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ノエルの周りの人たち  サラ視点

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 去って行くルーク様とノエルたちを、呆然と見送ってしまった。
 だけど3人の姿が小さくなるのを見ているうちに、だんだんと腹が立ってきた。

 どういうことなの一体? お母様が言っていたこれから私に起こるはずだった未来とあまりにもかけ離れていて混乱してしまう。
 それでも昨日までは、ルーク様はあんなふうに取り付く島がないような感じじゃなかった。逃げられはしていたけれど、でももっと、押せばどうにかなるような隙があったのに。……まさか、あのノエルのせいなの?
 思い出しても腹が立つ。何あのノエルを見るルーク様の目。本当に愛しいモノでも見るような目つきじゃないの!

「怖い顔だね」
「なんですっ……、あっ、殿下! も、申し訳ございません」
「ああ、いいよ。こちらこそ不躾な言い方で悪かったね」
「……いえ」

 グレアム王子の突然の声かけに、心臓が飛び出るのかと思うくらいに驚いてしまった。
 遠くで見ていても素敵な人だけど、近くで見るとさすがに王族の威厳を感じる圧倒的なオーラだ。
 隣に居るのはハロルド様だ。あのノエルのお兄様。腹立たしいけれど、ノエルの周りには素敵な方が多い。

「何かあったのかい? 君のような可愛らしい人が、あんな顔をするのはもったいないよ」
「お見苦しい所を失礼致しました。――私の大事にしている庭を、最近ノラ猫が荒らしにくるのを思い出してまして。どう対処をしたらいいのかと思い悩んでいたのです」
「猫……? そうだな。猫は、香りの強いハーブなどが嫌いだと聞いたことがある。被害のあるところに植えてみたらどうだ? 猫は縄張り意識が強いらしいから、もしかしたらふん被害とかも?」
 縄張り意識……。

「そうですね、困っています」
 今頃はルーク様と、夫婦として幸せに暮らしているはずだったのに。あの泥棒猫。どこまでしぶといのかしら?

「魔法で駆除しようとしたりしてはいけないよ」
「えっ?」

 突然、ハロルド様にまで声をかけられてしたたか驚いてしまった。一瞬ノエルを猫に見立てたのがバレてしまったのかと焦った。
「そうだね。多少の被害はあっても、それ相応のやむない理由がない場合は、精神的であれ、物理的であれ、攻撃魔法は違法だからね」

 今度は、ザッと血の気が引く音まで聞こえた。
 そんな事があるはずないのに、王子が私とお母様の罪に気がついているのかと思ってしまった。

「グレアム様、そろそろ参りませんと」
「ああ、そうだね。じゃあね、いいハーブが見つかるといいね」
「ありがとうございます」

 これ以上追求されなくてよかった。私は知らずうちにホッと安堵の息をついていた。
 それにしても、さすがの王子様だ。少しほほ笑んだだけで、まるで後光でも差し込んできたかのようにクラクラしてしまう。

「そうだ。王城にはいつ来てもいいから、近いうちに日にちを取ってくれ。ノエルに見せたいものもあるんだ。きっと喜んでくれると思うんだよ」
「ノエルに見せたいもの? 何ですか、それ」
「それは見てのお楽しみじゃないか?」

 楽しそうな会話が遠のいていく。
 頭に血が上っていくのがわかった。

 ……うそでしょ? どうしてグレアム王子までもがノエルのことを気になんかしたりするの?
 ハロルド様はもともと王子の側近だったから当然のことだけど。でもノエルが、王子とこれといった交流があった記憶なんてない。

 やっぱり、どう考えても以前と流れが変わってきている。

 
 ノエル、絶対に、絶対に許さないんだから。
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