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第五章
もっと一緒にいたい
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「おー、ヤッター」
シュートが決まってすぐ、礼人さんが僕の傍に寄ってきてスッと片手を上げた。
あ、ハイタッチ!
憧れてたんだ、これ。
グラウンドで黒田先輩とハイタッチしているところを見た時から。
僕はドキドキしながら右手を上げて、パシンと礼人さんと掌を合わせた。
「綺麗なシュートだったな―。歩はもうちょっと自分に自信持つといいかもな」
「はい」
「いいフォームだったよな。名残惜しいけどもうそろそろ引き上げるか。少し暗くなってきたし」
「そうだな……。もう陽も落ちかけてるか。クロたちはこれからどうするんだ?」
「ん? 明日は学校だからな、そのまま家に帰るよ。紫藤らも帰るんだろ?」
「……ああ、その方が良いかもな。歩、送ってくよ」
「……はい」
先輩達とバスケをしたのは楽しかったけど、礼人さんとのハイタッチも嬉しかったけど……。
礼人さんのお家、やっぱり行ってみたかったかな……。
名残惜しい気持ちでいっぱいだったけど、ここでわがままを言うわけにはいかないから、僕もおとなしく白石先輩たちに挨拶をして礼人さんの後に続いた。
「なあ、歩―?」
「はい」
「アイスクリームでも食べてくか?」
「え?」
もしかしたら僕がすぐに帰りたくないって思ってる気持ちに気が付いたんだろうか?
ニッと笑って、『行くよな?』といった表情で僕を見ている。
「はい、行きます!」
「よーし、じゃあついてこい。ちょっと遠回りするぞ」
「はいっ」
礼人さんはさっき通った道とは別の方へと進んでいき、ちょっとした商店街へと入って行った。
その一角に、見慣れた某大手チェーンのアイスクリームショップが見えて来た。
店内は日曜だけあって、結構な人だ。
僕らが入ると、振り返った客がびっくりしたように礼人さんの顔を二度見していく。
そして女の子たちは嬉しそうに頬を赤くして、コソコソと内緒話をした後キャーキャーとはしゃいでいた。
気持ちはわかるんだけどね……。
礼人さん騒がれるのってあんまり好きじゃないんだよね。
嫌な気持ちになってなきゃいいけど……。
「どうした、歩?」
「あ、いえっ、何でもないです。えっと……、礼人さんはどれにします?」
「うん? 俺か? 俺はシンプルにチョコとか好きなんだよな。あと、クッキークリームとか……、でもなあ。ダブルにするにしても似た感じだから一つは柑橘系も欲しいよな……」
「クッキークリーム! 僕も好きです。……んー、決めました! 僕、クッキークリームにラズベリーチーズにします」
「じゃあ俺はチョコにバニラレモンにするわ」
2人でダブルのコーンを注文して、そのままお店を出た。
その時礼人さんの後ろ姿を、お店にいるほとんどの女の人たちが目で追っていた。
どこにいても目立つ人。
きっとひいき目なんかじゃなく、トップアイドルと言われる人達よりもずっとずっと綺麗でかっこよくて凄いオーラを放っている人だ。
そんなすごい人とこうやって当たり前のように一緒にいられることが嬉しいと同時に、やっぱり今でもすごく不思議に思えてならない。
礼人さんはアイスを食べながら元来た道を戻って行く。
そして公園の入り口傍にあるベンチに座った。
「これ、食べたら送ってくな」
「……はい」
贅沢な時間をもらえてるってことは分かってるんだ。
元々約束していたとはいえ、僕の都合でそれは反故にされているはずだった。それなのに礼人さんがひょっこり現れてくれたおかげて、こうやって少ない時間とはいえ2人っきりの時間を与えてもらっている。
だけど……。
礼人さんの特別な存在になれてるかもって思えるようになってから、僕の中で、『もっと、もっと』って思いが膨らんでしまっていた。
「……参ったなぁ」
礼人さんが空いている手で僕の肩を引き寄せた。
トン、と礼人さんの腕の中に引き寄せられて心臓がトクンと大きく響いた。
……み、密着!
密着しているよ、僕……!
どっ、どうしよう……!!
アイスをほぼ食べ終わり、コーンがあと少しになっているので溶けて零れてくる心配はもうないんだけど、もちろんそんなことが問題なんじゃない!
礼人さんの温かい腕の中が嬉しくて恥ずかしくて、僕の顔に熱が集まって顔が熱い!!
「そんな顔されてると、帰したくなくなるんだけど」
「……礼人さん」
困ったように優しく微笑まれて、僕の心臓がどんどん激しい音を放った。
「……鹿倉君?」
……え?
