43 / 59
俺に触れて?
心も体も1
しおりを挟む
ショップを出た後ファミレスで食事を終えて、駅のコインロッカーで荷物を取り、ホテルへと向かった。
俺の心臓は緊張でドキドキし始める。
自分で仕掛けたこととはいえ、陸の反応を考えると少し怖い。掌まで汗でべったりだ。
カギをフロントで受け取って、皆でエレベーターに乗りそれぞれの部屋へと分かれた。
俺は陸の後をついて行き、陸がカギを開ける傍で待機する。
「どうした? 部屋に荷物置きに行かなくていいのか?」
カチャリとカギを開ける音。
ドアを開けながら尋ねる陸に曖昧に微笑んで、俺も一緒にドアを押し開けて中に入った。
「おい、水?」
カギを差し込んで明かりが点く。
そこで初めて陸は、この部屋がツインではなくダブルだという事を知った。
「――」
無言で俺を見る陸。
だけどその顔は怒っているわけではなく、ただただ疑問に溢れていた。
「俺が頼んだんだ。陸と…、ダブルの部屋にしてくれって」
俺の言葉に陸が瞳を大きく見開く。信じられないと言った感じだ。
さっきから、俺の心臓の音は半端ない。
こんなに緊張したことってあったっけ?
陸は荷物をポンと放り、視線を床下に向けた。さっきの疑問に溢れた表情は、だんだん怒ったような表情に変わってきていた。
そんな陸の表情に、俺の掌の汗が増す。
「お前、俺の事全然わかってない」
ぐしゃりと自分の髪を掻き上げて、陸は絞り出すような低い声で呟いた。
「どういう…ことだよ」
分かってないって何?
俺の方こそ、それを言いたいよ。
陸が俺のことをすごく好きでいてくれるのは分かるけど、だけどあの時から、陸は俺の心の中をちっとも見てくれてはいない。
俺だって男なんだから人並みに欲求くらいはある。なのに陸は、まるで俺がそんな事を考えてもいないとでも思っているのか?
「…大切にするって言った。大事にしたいって……」
床を見ながら何かに耐えるように話す陸に、やっぱりと思う。
陸は俺をどこかの清純なお嬢様だとでも思っているのか。
「そんな必要ない」
俺の言葉に弾かれたように顔を上げた陸は、驚いた表情で俺を見る。
「陸、俺は女の子じゃないんだよ。こんなんでも、れっきとした男だ。…陸に触れたいとか、キスしたいとか…、もっと陸に近づいて、陸を感じたいって思うんだ」
俺の心臓は緊張でドキドキし始める。
自分で仕掛けたこととはいえ、陸の反応を考えると少し怖い。掌まで汗でべったりだ。
カギをフロントで受け取って、皆でエレベーターに乗りそれぞれの部屋へと分かれた。
俺は陸の後をついて行き、陸がカギを開ける傍で待機する。
「どうした? 部屋に荷物置きに行かなくていいのか?」
カチャリとカギを開ける音。
ドアを開けながら尋ねる陸に曖昧に微笑んで、俺も一緒にドアを押し開けて中に入った。
「おい、水?」
カギを差し込んで明かりが点く。
そこで初めて陸は、この部屋がツインではなくダブルだという事を知った。
「――」
無言で俺を見る陸。
だけどその顔は怒っているわけではなく、ただただ疑問に溢れていた。
「俺が頼んだんだ。陸と…、ダブルの部屋にしてくれって」
俺の言葉に陸が瞳を大きく見開く。信じられないと言った感じだ。
さっきから、俺の心臓の音は半端ない。
こんなに緊張したことってあったっけ?
陸は荷物をポンと放り、視線を床下に向けた。さっきの疑問に溢れた表情は、だんだん怒ったような表情に変わってきていた。
そんな陸の表情に、俺の掌の汗が増す。
「お前、俺の事全然わかってない」
ぐしゃりと自分の髪を掻き上げて、陸は絞り出すような低い声で呟いた。
「どういう…ことだよ」
分かってないって何?
俺の方こそ、それを言いたいよ。
陸が俺のことをすごく好きでいてくれるのは分かるけど、だけどあの時から、陸は俺の心の中をちっとも見てくれてはいない。
俺だって男なんだから人並みに欲求くらいはある。なのに陸は、まるで俺がそんな事を考えてもいないとでも思っているのか?
「…大切にするって言った。大事にしたいって……」
床を見ながら何かに耐えるように話す陸に、やっぱりと思う。
陸は俺をどこかの清純なお嬢様だとでも思っているのか。
「そんな必要ない」
俺の言葉に弾かれたように顔を上げた陸は、驚いた表情で俺を見る。
「陸、俺は女の子じゃないんだよ。こんなんでも、れっきとした男だ。…陸に触れたいとか、キスしたいとか…、もっと陸に近づいて、陸を感じたいって思うんだ」
1
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
俺の幼馴染はストーカー
凪玖海くみ
BL
佐々木昴と鳴海律は、幼い頃からの付き合いである幼馴染。
それは高校生となった今でも律は昴のそばにいることを当たり前のように思っているが、その「距離の近さ」に昴は少しだけ戸惑いを覚えていた。
そんなある日、律の“本音”に触れた昴は、彼との関係を見つめ直さざるを得なくなる。
幼馴染として築き上げた関係は、やがて新たな形へと変わり始め――。
友情と独占欲、戸惑いと気づきの間で揺れる二人の青春ストーリー。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。


記憶の代償
槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」
ーダウト。
彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。
そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。
だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。
昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。
いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。
こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる