上 下
15 / 93
第二章

ロベールのお泊り

しおりを挟む
正体もそうだけど、僕んちに泊まると言い張るロベールに僕の心臓がバクバクと煩い。

泊まるって……、泊まるって!

バクバクどぎまぎしながら家に着いた。

「案ずるな。家の者には気配は一ミリも出さないから」

いや、気になるのはそこじゃないし!
だって、ロベールは十分変態なことしてくるし……、僕本気でロベールに迫られたら……、どうなっちゃうんだろう。

「……濃くなってる」
「へ? はあ?」
「フェロモン濃くなってるぞ。誘ってるのか?」
「……ばっ、何言って……!」

とんでもないことを言われて、カーッと一気に顔に熱が集まった。

「ああ、悪い。とにかくさっさと家に入れ」
「わ、分かったよ」

「ただいまー」
「おかえりなさい、南。そろそろご飯にするから、着替えて手を洗ってきなさい」
「うん」

僕の部屋は二階なので、タタタと階段を駆け上がり部屋を開けた。パパッと制服を脱ぎ捨てTシャツを手に取る。

「うわっ!」

なにげに視線を向けた先に、ロベールがいたので驚いた。い……、いつの間に?

「何驚いているんだ。失礼な奴だな」
「だ、だって、急にいるからびっくりするじゃないかっ」
「窓のカギが開いていた。不用心だぞ?」
「え? なに、外から入ってきたの?」
「ああ。人通りが無くなったから、そのままふわりとな」
「そういえばロベール、飛べるんだったね。羽とかなくても飛べるなんて不思議だけど」
「ああ、短い時間ならな。私だって長時間飛ぼうと思ったら羽を広げなきゃダメだぞ」
「へえ? そうなんだ」

ってことは、ロベールは羽をもっているってこと? どこに隠してるんだろう?
疑問に思ってじろじろと見ていると、ロベールに怪訝な顔をされた。

「あ、ごめん。羽、どこにあるのかなと思って」
「なんだ、そんなことか。羽なら畳んでしまいこんでいる。それはまた今度な」
「んー、分かった」

簡単にいなされちゃった。残念。

「あ……、僕これからご飯食べに行くんだけど、ロベールはどうするの? ご飯食べなきゃお腹すいちゃうだろ?」
「それは気にしないでいい。人間の言う食事も普通にしはするが、それほど大事なことじゃない」
「そうなの?」
「ああ。だから気にするな」
「ふうん……。じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」

ロベールは静かに微笑んで、手をひらひらと振って僕を見送った。

でも、気にするなと言われても、一人だけご飯を食べているのはやっぱり気になる。僕は母さんと父さんがこっちを見ていない隙に、ささっと唐揚げを二個ほどティッシュに丸めて、ごちそうさまをした後いつものように下で少しのんびりした後自室へと戻った。

「ロベー……、あっ」

大きな声を出しかけて咄嗟に口をつぐんだ。
ロベールが僕のベッドの近くに座って、待ちくたびれた子供のような姿で俯せて寝入っていた。
そっと近づいて顔を覗き込んでも起きる気配がない。

……ホント、綺麗な顔してるよなぁ。鼻筋は通っているし、唇は色っぽいし。
艶々と輝く黒い髪に、白くて滑らかな肌がより一層際立っている。

「…………」

柔らかそうな髪だなぁ。

僕はそっと手を伸ばして、ロベールの緩くウエーブのかかった髪をそっと掬い上げた。

……柔らかい。さらさらして手触りも……、!?

さっきまで寝ているものだとばかり思っていたロベールがパチッと目を見開いて、僕をグイっと引っ張る。何が起こった!?と思う間もなく僕の体は、いつの間にかベッドの上に仰向けに寝かされていて、ロベールに組み敷かれていた。

「ロ……、ロベール……?」
「黙って」

ロベールの顔がゆっくりと僕に近づく。綺麗な顔の真剣な表情は、無駄に僕のドキドキを加速させて心臓に悪い。

「あ、あの……、唐揚げ……」
「――後でもらうから。目、瞑れ」

低く甘い声にぞくりとする。僕はやっぱり、ロベールのこの声に弱いようだ。

ドキドキと高鳴る気持ちのままそっと目を閉じると、ふわりと柔らかいロベールの唇が、僕のそれをしっとりと塞いだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?

すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。 ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。 要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」 そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。 要「今日はやたら素直だな・・・。」 美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」 いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

聖騎士の盾

かすがみずほ@11/15コミカライズ開始
BL
純潔の聖騎士は、あることをきっかけに淫らな悪魔の手に堕ちてしまう。 人の温もりを知らなかった彼は、肌を合わせる快楽とそれ以上の幸福を知ってしまい――。 人死注意、激しい性描写注意のファンタジーBL。 表紙https://www.pixiv.net/member.php?id=404935よもち様 ロゴhttps://mobile.twitter.com/choulac ണɑϲһǐ࿉様

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

花開かぬオメガの花嫁

朏猫(ミカヅキネコ)
BL
帝国には献上されたΩが住むΩ宮という建物がある。その中の蕾宮には、発情を迎えていない若いΩや皇帝のお渡りを受けていないΩが住んでいた。異国から来た金髪緑眼のΩ・キーシュも蕾宮に住む一人だ。三十になり皇帝のお渡りも望めないなか、あるαに下賜されることが決まる。しかしキーシュには密かに思う相手がいて……。※他サイトにも掲載 [高級官吏の息子α × 異国から来た金髪緑眼Ω / BL / R18]

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

処理中です...