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もう次の婚活?

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 どういうことなのだろう。
 だいたいはやっぱり同じようにことが進んでいるみたいなんだけど、ぼくが前回と違う動きをしているせいなのか記憶と少しずれていることがあるみたいだ。
 それはルークが婚約相手の選定を先延ばしにしたことだけではなく、ぼくに関わる些細なことでもそうだった。
 

「明日ハロルドが王宮近衛騎士団の特別稽古に参加するんだが、お前も行ってきなさい」
「えっ? ぼくが?」

 なんで?と目をぱちくりとさせた。前回そんな話はなかったはずだ。
 それにその特別稽古って本当に特別で、未来の騎士団に入れそうな将来性のある伯爵家以上の令息が受けさせてもらえるところのはずだ。とてもじゃないけどぼくみたいなひ弱な令息が行く所なんかじゃない。あからさまに断られはしないだろうけど、たぶんかなり困惑される。

「驚くのも無理はないが、まあ行ってきなさい。剣術を習っていて損はない。いずれ通うハイスランド学園でも剣術の授業はあったはずだから」
「それは、そうですけど」

 それでもやはり解せなかった。
 同性婚が当たり前な世の中ということもあるのかもしれないけど、男性だから女性だからといった形で進路や就職が決まったりはしない。それぞれの個性に合わせて女性でも剣術の世界に入りたければ入ることもできるし、男性でもそれが苦手なら別のたくさんの道から選ぶことができる。
 だから僕のように華奢で、ひ弱で、剣術がそれほどしたいと思わないようなやつが、そんな特別な稽古に呼ばれるなんて考えにくかった。

 渋るぼくを見て、ハロルドお兄様も口を出した。

「そんな顔してないで一緒に行こうよ。もしかしたら楽しいと思えるかもしれないだろ? それに優しい騎士様が丁寧に教えてくれるよ。アーネストも来るしさ」

「アーネストに会えるのは確かに嬉しいけど……。彼はもともと騎士団希望ですよね? ぼくみたいなひ弱じゃないですもん」

「ひ弱というよりは適正だろ? ノエルは水魔法と土魔法が使えて薬草や癒しの花を育てることが得意じゃないか。それもしっかり社会の役に立つ。それに――」

「それに?」

「そういうノエルには魔法だけでなく、剣術にも長けたたくましい相手がお似合いだろうなあって思うんだよね。いい出会いがあると思わないかい?」

「えーっ、神聖な稽古場をそんな場に使っていいんですか?」
「公然の秘密だよ」
「ええっ?」

「あんまり許されたことではないってことは確かなんだろうけど、それでも将来有望な騎士を育てるきっかけになれば良いって、大目に見ているフシはあるよね。何がどう転ぶかわからないから、少しぐらいのことには目をつぶろうってことなんじゃないの? そうですよね、父上?」

「まあ、そういうことだ」

 ってことは何? こないだの茶会でぼくが候補に上がらなかったことを落胆してるって父上は思ったってこと? それで配慮を申し出たの? 
 親バカすぎる。

 うーんとうなっていると、お兄様が横から覗き込んできて行こうよ、行こうよとニコニコと誘う。

「……分かりました。明日はぼくもできるだけ、剣術が身につくように頑張ってきます」
「ああ。そうしなさい」

 父上は満足そうにうなずいた。
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