5 / 18
急に冷静になるわんこ
しおりを挟む
ゆっくりと、優しく和基の唇が俺の唇を覆う。
ふわりと乗っかったそれはすぐに離れて、今度は何度も何度も可愛い小鳥のように俺の唇を啄んだ。
……そんな可愛いキスじゃなくて。
もどかしい思いで和基の腕をキュッと掴むと、和基は少し体を離した。
そして俺の両頬を掌で挟んで、しっかりと俺に目を合わせる。
「ごめん、青葉さん。……うれしいお強請りだったけど、おかげでちょっと冷静になりました」
「…………」
なんだよ、冷静って。俺の方は、ちょっと不満だ。
「飯、食べに行かないと」
「飯……? だからって、……あっ! 羽瀬川!」
飯の一言で急に現実に引き戻された。
そうだよ!
あいつ、どうした?
同じ部屋だから、荷物を置きに来るはずなのに!
「あ、それは大丈夫です。羽瀬川さんとは協定結んでいますから」
「……協定?」
「はい。もしもこの部屋に鍵がかかっている時は、青葉さんといい事している最中なのでそっとしておいて下さいってことで」
「……は、はあっ!?」
ちょっと、こいつ!
なんてこっぱずかしい約束を羽瀬川としてるんだよ?
「ああ~、可愛いなあ。青葉さん!」
「ちょっと、お前……!」
俺は怒ってるんだぞと言いたいのに、和基の奴、何を勘違いしたのか嬉しそうに俺を引き寄せ抱きしめた。
ギュウギュウと凄い力で抱きしめられて、俺は潰れてしまいそうだ。モゴモゴ暴れる俺に、ようやく和基は腕を緩めて解放した。
「青葉さん!」
「な、なんだ?」
どうした、急に。
さっきまであんなにふにゃけた顔をしていたのに、和基は急に真面目な凛々しい顔つきになっている。
「お願いですから、その可愛い表情。俺以外の野郎の前で見せちゃダメですよ! 喰われちゃいますからね!」
「へ……、変な心配するな! 俺なんかよりお前の方が……っ」
つい勢いで、普段から溜まっている和基の誰彼構わないスキンシップの多さへの不満を言いそうになった。
「え? 俺?」
案の定、和基は何のことだか分からないと言った顔をする。
鈍感すぎるし、我儘だぞお前は!
「……いい。学食、行くぞ」
「はい」
ドアを開けて廊下に出たが、羽瀬川はいなかった。
そのまま学食に向かったんだろうか?
だとしたら、悪いことをしたな。
「……混んでるな」
「ですねー」
のんびりしていたのが祟って、食堂内は満席に近い。
キョロキョロと辺りを見回して、空いている席を見つけた。
「和基、悪いが席取っておくから俺の分も持ってきてくれるか?」
「はい、いいですよ。日替わり定食でいいですか?」
「ああ、頼む」
「はい」
和基が列に並びに行ったので、俺は空いている席に向かった。
ふわりと乗っかったそれはすぐに離れて、今度は何度も何度も可愛い小鳥のように俺の唇を啄んだ。
……そんな可愛いキスじゃなくて。
もどかしい思いで和基の腕をキュッと掴むと、和基は少し体を離した。
そして俺の両頬を掌で挟んで、しっかりと俺に目を合わせる。
「ごめん、青葉さん。……うれしいお強請りだったけど、おかげでちょっと冷静になりました」
「…………」
なんだよ、冷静って。俺の方は、ちょっと不満だ。
「飯、食べに行かないと」
「飯……? だからって、……あっ! 羽瀬川!」
飯の一言で急に現実に引き戻された。
そうだよ!
あいつ、どうした?
同じ部屋だから、荷物を置きに来るはずなのに!
「あ、それは大丈夫です。羽瀬川さんとは協定結んでいますから」
「……協定?」
「はい。もしもこの部屋に鍵がかかっている時は、青葉さんといい事している最中なのでそっとしておいて下さいってことで」
「……は、はあっ!?」
ちょっと、こいつ!
なんてこっぱずかしい約束を羽瀬川としてるんだよ?
「ああ~、可愛いなあ。青葉さん!」
「ちょっと、お前……!」
俺は怒ってるんだぞと言いたいのに、和基の奴、何を勘違いしたのか嬉しそうに俺を引き寄せ抱きしめた。
ギュウギュウと凄い力で抱きしめられて、俺は潰れてしまいそうだ。モゴモゴ暴れる俺に、ようやく和基は腕を緩めて解放した。
「青葉さん!」
「な、なんだ?」
どうした、急に。
さっきまであんなにふにゃけた顔をしていたのに、和基は急に真面目な凛々しい顔つきになっている。
「お願いですから、その可愛い表情。俺以外の野郎の前で見せちゃダメですよ! 喰われちゃいますからね!」
「へ……、変な心配するな! 俺なんかよりお前の方が……っ」
つい勢いで、普段から溜まっている和基の誰彼構わないスキンシップの多さへの不満を言いそうになった。
「え? 俺?」
案の定、和基は何のことだか分からないと言った顔をする。
鈍感すぎるし、我儘だぞお前は!
「……いい。学食、行くぞ」
「はい」
ドアを開けて廊下に出たが、羽瀬川はいなかった。
そのまま学食に向かったんだろうか?
だとしたら、悪いことをしたな。
「……混んでるな」
「ですねー」
のんびりしていたのが祟って、食堂内は満席に近い。
キョロキョロと辺りを見回して、空いている席を見つけた。
「和基、悪いが席取っておくから俺の分も持ってきてくれるか?」
「はい、いいですよ。日替わり定食でいいですか?」
「ああ、頼む」
「はい」
和基が列に並びに行ったので、俺は空いている席に向かった。
18
お気に入りに追加
239
あなたにおすすめの小説
視線の先
茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。
「セーラー服着た写真撮らせて?」
……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
君と秘密の部屋
325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。
「いつから知っていたの?」
今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。
対して僕はただのモブ。
この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。
それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。
筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子
王子様と魔法は取り扱いが難しい
南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。
特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。
※濃縮版
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる