近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺に触れて?

新たな火種2

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…びっくりした。びっくりし過ぎて声が出なかった。
今までのアノ微妙な挨拶は、揶揄ってるわけでも何でもなくて、本心だったって事か?

ふと見ると、陸が拳をきつく握りしめている。あまりにも強い力で握りしめているために掌が白くなっていた。

「陸」

俺は白くなっている陸の拳を、両手でキュッと包み込んだ。ハッとしたように、陸がこちらに視線を落とす。
絡み合う視線。険のあるその瞳が、緩く解れてきてホッとした。


「まったく…」


姿は見えないけれど、呆れたような口調で竹下がポツリとぼやく。

「紫藤の奴、中学の時さんざん俺のこと妨害してたくせに、何で黒田は良いんだか」


え? 
それ、初耳だぞ。礼人が竹下の事を妨害…?

妨害ってことは、竹下の気持ちに気が付いていたって事だよな。


礼人の奴…。

竹下には悪いけど、ちょっぴりほっこりしてしまった。


陸と急速に仲良くなれたのは、礼人がなんだかんだと陸に絡んでいったからだ。
…確か、バレンタインの…。陸がチョコを投げつけられたあの後くらいだよな。

あの頃は、陸の事は顔と名前を知っているだけで、陸がどんな人なのかとかそういう詳しいことは知らなかった。
だけど、何気に目立つ奴だったから、陸を見つけると自然に目がそこに行っていたんだ。
もしかしたらその頃から、礼人は俺が陸の事を好きになるかもって気づいていたんだろうか。…俺すらそんな事、思ってもいなかったのに。


「じゃあ、そういう事だから」

突然グイッと陸の肩を押しながら、竹下が俺の顔を覗き込んだ。

「俺は黒田なんかより絶対シロに優しく出来ると思うから――」

陸が態勢を整えて、腕を振り上げようとした瞬間竹下がひょいっと飛びのいた。


「考えてみて」

「あいつっ」
「陸!」

俺は陸の腕をぎゅっと握って陸を押しとどめた。

「悪いけど、考える余地ないから」

立てたくもない波風を立てるのは御免だから、俺ははっきりと竹下に告げた。
…告げたのに――。


「退かないよ」


俺の返事は予想の範疇だったようで、大した動揺もなしに、竹下はニッと笑って自分の席へと戻っていった。
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