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第七章
一段落
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「それにしても南、何でお前はこんなところを一人でほっつき歩いていたんだ? 奏多はどうした」
「あ、それ。日暮が笹山を連れて行ったから気になって」
「笹山? 笹山が日暮とどうなろうが、お前には関係ないだろうが」
「そりゃそうかもしれないけど、気になるんだもん。友達だし」
「友達? そうなのか?」
「そうだよ。他に何があるって言うんだよ」
「 ……それにしても、一人になるなと言っている」
「悪かったよごめん。あっ!」
「なんだ?」
「教室戻らなきゃ。授業始まってる」
「今更……」
「そりゃそうだけど。……それとも、保健室に連れてってくれるの?」
「その方がいいかもしれないな。行くか?」
「……うん」
迷ったけどロベールと一緒にいる方を選んだ。だって確かに今更だし、今はロベールに甘えたい気持ちのほうが強かった。
保健室に行くと見たくもない客が待っていた。マクだった。相変わらずモデルのようにすらりとした長身を誇示するように、 格好つけて立っていた。(僕のマクへの嫌悪感がそう見せているのかもしれないけど!)
「スノウは連れて行かれたようだな。まさか本当に君が魔界と連絡を取るとは思わなかったけど」
「門番に思念を送っただけだ。それ以上のことをする気はないさ」
「ふうん……」
マクは腕を組んで僕を見る。相変わらずの冷めた目つきだ。
「だがもう今度こそ、これで一安心だ。心配かけたな」
「いや、だが少しでも君の恩に報えたのならよかった」
「ああ報えた、報えた。だからもう監視はなくていいぞ」
「監視ではなく保護のつもりなんだがな」
なんだかやっぱり少し楽しそうな応酬をしている二人を見ているのは、あまり気分のいいものではない。だけど僕が二人に迷惑をかけたのは間違いないだろうから、あんまり文句は言えないんだけどさ。
しばらく二人で何やら話していたけれど、ロベールがチラッと僕の方を見て、それからマクに向き直った。
「……というわけで、いろいろ解決したわけだし、南と二人になりたいんだが」
「溺れてるな」
「まあね」
「自覚ありだな。まあいい、それじゃあ私は帰るさ」
「監視はいらんぞ。南が傍にいてくれるから、こいつを泣かす気はないし」
「……また来る。じゃあな」
そう言って、マクは振り返りもせず消えていった。
「まったくあいつは、まだ私に纏わりつく気か」
ため息混じりに言うロベールは、おそらくマクの気持ちに気がついてはいない。それともわかっていて、知らないふりをしているんだろうか?
僕から見ても彼は、絶対ロベールに気があると思うし。
「南……」
ちょっぴり低くて甘い声で、ロベールが僕の名を呼んだ。顔を上げるとロベールが、僕を抱き寄せしっとりと甘く唇を重ねた。
溺れている。それは僕だってそうだ。
今は授業中。その独特な静かな校内の中で、僕はロベールの腕の中、暖かい体温にほっと安堵の息を吐いていた。
「あ、それ。日暮が笹山を連れて行ったから気になって」
「笹山? 笹山が日暮とどうなろうが、お前には関係ないだろうが」
「そりゃそうかもしれないけど、気になるんだもん。友達だし」
「友達? そうなのか?」
「そうだよ。他に何があるって言うんだよ」
「 ……それにしても、一人になるなと言っている」
「悪かったよごめん。あっ!」
「なんだ?」
「教室戻らなきゃ。授業始まってる」
「今更……」
「そりゃそうだけど。……それとも、保健室に連れてってくれるの?」
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「……うん」
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保健室に行くと見たくもない客が待っていた。マクだった。相変わらずモデルのようにすらりとした長身を誇示するように、 格好つけて立っていた。(僕のマクへの嫌悪感がそう見せているのかもしれないけど!)
「スノウは連れて行かれたようだな。まさか本当に君が魔界と連絡を取るとは思わなかったけど」
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「ふうん……」
マクは腕を組んで僕を見る。相変わらずの冷めた目つきだ。
「だがもう今度こそ、これで一安心だ。心配かけたな」
「いや、だが少しでも君の恩に報えたのならよかった」
「ああ報えた、報えた。だからもう監視はなくていいぞ」
「監視ではなく保護のつもりなんだがな」
なんだかやっぱり少し楽しそうな応酬をしている二人を見ているのは、あまり気分のいいものではない。だけど僕が二人に迷惑をかけたのは間違いないだろうから、あんまり文句は言えないんだけどさ。
しばらく二人で何やら話していたけれど、ロベールがチラッと僕の方を見て、それからマクに向き直った。
「……というわけで、いろいろ解決したわけだし、南と二人になりたいんだが」
「溺れてるな」
「まあね」
「自覚ありだな。まあいい、それじゃあ私は帰るさ」
「監視はいらんぞ。南が傍にいてくれるから、こいつを泣かす気はないし」
「……また来る。じゃあな」
そう言って、マクは振り返りもせず消えていった。
「まったくあいつは、まだ私に纏わりつく気か」
ため息混じりに言うロベールは、おそらくマクの気持ちに気がついてはいない。それともわかっていて、知らないふりをしているんだろうか?
僕から見ても彼は、絶対ロベールに気があると思うし。
「南……」
ちょっぴり低くて甘い声で、ロベールが僕の名を呼んだ。顔を上げるとロベールが、僕を抱き寄せしっとりと甘く唇を重ねた。
溺れている。それは僕だってそうだ。
今は授業中。その独特な静かな校内の中で、僕はロベールの腕の中、暖かい体温にほっと安堵の息を吐いていた。
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