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ジョーンズ様ーーー!

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「え……?」
 ルークの表情はさっきから混乱したままだった。青白い顔でジョーンズ様を見る。

「君の愛情が確かなものだったから、中途半端とは言え呪いが解除されノエルが助かったんだと思う。そうでなければ説明のつかないぐらい中途半端な呪いだろう?」
「そうですよね。しつこく5回も嫌な思いをさせるループをさせたにもかかわらず、サラに取って現在は何も面白い状況じゃない」
 ジョーンズ様の言葉にカーギル先生もうんうんと頷く。

「だけど僕はノエルに酷いことをしてたんですよね。婚約破棄だなんて……」
 俯くルークの肩に、ジョーンズ様がなだめるように手を置いた。

「ノエルを5回もループさせるような闇魔術の持ち主だ。君に掛けられた魅了の魔法もきっとかなり強いものだったに違いない。そんなに自分を責めるな」

「ジョーンズ様……。ノエル、僕のことを許してくれる?」
 潤んだ瞳でルークがぼくを見た。自分が知らないうちにしたことを飲み込めずにいるだろうに、それでもぼくの言葉を信じてくれてショックに打ち震えている。
 
「……はい」
 愛しいと思った。
 
 辛くて悲しくて、恨まなかったと言えば嘘になるけれど。
 だけどぼくを救ってくれたのはルークの真摯な愛情だったんだ。

「ぼくを助けてくれたのはルーク様だったんですね。ありがとうございました」
「そんなの、お礼を言われるようなことじゃないよ。それよりも何よりも、僕が君を傷つけていただなんて……」
「それは、もう……。ルーク様の意志ではなかったってわかりましたから」
「ノエル……」
 ルークがぼくの背中に腕を回した。ゆっくりと遠慮がちに抱きしめる。ぼくも同じようにルークをそっと抱きしめたら、ピクッと一瞬ルークの体が揺れ、強い力で抱きしめられた。

 やっと、やっと本当の意味で、ルークと心が通いあったような気がした。

「よかったです、よかったですね。ノエル様、ルーク様。これでもう2人は、ずっとキリンスに守られて一緒なんですね」
 アーネストの言葉にみんな感極まった。お兄様やクリス達も目を潤ませて微笑んでいる。


「いや、キリンスに人の気持ちを制御する力なんてないぞ? どちらかが普通に心変わりしたら、それまでだ」

 は?

「キリンスにあるのはさっきも言った通り、魔法や呪い除けだ。誰かが普通にアプローチをしかけてきて、それにほだされて別の人を好きになったら、それで終わりだ」
「えええーーーっ!」
 ルークが素っ頓狂な声を上げた。

 ぼくも驚いたよ!
 てか、ジョーンズ様、こんな場面で言うなんて情緒なさすぎ!
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