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第五章
礼人さんの試合が始まった!
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キックオフをし、ゲームが始まった。
紺色のTシャツを着た黒田先輩が素早く出てきて相手チームからボールを奪う。
白いシャツと紺のシャツに分かれているので、どちらが味方でどちらが敵なのかが瞬時に分かって見てるこちらとしては有難い。
黒田先輩がボールを奪ったところで、あちらこちらから「キャアアー―――ッ」と歓喜に溢れた悲鳴が沸き起こった。
「凄いね……」
「ホントにねー。……ああいうモテ過ぎる人を彼氏にしたら気分はいいかもしれないけど、大変だろうなぁ」
「…………」
ポロリと、思わず零れた本音だったんだろう。加山さんは突如ハッとした表情に打って変わって、「たとえ話だからね!」とパタパタと手を振った。
「うん」
分かってるよ。という気持ちで、軽く加山さんに頷いておく。
ピッチ上では、黒田先輩を思うようにさせまいと3人が付いていた。
「1対1じゃ無くて1対3なんだ。凄いな……」
「うん。でも、黒田先輩もすごいよ。ボール奪われてないもん」
加山さんが感心する通り、黒田先輩は3人の隙をつくようにひょいっとその場から抜け出してサッと辺りを確認した。視線の先には礼人さんがいたのだけど、これまたそれを事前に察していた相手チームに、2人掛かりで邪魔をされていた。
黒田先輩は礼人さんにパスを回すのを諦めて、他の人にパスを渡す。
渡された相手は、ドリブルをしながらゴールに向かおうとするのだけど、相手チームに奪われてしまった。
「ああ~っ!!」
あちらこちらから聞こえる残念そうな声。
これ……。
こんな状況での試合って、どっちもやりにくいんじゃないかな。
それとも試合に集中してるから、そんなことに気が付く余裕はないんだろうか?
変な心配をしている間に、ボールを奪った相手チームの人に黒田先輩が追い付いてディフェンスを仕掛けていた。
それで零れたボールを傍にいた別の紺のTシャツを着ている人が上手く引き継いで走り出す。
結構この人もうまくて、相手のディフェンダーをうまくかわしてシュートを放った。
……!!
入ったー!
「ヤッター!」
パチンと加山さんと手を叩いて喜び合う。
……?
「あれ? ゴールしたのにあんまり騒がないんだね」
さっきから黒田先輩がボールを保持している間中、あんなにキャーキャー言ってたのに。
「……目当ては別なんでしょ。興味のない人が活躍してもどうってことないんだよ」
「…………」
……あからさま過ぎるよ。
そんなんだから、礼人さんがやっかまれるんだ。迷惑。
僕が心の中でぶつぶつ文句を言っている間に、キーパーが思いっきり遠くへとボールを投げた。
運のいいことに傍にいた礼人さんが、ボールを体に当てて上手く勢いを削いでまたゴールに向かって走り出した。
「キャアアアア―――!! 行け―礼人ぉーーーっ」
「礼人―――!カッコイイ―!!」
どっかのアイドルのコンサートさながらのすごい悲鳴の渦だ。
「ああ、もう。うっせー」
「これだから、ヤなんだよ。紫藤らが出てる試合を見るのは」
「仕方ないだろ。須賀が出てる試合なんだから応援してやらないと」
「わぁってるよ」
そうか。礼人さんは嫌いだけど友達が出てるから見てるんだな。
もしかして、相手チームのクラスの人なんだろうか?
