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第三章

癪に障る奴

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「ところで、のんびりしていていいのかい? 君はそろそろ授業が始まる時間じゃないのか?」
「えっ? あ、本当だ!」

すっかり時間のことを忘れていた。
ロベールの腕の中でもぞりと動くも、僕を抱きしめている当人は腕の力を抜いてくれない。

「ロベール……、えっと、あの……、僕もう行かなきゃ……」
「…………」

ロベールは僕の呼びかけには無言で、抱く腕の力を一瞬強くした。そして顎を捕らえて上向かせ、僕が「え?」と思う間もなく唇を重ね合わせる。少し強引に舌を潜り込ませて、甘く強く僕の舌に絡めた。

ちょ、ちょっと待って!
人が見てるのに、何考えてんだよ!

焦って必死で引き離そうとするものの、力強く抱きしめられていてままならない。しかも段々甘く深くなるキスに、僕の方の力が段々抜けて来てしまった。

……もう、どうにでもして。

なんてそんな言葉が頭をかすめる中、僕の変化に気が付いたのか、ロベールも少し力を抜いて、今度は軽く啄むようなキスをし始めた。

……くすぐったい。
でも、このロベールのキスは好きかも。

そっとロベールの背に腕を回すと、少し間をおいてからロベールが唇を離した。

「……名残惜しいが仕方がないな。南の気配は追っているから変態達に過敏になることはないけど、注意だけは怠るなよ?」
「……うん」
「――ずいぶん成長したんだね」

名残惜しむ会話をロベールとしているというのに、傍で見ていた天界人が、不躾にもそれに割り込んできた。

ロベールもきっと僕と同じことを思ったんだろう。冷たい視線を彼によこした。

「関係ない奴が割り込んでくるな」
「はい、はい」
「…………」

なんか、なんだかすっごくヤな感じ。
昔からの知り合いだか何だか知らないけど、この人とロベールを二人っきりにさせたくないってマジ思う。
……とは言っても、これ以上ぐずぐずしてるわけにはいかないし……。

「南?」
「あ、……うん。じゃあ行くね」
「ああ。適当にここに遊びに来い。待ってるから」
「……うん。分かった」

僕は後ろ髪をかなりの割合で引かれながら、ベッドから降りて保健室から出た。

その時、扉を閉めるその一瞬のうちに見えた天界人の表情がなんだかとても気に入らなかった。
それは相変わらずの静かな笑みで、そのすごく落ち着いた余裕の表情がすごく癪に思えたんだ。
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