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微笑みの楽園

微笑みの楽園

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首無し騎士と黒馬の出現からしばらく経過し、その場にいたパラガスやロッツロット、十龍にいたるまで、ミレアと首無し騎士が動かなくなった事に、ようやく気がついた。

「やはり、シャムが原因か…」

パラガスは黒馬を目にし、つぶやいた。

ミレアは黒馬を凝視したまま、金縛りにあったように動かなかった。

「ミレアは、どうしたと言うのだ?」

ロッツロットがパラガスに質問した。

「おそらく、ミレアの精神は崩壊され、今は悪い夢でも見続けている頃でしょう……」

「どういう意味だ?」

パラガスの言葉に、ロッツロットは理解出来なかった。

「その馬がナイトメアに変貌し、ミレアに悪夢を見させているのだろう……」

言ったのは空に浮かぶ巨大な月龍だった。

「突然現れた首無し騎士の背中への一撃で、ミレアは悪夢の世界の住人となった……」

パラガスはミレアの背中を目にした。

血も流れてなければ、傷跡もない。

普通の一撃でなく、悪夢の世界へ誘う一撃……。

「ありがとうアスト、ありがとうシャム……」

パラガスは亡き親友に向かって、涙した。

そしてミレアの身体は念のため、月龍の魔法により、宇宙空間へと召喚した。

悪夢を見続けるミレアが、龍地球に戻る事は二度とないだろう……。

十龍達はそれぞれの住み処へと帰り、命龍ミレアの野望は夜明けとともに終焉した。





数日後、パラガスはドワーフのタンクと、エルフのペテンと共に、ラッドビード王国を離れ、馬車でシーフー山脈を移動していた。

「パラガスさん、これから何処に行くんです?」

二頭の馬を手綱で操るパラガスに、ペテンが質問した。

「…決めてない」

パラガスが意地悪く答えた。

「悪いがタンク、林檎をひとつ取ってくれないか?」

後ろで休むタンクに、パラガスが注文した。

タンクは文句を言いながら、木箱に入った食料の中から林檎を取り、パラガスへと投げた。

タンクの怪我も順調に回復していた。

パラガスは笑顔で、礼を言い、林檎をかじった。






「もっとこの国にいてもいいのだぞ」

ロッツロット国王がパラガスに告げた。

王国の門近くまで、見送りに来た双頭の蜥蜴王の顔がそれぞれ寂しそうだった。

「ありがとうございます、ですがオレはもう宮廷魔術師でなく、冒険者なのです。アールド王国やラッドビード王国のような悲劇を生まない為に、オレは困った人や亜人達の為に生きたいのです」






この龍地球は広大だ。

ミレアに匹敵、否、それ以上に邪悪な者が各地に存在するだろう……。

龍地球には様々な生物が、存在するのだから……





「……ガスさん、どうしたんです?」

ペテンが横から口をだし、パラガスは我に返った。

パラガスの冒険はこれから壮大になるだろう。

パラガスはペテンにだけ、自分が冒険者になり、各地の人助けをする事を言わなかった。

言えば、ペテンの性格からして、逃げ出すのが落ちだからだ。

逃げるなら逃げるで、別に道中うるさくなくて済むのだが、ペテンがいないと困る時がある。

例えば……、

「うわ、もうすぐ大雨が降りますよ!」

パラガスは便利な天気予報士だと思い、タンクに雨具を取るよう頼んだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーー





楽園のような広大な花畑に、数多くのアールドの国民がいる。

魂の楽園……。

龍地球の魂が変化した輪廻の楽園……。

その楽園の名は、ボーライ……。

その楽園で皆が、笑顔で雑談していた。

その中に茶色がかかった髪をした青年がいた。

その青年は、男爵セレケや、以前、青年を逮捕した警官と会話をしていた。

その時、花畑の奥から、ユニコーンに跨がった成人女性の姿が見えた。

ユニコーンが近づくと同時に、国民は女性の為に道を開けた。

成人女性の容姿は、長い黒髪に白い法衣を着ていた。

ユニコーンが青年の前に止まる。

「貴方は?」

女性が青年に尋ねた。

「ボクの名は、アスト、キミは……?」

女性は汚れない乙女にしか乗れないユニコーンの上から自分のを、アストに笑顔で名乗った。

その女性が自身の名を言った後に、妙な違和感を感じた。

「どうしました……?」

……と、アスト。

「いえ、なんだか自分の名をいったのが、ずいぶん前に言ったような感覚をうけまして…」

「どれくらい前に感じました?」

アストは女性を見上げ、質問した。

「笑わないで下さいね、大袈裟かもしれませんが、千年ぶりに、自分の名を……、本当の名前を言ったような、そんな感じがしまして……」

その女性の言葉に、アストは屈託のない笑顔をみせると、女性も幸せそうに微笑んだ。












〔DragonEarth〕
    
 
    DEATH OF WITCH


                                                  THE END,

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