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ルークの違和感
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「えっと、そのですね……」
どう聞いたらいいだろう。変に思われないように聞くには……。
ぼくが逡巡している間、ルークはじっと我慢して待ってくれていたんだけど、そのうちぼくの手をキュッと強く握った。
「まずはテラス席へ行こう。それからゆっくり話を聞くよ」
「あっ、そうですね」
せっかく予約してくれていたのに、のんびりしていたらきっとまずいよね?
ぼくらはランチを受け取って、それから予約した席に着いた。
パンにスープにサラダにお肉。美味しそうだ。
特にこのサラダ、てんこ盛りだな。いろんなハーブが入ってるぞ。あっ、レオガノ。これって神経を落ち着ける力を持ってるんだよな。効果を高めて、もっといい品種が出来ないかって今一生懸命ぼくも頑張ってる奴なんだけど。
ゴソゴソとフォークでサラダを確認することに熱中しているぼくを、ルークは可笑しそうに見ている。
「あ、すみませんルーク様」
穴があったら入りたいとはこのことだ。きっと呆れていたよね?
「いいよ、君が一生懸命ハーブや薬草の研究をしているってこと分かっているから」
ルークはそう言った後真面目な顔つきになった。
「で? さっき言いかけたことって何?」
「あっ、は、はい」
ゴクッと唾を飲み込む。
ルークにもぼくの緊張が伝わったのか真面目な顔つきはそのままだ。
「サラ……さっきルーク様がサラ嬢と一緒にいるところを見たんですけど。その、彼女とは?」
「えっ?」
ルークの顔が訝しいものに変わった。戸惑っているようにも見える。
「えっと……その、彼女かわいい人だから、どういう知り合いなのかなと思って」
「…………」
ええっ? 返事がないぞ。
まずかったのかな? ダメだったかな? こんなこと聞いたりすると面倒くさいと思われて、やっぱりサラの方に気持ちがいったりするのかな?
「もしかして、ノエルもやきもち焼いてくれたの?」
「えっ?」
あっけにとられていたルークの顔が、だんだんと甘く綻んでいっている。これは不快感というより、どう見ても喜んでいる表情だ。
ううう、それはそれで恥ずかしい。
「彼女と会うのは2度目だよ。 1度目はお茶会の時だ」
「そう……なんですか」
「僕は最初からノエルしか見てないし、今だってそうだよ」
「…………」
今度はぼくが黙ってしまう番だった。今のルークは知らないけれど、このあとぼくが知らないうちにルークはサラを好きになっていくんだ。
戸惑っているぼくを、ルークがジッと見ている。
「……こんなこと言うべきではないと思うから言わずにいようと思っていたんだけど、彼女なんだか少し怖いというか、違和感があるんだ」
「えっ?」
思いもかけないルークの言葉に、ぼくはフォークを落としそうになって焦った。
(落とさなかったけど)
「どう表現していいかわからないんだ。体が拒絶反応を起こすというか、それなのに気を抜くと意識が別の方に持って行かされそうになるというか……。ごめん、意味分かんないよね」
「あっ、いえ……」
心臓が壊れるんじゃないかというくらいにドキドキとうるさい。
これはどういうことなんだろう? ルークが心変わりしたのはサラが何かを仕掛けたからなのか? ぼくやルークの知らないところで何かが起こっていて、ぼくらは操られていた?
ぼくの顔色が随分と悪くなっていたのかもしれない。ルークが心配そうにぼくを見つめている。
「ねえ、ノエル。よかったら今日僕のうちに寄っていかない?」
「えっ?」
「シェフが焼き菓子作りに凝りだしてね。とても美味しいんだ。ノエルにも食べてほしいから今日おいでよ。――それとも何か用事ある?」
「特にないです」
「そう、じゃあ決まりだ、いいね?」
「はい」
心臓はまだドキドキとうるさいけれど、ぼくは気を取り直して食事を続けた。
どう聞いたらいいだろう。変に思われないように聞くには……。
ぼくが逡巡している間、ルークはじっと我慢して待ってくれていたんだけど、そのうちぼくの手をキュッと強く握った。
「まずはテラス席へ行こう。それからゆっくり話を聞くよ」
「あっ、そうですね」
せっかく予約してくれていたのに、のんびりしていたらきっとまずいよね?