「鹿倉君! 鹿倉君!」
突然隣の加山さんが僕の手をペチペチ叩いた。視線を戻すと、礼人さんと黒田先輩がパスをしあいながらゴール近くに確実に近づいてく。
礼人さんより少し前に出た黒田先輩に、礼人さんが相手チームをうまくかわして黒田先輩にパスを出した。
それを黒田先輩が、上手い角度からゴールを狙い――
ボールはキーパーの脇を抜けて、ゴールネットを揺らした。
紺色のTシャツを着た黒田先輩が素早く出てきて相手チームからボールを奪う。
白いシャツと紺のシャツに分かれているので、どちらが味方でどちらが敵なのかが瞬時に分かって見てるこちらとしては有難い。
黒田先輩がボールを奪ったところで、あちらこちらから「キャアアー―――ッ」と歓喜に溢れた悲鳴が沸き起こった。
「凄いね……」
「ホントにねー。……ああいうモテ過ぎる人を彼氏にしたら気分はいいかもしれないけど、大変だろうなぁ」
「…………」
ポロリと、思わず零れた本音だったんだろう。加山さんは突如ハッとした表情に打って変わって、「たとえ話だからね!」とパタパタと手を振った。
「うん」
分かってるよ。という気持ちで、軽く加山さんに頷いておく。
ピッチ上では、黒田先輩を思うようにさせまいと3人が付いていた。
「1対1じゃ無くて1対3なんだ。凄いな……」
「うん。でも、黒田先輩もすごいよ。ボール奪われてないもん」
加山さんが感心する通り、黒田先輩は3人の隙をつくようにひょいっとその場から抜け出してサッと辺りを確認した。視線の先には礼人さんがいたのだけど、これまたそれを事前に察していた相手チームに、2人掛かりで邪魔をされていた。
黒田先輩は礼人さんにパスを回すのを諦めて、他の人にパスを渡す。
渡された相手は、ドリブルをしながらゴールに向かおうとするのだけど、相手チームに奪われてしまった。
「ああ~っ!!」
あちらこちらから聞こえる残念そうな声。
これ……。
こんな状況での試合って、どっちもやりにくいんじゃないかな。
それとも試合に集中してるから、そんなことに気が付く余裕はないんだろうか?
変な心配をしている間に、ボールを奪った相手チームの人に黒田先輩が追い付いてディフェンスを仕掛けていた。
それで零れたボールを傍にいた別の紺のTシャツを着ている人が上手く引き継いで走り出す。
結構この人もうまくて、相手のディフェンダーをうまくかわしてシュートを放った。
……!!
入ったー!
「ヤッター!」
パチンと加山さんと手を叩いて喜び合う。
……?
「あれ? ゴールしたのにあんまり騒がないんだね」
さっきから黒田先輩がボールを保持している間中、あんなにキャーキャー言ってたのに。
「……目当ては別なんでしょ。興味のない人が活躍してもどうってことないんだよ」
「…………」
……あからさま過ぎるよ。
そんなんだから、礼人さんがやっかまれるんだ。迷惑。
僕が心の中でぶつぶつ文句を言っている間に、キーパーが思いっきり遠くへとボールを投げた。
運のいいことに傍にいた礼人さんが、ボールを体に当てて上手く勢いを削いでまたゴールに向かって走り出した。
「キャアアアア―――!! 行け―礼人ぉーーーっ」
「礼人―――!カッコイイ―!!」
どっかのアイドルのコンサートさながらのすごい悲鳴の渦だ。
「ああ、もう。うっせー」
「これだから、ヤなんだよ。紫藤らが出てる試合を見るのは」
「仕方ないだろ。須賀が出てる試合なんだから応援してやらないと」
「わぁってるよ」
そうか。礼人さんは嫌いだけど友達が出てるから見てるんだな。
もしかして、相手チームのクラスの人なんだろうか?
「鹿倉君! 鹿倉君!」
突然隣の加山さんが僕の手をペチペチ叩いた。視線を戻すと、礼人さんと黒田先輩がパスをしあいながらゴール近くに確実に近づいてく。
礼人さんより少し前に出た黒田先輩に、礼人さんが相手チームをうまくかわして黒田先輩にパスを出した。
それを黒田先輩が、上手い角度からゴールを狙い――
ボールはキーパーの脇を抜けて、ゴールネットを揺らした。
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