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ノエルの知らないところで

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「お母様とうとうやりましたわ! 今回もまたノエル様は婚約破棄をされました」

 ハイスランド学園の卒業パーティーを終えて帰ってきたサラが、うれしそうにわたくしに報告した。

「よかったわ、よくここまで我慢してくれたわね。 5回のループが終わったから、これからはあなたとルーク様との幸せな人生が待っているのよ。邪魔者は今度で巻き戻ることなく本当に死んでくれるから」
「はい、お母様」

 その直後、すごい勢いでぐんっと後ろから引っ張られる、いつもの巻き戻りの感覚に襲われた。
 何これ、どういうことよ? もうここからは、サラとルーク様との幸せな人生が始まるのだから、もう巻き戻らなくてもいいのよ!


 目が覚めて困惑した。
 巻き戻った先では、クラーク公爵家のお茶会すらすんでいなかったのだ。

 今回で本当にわたくしの復讐は終わりのはずだったのに……。

 
 かつてわたくしは、モンゴメリー侯爵家のナイジェル様に恋をしていた。だからお父様にお願いしてナイジェル様との縁談を取り持ってもらおうと思っていたのに、ナイジェル様にはすでに心に決めた方がおられるということで断られてしまった。
 その相手というのがノエルの母親で、当時ロイド伯爵家の次女、エマだった。

 だが、そのエマは次女で甘やかされて育ったせいなのか、あんな素敵なナイジェル様から婚約を申し出られているというのに躊躇しているようだった。
 腹立たしかった。ナイジェル様もあんな女、さっさと見限ればよかったのに……。
 でも結局、ナイジェル様とエマとの婚約は整い、2人は一緒になった。わたくしの婚約もその後に整った。

 そのうちわたくしの恨みも鎮まってきたというのに。
 あろうことか、今度はわたくしの大事な娘サラが慕うルーク様と、エマの息子のノエルが婚約をしてしまった。なんなのあの母子は! わたくしをどれだけ傷つければ気が済むの!

 だから決めたのよ、復讐しようと。ルーク様と婚約破棄をさせて5回のループで徹底的に絶望を味わわせてやりたかった。娘のサラのことを思えば、ルーク様を暗黒魔術使いのローワンの魅了魔法でサラのとりこにさせた後、ループなんてさせずにすぐにノエルを殺せばよかったのだろうけど、それではわたくしの腹の虫がおさまらなかったのよ。
 
 最後の5回目のループの後は、そのままサラとルーク様に幸せな結婚生活を送ってほしかった。それなのに、どうしてまた巻き戻ってるの? しかも今度はだいぶ前に。おまけに今度はまだ2人は婚約もしてないようだ。

 ローワンの魔術が途中で破綻したのか、なんでこんな番狂わせが起こったのかわからない。
 だけど……。

「サラ、よくお聞きなさい。ルーク様はまだ誰とも婚約されていない。だからまだ諦めてはいけないわ。きっとハイスランド学園に行ってからが勝負よ。あなたも身を引き締めて頑張りなさい」

「分かりましたわお母様。私もルーク様に愛してもらうよう頑張ります」

 サラはキュッと唇を噛んだ。
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