ぼくらはランチを受け取って、それから予約した席に着いた。
パンにスープにサラダにお肉。美味しそうだ。
特にこのサラダ、てんこ盛りだな。いろんなハーブが入ってるぞ。あっ、レオガノ。これって神経を落ち着ける力を持ってるんだよな。効果を高めて、もっといい品種が出来ないかって今一生懸命ぼくも頑張ってる奴なんだけど。
ゴソゴソとフォークでサラダを確認することに熱中しているぼくを、ルークは可笑しそうに見ている。
「あ、すみませんルーク様」
穴があったら入りたいとはこのことだ。きっと呆れていたよね?
「いいよ、君が一生懸命ハーブや薬草の研究をしているってこと分かっているから」
ルークはそう言った後真面目な顔つきになった。
「で? さっき言いかけたことって何?」
「あっ、は、はい」
ゴクッと唾を飲み込む。
ルークにもぼくの緊張が伝わったのか真面目な顔つきはそのままだ。
「サラ……さっきルーク様がサラ嬢と一緒にいるところを見たんですけど。その、彼女とは?」
「えっ?」
ルークの顔が訝しいものに変わった。戸惑っているようにも見える。
「えっと……その、彼女かわいい人だから、どういう知り合いなのかなと思って」
「…………」
ええっ? 返事がないぞ。
まずかったのかな? ダメだったかな? こんなこと聞いたりすると面倒くさいと思われて、やっぱりサラの方に気持ちがいったりするのかな?
「もしかして、ノエルもやきもち焼いてくれたの?」
「えっ?」
あっけにとられていたルークの顔が、だんだんと甘く綻んでいっている。これは不快感というより、どう見ても喜んでいる表情だ。
ううう、それはそれで恥ずかしい。
「彼女と会うのは2度目だよ。 1度目はお茶会の時だ」
「そう……なんですか」
「僕は最初からノエルしか見てないし、今だってそうだよ」
「…………」
今度はぼくが黙ってしまう番だった。今のルークは知らないけれど、このあとぼくが知らないうちにルークはサラを好きになっていくんだ。
戸惑っているぼくを、ルークがジッと見ている。
「……こんなこと言うべきではないと思うから言わずにいようと思っていたんだけど、彼女なんだか少し怖いというか、違和感があるんだ」
「えっ?」
思いもかけないルークの言葉に、ぼくはフォークを落としそうになって焦った。
(落とさなかったけど)
「どう表現していいかわからないんだ。体が拒絶反応を起こすというか、それなのに気を抜くと意識が別の方に持って行かされそうになるというか……。ごめん、意味分かんないよね」
「あっ、いえ……」
心臓が壊れるんじゃないかというくらいにドキドキとうるさい。
これはどういうことなんだろう? ルークが心変わりしたのはサラが何かを仕掛けたからなのか? ぼくやルークの知らないところで何かが起こっていて、ぼくらは操られていた?
ぼくの顔色が随分と悪くなっていたのかもしれない。ルークが心配そうにぼくを見つめている。
「ねえ、ノエル。よかったら今日僕のうちに寄っていかない?」
「えっ?」
「シェフが焼き菓子作りに凝りだしてね。とても美味しいんだ。ノエルにも食べてほしいから今日おいでよ。――それとも何か用事ある?」
「特にないです」
「そう、じゃあ決まりだ、いいね?」
「はい」
心臓はまだドキドキとうるさいけれど、ぼくは気を取り直して食事を続けた。
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