上 下
16 / 209
第一章

助っ人は武器強化!

しおりを挟む

「あ、あの! よろしくお願いしますっ!」

 クエスト受付センターで待機していたウィルたちの前に現れたのは、先程助っ人として呼んだ人物だった。

 何故かウィルたちよりも緊張している面持ちで、直角に腰を曲げながら挨拶をする。

「いや……そんなに畏まらなくてもいいですよ。というか、貴女の方がランクが高いんですから」

「い、いえっ! 私なんて運で昇格したようなものですから! それよりも、期待の新人として頭角を現しているウィルさんとご一緒できて嬉しいです!」

「な、なるほど……えっと」

「あ! 私はジェシーと言います! よろしくお願いします!」

 ジェシーは、ガシッとウィルと握手を交わす。
 既にAランクの称号を貰っているジェシーだったが、何故かウィルに憧れを持つ変わり者だ。

 蔑まれるのは慣れっこのウィルだが、尊敬されたことは人生で一度もない。
 つまり、どのように対応していいか分からなかった。

「おい、天使。これは一体どういう状況じゃ?」

「分かりません。けど、なんだか腹が立ってきました」

「奇遇じゃな、儂もじゃ」

 ウィルとジェシーがイチャイチャしている後ろで、謎の嫉妬に燃える二人組がいた。
 途中からジェシーに慣れ、デレデレとしているウィルの顔を見ると、なおさら怒りの感情が芽生える。

「あ、こちらのお二人もよろしくお願いします」

「フン、足だけは引っ張るなよ。人間」

「は、はい! 頑張ります!」

 エルネがストレスを解消するかのようにジェシーを凄むと、ジェシーは思わず背をピンと伸ばして敬礼した。

 二人はジェシーの聞き分けが良いところを確認すると、最低限と納得するように頷く。

 もしジェシーが反抗したらどうなっていたか、それは誰にも分からない。

「じゃあご主人様。サッサと昇格してしまうぞ」

「お、おう。ジェシーさん、準備はできましたか?」

「はい! いつでも大丈夫です!」

 ジェシーの元気の良い返事。
 今回のクエストに対してのやる気が顕著に表れていた。

「ちなみにジェシーさんは何が出来るんですか?」

「私は武器の強化が専門です!」


「……レフィーは何か武器持ってるか?」

「私は持っていません」

「エルネは鎌みたいな奴持ってたよな」

「儂の武器は装備強化無効の呪いが付いておるぞ」

「……」

 気まずい空気がその場に漂う。
 ウィルたちのパーティーには、武器という武器を持っている者はいなかった。

 すなわち、ジェシーの得意な武器強化を生かせる場面は永遠に来ないだろう。


「あれ? 私っていらない子ですか……?」

 誰もノーとは言えなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

創造眼〜異世界転移で神の目を授かり無双する。勇者は神眼、魔王は魔眼だと?強くなる為に努力は必須のようだ〜

ファンタジー
【HOTランキング入り!】【ファンタジーランキング入り!】 【次世代ファンタジーカップ参加】応援よろしくお願いします。 異世界転移し創造神様から【創造眼】の力を授かる主人公あさひ! そして、あさひの精神世界には女神のような謎の美女ユヅキが現れる! 転移した先には絶世の美女ステラ! ステラとの共同生活が始まり、ステラに惹かれながらも、強くなる為に努力するあさひ! 勇者は神眼、魔王は魔眼を持っているだと? いずれあさひが無双するお話です。 二章後半からちょっとエッチな展開が増えます。 あさひはこれから少しずつ強くなっていきます!お楽しみください。 ざまぁはかなり後半になります。 小説家になろう様、カクヨム様にも投稿しています。

異世界でのんきに冒険始めました!

おむす微
ファンタジー
色々とこじらせた、平凡な三十路を過ぎたオッサンの主人公が(専門知識とか無いです)異世界のお転婆?女神様に拉致されてしまい……勘違いしたあげく何とか頼み込んで異世界に…?。  基本お気楽で、欲望全快?でお届けする。異世界でお気楽ライフ始めるコメディー風のお話しを書いてみます(あくまで、"風"なので期待しないで気軽に読んでネ!)一応15R にしときます。誤字多々ありますが初めてで、学も無いためご勘弁下さい。  ただその場の勢いで妄想を書き込めるだけ詰め込みますので完全にご都合主義でつじつまがとか気にしたら敗けです。チートはあるけど、主人公は一般人になりすましている(つもり)なので、人前で殆んど無双とかしません!思慮が足りないと言うか色々と垂れ流して、バレバレですが気にしません。徐々にハーレムを増やしつつお気楽な冒険を楽しんで行くゆる~い話です。それでも宜しければ暇潰しにどうぞ。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

辺境左遷の錬金術師、実は人望が国王以上だった〜王国在住の剣聖や賢者達が次々と俺を追って辺境に来たので、のんびり最強領地を経営してみる〜

雪鈴らぴな
ファンタジー
【第4回次世代ファンタジーカップ最終順位7位!】 2024年5月11日 HOTランキング&ファンタジー・SFランキングW1位獲得しました! 本タイトル 国王から疎まれ辺境へと左遷された錬金術師、実は国王達以外の皆から慕われていた〜王国の重要人物達が次々と俺を追って辺境へとやってきた結果、最強領地になっていた〜 世界最高峰のスラム領とまで呼ばれる劣悪な領地へ左遷された主人公がバカみたいなチート(無自覚)で無双しまくったり、ハーレム作りまくったり、夢のぐーたら生活を夢見て頑張る……そんな話。 無能を追い出したと思い込んでる国王は、そんな無能を追って王国の超重要人物達が次々と王国を出ていって焦りだす。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~

天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。 現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。

自衛官?異世界転生して、現代兵器の軍団率いて大国相手に勝利します。

naosi
ファンタジー
国際援助のためとあるアフリカの国にやってきた主人公が所属する部隊、空港からベース基地向かう途中民兵から攻撃を受け、その時、近くにいた民間人を助けようとして盾になり敵の銃弾をくらい死亡、目が覚めると赤ん坊になっていた? 現代知識と特殊スキルによって、帝国と呼ばれる大国に立ち向かう小国の軍団の話しである

召喚出来ない『召喚士』は既に召喚している~ドラゴンの王を召喚したが誰にも信用されず追放されたので、ちょっと思い知らせてやるわ~

きょろ
ファンタジー
この世界では冒険者として適性を受けた瞬間に、自身の魔力の強さによってランクが定められる。 それ以降は鍛錬や経験値によって少しは魔力値が伸びるものの、全ては最初の適性で冒険者としての運命が大きく左右される――。 主人公ルカ・リルガーデンは冒険者の中で最も低いFランクであり、召喚士の適性を受けたものの下級モンスターのスライム1体召喚出来ない無能冒険者であった。 幼馴染のグレイにパーティに入れてもらっていたルカであったが、念願のSランクパーティに上がった途端「役立たずのお前はもう要らない」と遂にパーティから追放されてしまった。 ランクはF。おまけに召喚士なのにモンスターを何も召喚出来ないと信じていた仲間達から馬鹿にされ虐げられたルカであったが、彼が伝説のモンスター……“竜神王ジークリート”を召喚していた事を誰も知らなかったのだ――。 「そっちがその気ならもういい。お前らがSランクまで上がれたのは、俺が徹底して後方からサポートしてあげていたからだけどな――」 こうして、追放されたルカはその身に宿るジークリートの力で自由に生き抜く事を決めた――。

処理中です...