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変な罰ゲーム

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結局その時間は、羽瀬川がほぼ知崎らの相手をして、俺は自分の勉強をしつつ補佐的に教えるような形になっていた。

「あ~、そうかあ。やっと分かったよ。ありがとう羽瀬川」
「どーいたしまして」
「な? 羽瀬川の教え方って丁寧だろ?」
「んー。だけど、教えてもらって楽しいのは青葉だよなー?」
「なあ」

知崎と江中が顔を見合わせてニヤッとする。

「ええ? なにそれ」
「だーってさ、青葉美人だから、傍に居るだけで気分いいし」
「おい、おい」

羽瀬川が2人の前に立ちはだかり、ふざけた感じで頭にグリグリと拳を押し当てた。

「いてて、痛いよ羽瀬川!」
「青葉に変なちょっかい出したらだめだぞー。売約済みなんだからな」
「ちょっ……、羽瀬川!」

売約済みってなんだよ!
それってまるで、俺が和基のモノみたいじゃないか!

……いかん。
変な事考えたら顔が熱くなってきた。

火照った顔を冷やそうとノートを押し当ててみる。

「何やってんだ、青葉」
「……! べ、別に?」

キョトンとした顔で知崎に聞かれて、慌ててノートを顔から離して、今度はパタパタと扇いでみた。

「さ、お前ら行った、行った」
「なんだよ~、俺ら邪魔者扱いか―?」
「青葉と話があるんだよ、ホラ」
「わぁったよ。じゃ、ありがとな」
「おう」

羽瀬川に追い立てられて知崎らが自分の席に戻ったのを見届けて、羽瀬川がくるんとこちらを向いた。

「昨日の話な、あれ、段取り付けておいたからな」
「え?」
「和基のお灸の話」
「……段取りって、何」

ちょっぴり警戒心を込めて聞くと、羽瀬川がニヤリと笑った。

「知ってる? 演劇部部長の八神。あいつにお前に絡むよう頼んでおいた」
「え? ちょっと、それどういう……?」

絡む?
絡むって何。俺が人とベタベタ引っ付くのが嫌いって知っているくせに!

「大丈夫だよ。あいつ舞台慣れしてることもあって、そんなに近くに寄らなくても近くに見せる技を持っているから」
「……それで?」
「うん。青葉と仲良さそーに振る舞ってくれって頼んでおいたんだ。そこに俺が上手く和基を誘導してやるから」

何の問題も無いぞ、というような余裕しゃくしゃくな感じがなんだか胡散臭い。羽瀬川に限って下手を打つとは考えにくいが。
それはそうと、

「……お前、なんて言って頼んだんだ? そんなこと」

「うん? 青葉とシノ絡みで喧嘩したから、罰ゲームで許すことにしたって言っておいた。青葉の了承も得てるから、和基に誤解させて怒らせてやってくれってさ」

「……それを、八神は普通に受け入れたのか?」

「ああ。青葉と話したことないから楽しみだって言ってたぞ。まあ、でもあいつが受けたのはそれだけじゃなくて、今度の文化祭に俺ら通行人AとBで出演するってことでOKになった」

「え!? おい!」
「大丈夫、大丈夫。稽古も何にもいらないから。ただ、本番に一回だけステージの上を横断するだけでいいからさ」
「……。お前なぁ……」
「いいじゃん、いいじゃん。たまには人寄せパンダになったってさ。まあ、これもきっと和基が聞いたら歯噛みして悔しがるぞ?」

「……それは夕月も一緒だろ」
「いーや。あいつ、ちょっと変わってるからな」
「変わってる?」
「そ。俺と青葉が並ぶと美男美女度が際立って、目の保養になるんだってさ」
「でも、お前がみんなに騒がれるの、嫌だと思わないのか?」

「んん? ……そりゃ、少しはムッとはするかもしれないけど、大したことは無いだろ。だって俺、シノ以外の奴に気を持たせるようなことはしないから」

「…………」

なんとなーく、含みがあるよな、今の発言。

分かったよ、分かりましたよ。
羽瀬川が、いろんな意味で和基を恋人としてはダメな奴だと思っているという事が。

「……分かった。任せるよ。通行人Bも引き受けるさ」
「Aじゃないのか?」
「それは羽瀬川に譲る」

ため息交じりに答えると、羽瀬川は楽しそうに笑った。
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