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第五章

姿を現したスノウ

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部屋に戻ると案の定、ロベールがベッドでくつろいでいた。

「母さんたちに言ってきたよ」
「ん? 下宿の件か?」
「うん。明日面接だって」
「面接?」
「うん。下宿を受け入れるだなんて今まで考えたことも無かったし、戸惑ってるんじゃないかな」
「ああ、なるほどね」

ベッドわきに近寄りポスンとロベールの隣に座って、起き上がった彼にちょこんと凭れ掛かる。

「……大丈夫だよね? ロベール、人をたらし込むのは上手いでしょ?」
「なんだ、それは。私は南に関しては、いつも誠心誠意だぞ?」
「うん……」
「誠心誠意、愛情表現をしているだけだ……」

そう言いながらロベールが唇を寄せてきたから、僕もそっと目を閉じてそれに答えた。

軽く唇を重ね合わせる触れ合うだけのキスから、お互いの口中を貪りあう深いキスへ。そしてそれを堪能した後、唇は徐々に首筋から鎖骨あたりへと下降していく。

「ロベール……」

求められていると思うと恥ずかしさとうれしさで愛しさが募る。ギュッと僕の方からも彼を包むように抱きしめると、カプリと甘噛みされてビクンと反射的に反応した。

「…………」
……これって何気に恥ずかしいんだよな。感じましたって、ロベールに白状してるみたいで。

「甘い……」
「え?」
「生き返るような甘いフェロモンだ」
「……っ! ばっ、ばかっ! 何恥ずかしいこと言ってるんだよ!」
「本当のことだ」

僕から体を少し離して、ロベールは真剣な表情で僕を見た。そして視線を窓の方に向け、「お前には欠片もやらんぞ」と言い放った。

え? 何?
そこに誰かいるの?

ぎょっとして目を凝らして窓の外を見ていると、閉まっている窓から、すうっとまるで幽霊のように人の形が現れて、恐ろしいほど綺麗な男が現れた。
僕はびっくりして、咄嗟にロベールのシャツを掴んだ。

「……ずいぶんと久しぶりですね。まさかこんなところでお会いするとは思いませんでしたよ」
「それは、こっちのセリフだスノウ。お前勝手にこんなところに出て来ていいのか?」
「良くはないでしょうね。ですが私は兄とは違って後継の問題も無いわけですから、このくらいの息抜きも時には必要ですよ」
「息抜きね……。一向に構わないが、それは私に関係のないところでしてくれないか」
「…………」

ロベールにピタリとくっ付いて、息を殺すほどに身を潜めるくらいの気持ちで二人の会話を窺っていたのに、突然スノウがロベールに向けていた視線をこちらに向けた。
それはゾクッとするほどの気味の悪い視線だった。まるで僕の体中を舐めるように、気味悪く絡みつく。

「おい!」

ロベールは、スノウを威嚇すると同時に僕を抱き寄せ胸の中に抱き込んだ。
おかげで絡みつく視線から逃れることが出来、温かい腕の中に囲われてホッと息を吐いた。
だけどスノウの一言で、ザワザワッと体中におぞましい悪寒が駆け抜ける。

「すごく魅力的な精だ……。それを取り込めば、気持ちのいいエネルギーで満たされそうだな」

それは、とてつもなく気味の悪い声だった。
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