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第一章【それぞれの冒険】

past3❲天空で仕留める!❳

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浮遊島ガスカは島ではなかった。

ガスカの正体は巨大な巨大過ぎる蛙だったのだ。

不死鳥フェニックスモデルのWEGSウェグスの私、アースフィールは龍人化している相棒の那賀龍神を抱えた状態で、地上7千メートル上空に浮いている。

「何で蛙が空中に居るんだ!?」

眼前には所々の場所から岩石が崩れ、茶色の肌が露出し、巨大な眼が私と那賀龍神を睨んでいた。

「あれは絶滅したと言われる海蛙シーフロッグだと思われます。シーフロッグは両生類の中で唯一海に適した怪物です」

「絶滅したって、実際に生きてんじゃねぇか?」

那賀龍神がもっともな質問をする。

「シーフロッグの特徴はとどまる事を知らない身体を持ち、海の中ではあらゆる生物を糧にし、巨大化します。おそらくシーフロッグの成長を何処の誰かが封印したのか、ただ単に今の今まで冬眠していたのかは解りかねますが……」

私はそう答え那賀龍神を掴んだまま、シーフロッグの眼の近くへと移動させた。

「龍神さま、シーフロッグが落下して行きます。海へと落とし逃げでもしたら、龍地球の生態が狂うどころか環境破壊へと繋がります」

「海に落ちる前に仕留めろって事か!上等だぜ!」

「世界広しと言えど、こんな巨大怪物を仕留めれるのは龍神さまか四騎帝しかいません。龍の召還を暴走しない程度でお願い致します」

私の言葉に那賀龍神の口が軽くつり上がると、「じゃあ7頭だ!」と宣言した。

那賀龍神の身体にはすでに龍3頭が宿されており、肩甲骨が盛り上がり、更に両足が変型していく。私は那賀龍神から離れると、肩甲骨から龍の首が2つ飛び出し、両足は2つの龍に変化した。

「龍神さま、掴まなくても大丈夫ですか?」

落下する那賀龍神に私が言うと同時にシーフロッグも岩や土から脱出し、那賀龍神を敵と認め落下しながらも遅いかかって来た。

「海に落ちる前に仕留める!」

那賀龍神はそう答えると背中を丸め長首の龍4頭をシーフロッグへと身構える。

シーフロッグの巨大な舌が那賀龍神へと伸び捕らえようとするが、那賀龍神は身体全体を大の字にし、かわした。当たれば原型なく即死する。そんな舌の攻撃が何度と来る。その度にが息吹を吐きながら落下速度を落としたり、コースを変えたりしながらかわす。

そう攻撃を凌いでいると、シーフロッグの背中から無数の物体が那賀龍神目掛けて放たれた。

放たれた物体は、巨大蛙ジャイアントトード翼蛙フライングトード多頭蛙スーパートードやフロッグマンであり、シーフロッグは様々な怪物蛙の母でもある。フロッグマンの大量発生の原因は、シーフロッグの無限とも言える産卵にあったのだ。

「龍神さま、助太刀します!」

「入らねぇよ、ポンコツ」

私が那賀龍神に近づこうとしたら間髪入れずに拒否してきた。

「大丈夫だ、すぐに終わらせる。しかも一撃でな」

空から落下している状態で高らかに勝利宣言をする。一撃?無数に向かって来る怪物蛙の集団は海に落下すれば死ぬだろうが、相手は浮遊島だった巨大過ぎるシーフロッグだ。いくら那賀龍神でも一撃では……

「有言実行っ!ポンコツてめぇ、何年、俺の相棒してんだ!俺はやるって言ったらやる!」

那賀龍神の言葉に嘘はない。確かに今まで那賀龍神は私に嘘は付いた事はない。しかも言葉にしたら絶対に実行していた。

「任せました!龍神さま!海面手前であなたを受け止めます!もちろんあなたがシーフロッグを倒してからです!」

私の言葉に那賀龍神は笑みを浮かべ、私は天空を大きく旋回し、那賀龍神は身構えた。

那賀龍神の背中の龍と両足の龍、両肩の龍の6頭が口を大きく開け、額の龍がそれぞれの龍に指令を出すように口開く。

離れた上空から見れば、那賀龍神の姿はまるで龍の手のようであり、五つの指先から赤、青、黄、緑、白の光が放たれ那賀龍神の前に付き出した両腕から両肩の龍が放った光が両腕へと伝わり、眼前に巨大な光が合体する。

シーフロッグは危険を感じたのか、那賀龍神の攻撃を阻止しようと、巨大舌を出す放ち、更に無数の子を放つ。

……が、那賀龍神の光の光弾が炸裂し、近づく怪物蛙達は消滅し、シーフロッグの頭部へと直撃した。

シーフロッグの顔面は消滅し、残った身体はまだ蠢きを見せていた。後は海へと叩き落ちればシーフロッグの活動も沈黙するだろう。

私は那賀龍神を本当に海面スレスレでキャッチした。すでに那賀龍神は本来の、いつもの姿に戻っていた。

「し、しまった……」

「どうしましたか?」

那賀龍神が私の背中でなぜかショックを受けていた。

「必殺の技だったのに、必殺技の名前を言い忘れた……」

私は那賀龍神のその言葉に対し、無言を貫くと決めた。

シーフロッグの身体が海へと落下し、辺りは激しい津波を起こした。

数分後。シーフロッグの巨大な死体が海面に浮かび、この死体はどうするかを私は思案していた。

「まさか、このままにする訳にはいかないか」

「環境破壊に繋がりますしね」

那賀龍神と私が途方にくれると、突然海底から黒い物体が映し出された。

「何だあれは?」

上空で旋回する私の背中で那賀龍神がシーフロッグの下を移動する巨大な物体へと指さした。

物体が海上へと浮かび上がり、巨大な触手がシーフロッグに絡み付く。

「蛸?」

「いや烏賊でしょ?」

那賀龍神の言葉に私は思わず否定した。

触手は巨大なシーフロッグの死体に絡み付いている。つまり、触手の持ち主も巨大であることは私の機械の目を疑うわけにはいかない。

更に触手は五つ。五つと言う事で巨大な烏賊や蛸ではない事が解る。

更に触手と思っていたのは違っていた。

「龍?」

そう五つの触手の正体は五つの龍の首であり、更に五つの首はひとつの物体へと繋がっていた。

「やっぱり蛸じゃねぇか」

那賀龍神が何故かこんな状態なのに勝ち誇ったように答えた。確かに蛸の頭のようなシルエットだが、脚が龍の蛸など居ない。否、居た!

「龍神さま、あれは十三龍の一頭です」

「十三龍?……ってあの最強の龍?」

那賀龍神の発言に私は無言で頷いた。

「この蛙を倒したのは貴様らか?」

突然五つ首の龍が私達に言葉を放った。

「おう、俺が倒した!」

「ほう、貴様が?名は?」

「那賀龍神だ!てめぇは?」

那賀龍神は怯むことなく、巨大な龍に質問した。

「我が名は、龍地球の子、十三の龍が一。海龍バラクーヌ」

バラクーヌのひとつの頭がいつの間にか、私と那賀龍神の前に立ち塞がっていた。



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