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第一章【それぞれの冒険】

case4❲サーカッシュの洞窟へ❳

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あたし、エリア・ハート・ブレイバーと一行はアールド王国の西門にいた。

アールド王国の面積は50平方キロメートルで、その周囲は簡単な木や鉄の柵が廻りを囲っている。

門がある東西南北にだけ関所の建物があるだけ。

外を出れば緑の山や草原、森があるだけ。たまに電信柱や山の頂に鉄塔が見える。

「いつ帰れるかな?」

アストが呟きながらアールド王国の街中を見ている。

キャルはまた泣いているが、いつもの泣きよりギャン泣きしていた。ジイジイと離れるのがよっぽど寂しいらしい。

「大丈夫だよキャルちゃん!ミーが片時も放さず守ってあげるから」

パラガスがキャルにウインクして言うと、キャルは一瞬だけ泣きやみ、パラガスの自信満々の笑みを見てからまた泣きだした。パラガスが余程、頼りないのだろう……

「クズカス、ミレアは?」

あたしはピットを呼ぶ時の7割はクズカスと呼んでいる。

「ああん!誰がクズカスだぁ!ブス姉!」

あたしの回し蹴りがピットのこめかみにヒットし、ピットが地面でもがく。ちなみにあたしはブスじゃないっ!

「ミレアなら自分のWEGSウェグスに股がって寝てるよ」

アストが指さしながら答えた。

確かにミレアはいた。しかし本当に存在感が薄いなぁ、あの子は……

ミレア・ソウル。はあたし達と同い年で幼少からの幼なじみ。あたし、キャルはもちろんミレアとも親友である。

白い肌、白い髪、顔立ちも良くて優しい。ただし起きている時は、だ。

彼女は一日18時間は寝ていて、無理に起こすと機嫌が悪く、暴れる。起きていたら存在感なし。

よく人からミレアは二重人格者かと言われるんだけど、あながち当たっている。彼女には秘密があり、それは……

「おい、そろそろ行こうよ」

アストが出発を促すと、あたし達はそれぞれの相棒であるWEGSへと近づいた。

WEGSには大なり小なり、大きいので三百メートル、小さいので三センチと様々な大きさ、様々な形態のWEGSが存在する。

WEGSの形態は龍地球に生きる怪物モンスターや、恐竜に動物等があり、能力者の強さによりランク付けされたWEGSが支給されるの。また、WEGSを収納する場合、WEGS収納空間と言うのがあって呼び出しに応じて出現するの。分かりやすく言えば、召喚獣を呼ぶような感じなんだけど、これが出来るようになったのは、まだ二年しか立ってないんだ。

あたしのWEGSは黄色いボディーの蜥蜴馬ムシュフシュモデルで、名前はブライダルリング。詳しい特徴は旅の途中にでも……

簡単にだけど、アスト達のWEGSも紹介すれば、まずアストの相棒は赤い八本脚蛇バジリスクのフリーブレイバー。

パラガスの青い相棒がぬえモデルのカオスギルティ。

キャルの愛機はコバルトグリーンの麒麟キリンモデルのファーストラヴ。

ミレアのWEGSが白銀の龍馬ドラゴンホース、名前がデスオブウィッチ。

そしてピットのWEGSがブロンズ色した飛竜ワイバーンのブラッディーメリー。

以上があたし達のWEGSよ。

前置きがかなり長たらしくなったけど、いよいよ冒険の始まり。

あたし達はそれぞれの相棒に乗りアールド王国を後にした。

まさか、この旅立ちがあたし達六人……、いやいや、かつてのクラスメイト達を、龍地球全体を巻き込む大冒険の始まりだなんて、この時は知るよしもなかった。

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