近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺に触れて?

同好会旅行計画

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「よーっ、お疲れ…と、と? なんだクロ? 一人だけ汗掻いてんな。どうした?」
「ああ、それ。竹下とかいう変な奴がシロの周りうろちょろしてんだよ」

礼人の問いに、陸が返事をする前に、なぜか千佳が答えた。

「竹下…? あいつ、まだシロにちょっかい出してんのか」
呆れたように嫌な顔をする礼人に、竹下のつぶやきを思い出した。

「礼人、もしかして中学の時、竹下の、その…気持ちって気づいてたわけ?」

言いにくくて、モソモソと小さな声で礼人に聞くと、礼人は「おや?」というように目を見開いた。

「なに、あいつ、とうとうシロに告白したわけ? しょーもな」
「知ってたんだ…」


当人の俺が全然気がつかなかったのに、何で礼人が気づくわけ?
何だか腑に落ちない気がしてモヤモヤしていると、礼人に失笑されてしまった。


「お前さ、鈍感すぎるんだよ。あいつ、下心満々だったんだぜ? 気を付けろよ。て、まあクロがいるから大丈夫だとは思うけどさ」

「なあ、クロ?」と礼人が陸に振り向くけど、陸はさっきの事を思い出したのか、気まずそうに床に目を落とした。

「なんだ、あいつ」


礼人が思っていた反応と陸の態度があまりにもかけ離れていたんだろう。礼人は首を傾げながら陸の様子を見ている。
そこへ千佳がやってきて、何やらぼそぼそ礼人に告げていた。


…まあ、大体の予想はつくんだけどさ…。
おそらく想像通りの事を言ったんだろう。礼人がニヤニヤと陸の方を向いた。


「なんだなんだ、照れんなよ。お姫様を守って、ご褒美もらっただけだろ? な、水?」

今度はこちらを向いて、礼人がニヤリと笑う。まあ、当たらずとも遠からず?
俺はお姫様ではないけどな。



「さーて、よけいなお喋りはいいからさ。水はプチ旅行の話は聞いたのか?」

今日は涼さんも来ていて、いくつか小説を開いていた。

「はい。礼人がピックアップしているホテルも見ましたよ」

「そうか。一応小説ゆかりの地を訪ねるって事なんだけど…」
涼さんはそう言いながら、パラパラとページをめくる。

「涼さん、別に小説に拘らなくてもいいじゃないですか。ただの親睦会にしちゃいましょうよー」
「だーめ。一か所くらいはちゃんと行かなきゃ。ほら、この神社にはお参りに行くぞ」
「え~?」

面倒くさそうな物言いだけど、とりあえずガイドブックを覗き込む千佳。

「うわー、ここって、縁結びの神様がいるんだ」
「へー、良かったな、千佳。俺らが一生一緒にいられるようにお祈りしようぜ」

剛先輩もやってきて、千佳を引き寄せながら覗き込む。
引き寄せられた千佳はそのまま剛先輩にもたれ掛かり、ずるずると倒れこんで、先輩に膝枕をしてもらっている格好になっていた。

甘え上手というか、なんというか…。
羨ましいほどの千佳の甘えっぷりに、俺は苦笑いを浮かべていた。
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