不思議そうに窺う小さな声が斜め背後から聞こえて来た。
びっくりして振り向くと、僕らをおずおずと窺う加山さんがいた。
シュートが決まってすぐ、礼人さんが僕の傍に寄ってきてスッと片手を上げた。
あ、ハイタッチ!
憧れてたんだ、これ。
グラウンドで黒田先輩とハイタッチしているところを見た時から。
僕はドキドキしながら右手を上げて、パシンと礼人さんと掌を合わせた。
「綺麗なシュートだったな―。歩はもうちょっと自分に自信持つといいかもな」
「はい」
「いいフォームだったよな。名残惜しいけどもうそろそろ引き上げるか。少し暗くなってきたし」
「そうだな……。もう陽も落ちかけてるか。クロたちはこれからどうするんだ?」
「ん? 明日は学校だからな、そのまま家に帰るよ。紫藤らも帰るんだろ?」
「……ああ、その方が良いかもな。歩、送ってくよ」
「……はい」
先輩達とバスケをしたのは楽しかったけど、礼人さんとのハイタッチも嬉しかったけど……。
礼人さんのお家、やっぱり行ってみたかったかな……。
名残惜しい気持ちでいっぱいだったけど、ここでわがままを言うわけにはいかないから、僕もおとなしく白石先輩たちに挨拶をして礼人さんの後に続いた。
「なあ、歩―?」
「はい」
「アイスクリームでも食べてくか?」
「え?」
もしかしたら僕がすぐに帰りたくないって思ってる気持ちに気が付いたんだろうか?
ニッと笑って、『行くよな?』といった表情で僕を見ている。
「はい、行きます!」
「よーし、じゃあついてこい。ちょっと遠回りするぞ」
「はいっ」
礼人さんはさっき通った道とは別の方へと進んでいき、ちょっとした商店街へと入って行った。
その一角に、見慣れた某大手チェーンのアイスクリームショップが見えて来た。
店内は日曜だけあって、結構な人だ。
僕らが入ると、振り返った客がびっくりしたように礼人さんの顔を二度見していく。
そして女の子たちは嬉しそうに頬を赤くして、コソコソと内緒話をした後キャーキャーとはしゃいでいた。
気持ちはわかるんだけどね……。
礼人さん騒がれるのってあんまり好きじゃないんだよね。
嫌な気持ちになってなきゃいいけど……。
「どうした、歩?」
「あ、いえっ、何でもないです。えっと……、礼人さんはどれにします?」
「うん? 俺か? 俺はシンプルにチョコとか好きなんだよな。あと、クッキークリームとか……、でもなあ。ダブルにするにしても似た感じだから一つは柑橘系も欲しいよな……」
「クッキークリーム! 僕も好きです。……んー、決めました! 僕、クッキークリームにラズベリーチーズにします」
「じゃあ俺はチョコにバニラレモンにするわ」
2人でダブルのコーンを注文して、そのままお店を出た。
その時礼人さんの後ろ姿を、お店にいるほとんどの女の人たちが目で追っていた。
どこにいても目立つ人。
きっとひいき目なんかじゃなく、トップアイドルと言われる人達よりもずっとずっと綺麗でかっこよくて凄いオーラを放っている人だ。
そんなすごい人とこうやって当たり前のように一緒にいられることが嬉しいと同時に、やっぱり今でもすごく不思議に思えてならない。
礼人さんはアイスを食べながら元来た道を戻って行く。
そして公園の入り口傍にあるベンチに座った。
「これ、食べたら送ってくな」
「……はい」
贅沢な時間をもらえてるってことは分かってるんだ。
元々約束していたとはいえ、僕の都合でそれは反故にされているはずだった。それなのに礼人さんがひょっこり現れてくれたおかげて、こうやって少ない時間とはいえ2人っきりの時間を与えてもらっている。
だけど……。
礼人さんの特別な存在になれてるかもって思えるようになってから、僕の中で、『もっと、もっと』って思いが膨らんでしまっていた。
「……参ったなぁ」
礼人さんが空いている手で僕の肩を引き寄せた。
トン、と礼人さんの腕の中に引き寄せられて心臓がトクンと大きく響いた。
……み、密着!
密着しているよ、僕……!
どっ、どうしよう……!!
アイスをほぼ食べ終わり、コーンがあと少しになっているので溶けて零れてくる心配はもうないんだけど、もちろんそんなことが問題なんじゃない!
礼人さんの温かい腕の中が嬉しくて恥ずかしくて、僕の顔に熱が集まって顔が熱い!!
「そんな顔されてると、帰したくなくなるんだけど」
「……礼人さん」
困ったように優しく微笑まれて、僕の心臓がどんどん激しい音を放った。
「……鹿倉君?」
……え?
不思議そうに窺う小さな声が斜め背後から聞こえて来た。
びっくりして振り向くと、僕らをおずおずと窺う加山さんがいた。
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