31 / 158
第三章
お膝抱っこ
しおりを挟む
「紫藤先生ー。いらっしゃいますかー?」
物理準備室のドアをドンドンと叩く渚さん。だけど中からは、何の返事も無かった。
「あれー? 南くん、紫藤先生居ないみたいだなあ。どうしよっか、せっかくだからお家まで……」
と、途端に中からガタガタと椅子を引くような音がしたと思ったら、先生が勢い良くバタンとドアを開けた。
「なんだよ、居るなら居るってちゃんと返事しろよな」
そう言いながら、ニヤニヤする渚さんを先生が忌々しそうに見ている。
「……入れよ」
低い声で促されてちょっとビビるけど、ニコニコ笑う渚さんと一緒に準備室に入った。
ドカッと荒々しく椅子に腰かけ、長い足を横柄に組む紫藤先生。
その横の空いている席に渚さんが座った。
どうしよう。俺、どこに座ろうかな?
キョロキョロ辺りを見回すけど、椅子の代わりになりそうな物はどうやら無い。
「南、カギ閉めてこっちに来い」
「はい」
言われた通りカギを閉めて、先生のもとに走り寄る。すると、先生に腕を引かれて気が付いたら先生の膝の上にお座り状態になっていた。
「えっ、えっ?」
慌てる俺に、先生は素知らぬ顔で腕を前に回してきた。そしてよいしょと俺を引き寄せるように座りなおす。おかげで俺の背中に先生の体温が……!
「ぶはっ…!」
そんな俺たちを黙って見ていた渚さんが、耐えきれないといったように盛大に噴き出した。
「澪……、お前っ」
きっとまたツボに入ったんだろう、渚さんはヒーヒーと苦しそうに笑っている。
目の前で盛大に笑われて、凄く、凄く恥ずかしいんですけど、先生!
だけど紫藤先生はまるで動じる風もなく、俺を抱きしめる腕を緩めようともしない。紫藤先生は俺の背後にいるから、どんな顔をしているのかは分からないけど。
「お前のせいで椅子が足りないんだ。仕方がないだろう」
「ハ、アハハ……ッ。じ、じゃあお前……っ、ク、ククク……ッ、椅子が足りなきゃ、み……ッ、プククク……みんなにそうするのかよ……。~~~腹いてー…!」
「ンなわけあるか」
そう言って一呼吸置いた後、紫藤先生が俺の右耳に顔を近づけて来た。顔の右側がすげー熱い。
もちろん俺の心臓は、一気に激しく鳴り始めた。
「南だけに決まっている」
毒のように低く甘い先生の声。
吹き込まれるように囁かれて、俺の顔は瞬時に熱くなった。
物理準備室のドアをドンドンと叩く渚さん。だけど中からは、何の返事も無かった。
「あれー? 南くん、紫藤先生居ないみたいだなあ。どうしよっか、せっかくだからお家まで……」
と、途端に中からガタガタと椅子を引くような音がしたと思ったら、先生が勢い良くバタンとドアを開けた。
「なんだよ、居るなら居るってちゃんと返事しろよな」
そう言いながら、ニヤニヤする渚さんを先生が忌々しそうに見ている。
「……入れよ」
低い声で促されてちょっとビビるけど、ニコニコ笑う渚さんと一緒に準備室に入った。
ドカッと荒々しく椅子に腰かけ、長い足を横柄に組む紫藤先生。
その横の空いている席に渚さんが座った。
どうしよう。俺、どこに座ろうかな?
キョロキョロ辺りを見回すけど、椅子の代わりになりそうな物はどうやら無い。
「南、カギ閉めてこっちに来い」
「はい」
言われた通りカギを閉めて、先生のもとに走り寄る。すると、先生に腕を引かれて気が付いたら先生の膝の上にお座り状態になっていた。
「えっ、えっ?」
慌てる俺に、先生は素知らぬ顔で腕を前に回してきた。そしてよいしょと俺を引き寄せるように座りなおす。おかげで俺の背中に先生の体温が……!
「ぶはっ…!」
そんな俺たちを黙って見ていた渚さんが、耐えきれないといったように盛大に噴き出した。
「澪……、お前っ」
きっとまたツボに入ったんだろう、渚さんはヒーヒーと苦しそうに笑っている。
目の前で盛大に笑われて、凄く、凄く恥ずかしいんですけど、先生!
だけど紫藤先生はまるで動じる風もなく、俺を抱きしめる腕を緩めようともしない。紫藤先生は俺の背後にいるから、どんな顔をしているのかは分からないけど。
「お前のせいで椅子が足りないんだ。仕方がないだろう」
「ハ、アハハ……ッ。じ、じゃあお前……っ、ク、ククク……ッ、椅子が足りなきゃ、み……ッ、プククク……みんなにそうするのかよ……。~~~腹いてー…!」
「ンなわけあるか」
そう言って一呼吸置いた後、紫藤先生が俺の右耳に顔を近づけて来た。顔の右側がすげー熱い。
もちろん俺の心臓は、一気に激しく鳴り始めた。
「南だけに決まっている」
毒のように低く甘い先生の声。
吹き込まれるように囁かれて、俺の顔は瞬時に熱くなった。
0
お気に入りに追加
249
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
家の中で空気扱いされて、メンタルボロボロな男の子
こじらせた処女
BL
学歴主義の家庭で育った周音(あまね)は、両親の期待に応えられず、受験に失敗してしまう。試験そのものがトラウマになってしまった周音の成績は右肩下がりに落ちていき、いつしか両親は彼を居ないものとして扱う様になる。
そんな彼とは裏腹に、弟の亜季は優秀で、両親はますます周音への態度が冷たくなっていき、彼は家に居るのが辛くなり、毎週末、いとこの慶の家にご飯を食べに行く様になる。
慶の家に行くことがストレスの捌け口になっていた周音であるが、どんどん精神的に参ってしまい、夜尿をしてしまうほどに追い詰められてしまう。ストレス発散のために慶の財布からお金を盗むようになるが、それもバレてしまい…?
当たって砕けていたら彼氏ができました
ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。
学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。
教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。
諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。
寺田絋
自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子
×
三倉莉緒
クールイケメン男子と思われているただの陰キャ
そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。
お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。
お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる