思うー」
ウィルたちから出たのは、やはり否定的な意見だ。
魔王城へ行くというのは、依頼でもなければメリットがあるわけでもない。
それに、今までのクエストに比べて何倍も危険だろう。
腰を上げるには重すぎる条件だった。
「……そこまで言うなら、儂一人で行ってくるのじゃ」
「そこまでして行きたいのか……」
エルネは諦めたように腰を上げる。
エルネには珍しく、しょんぼりとした雰囲気があった。
「一日もせずに戻ってくるのじゃ。見送りはいい」
「いや、エルネ一人で行かせる訳にはいかない。もしもの事があったら大変だ」
「……儂の主人としての命令か……?」
「一応」
ウィルの言葉でエルネの足は止まった。
ウィルからしたら、エルネを単身で危険な所に乗り込ませるわけにはいかない。
エルネが負けるなど考えられないが、魔王城となると万が一もある。
「分かったのじゃ……」
(…………これで良いのか? エルネがここまで訴えるなんて、なかなか無い機会なんじゃないのか?)
エルネの渋々とした承諾。
そして、突如起こるウィルの自問自答。
ウィルの頭の中に、これまでのエルネが次々と浮かび上がる。
「いや、これじゃ駄目だ」
「……? だから、行かんと言っておるじゃろ」
「違う、エルネ。行くぞ魔王城に」
エルネの顔は、何が起こったのか分からないように動かなかった。
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