上 下
80 / 98
第五章

竹本の隣を歩く女性

しおりを挟む
谷塚に場所を告げると別の連絡先を教えられた。やって来た社員に直に連絡をとるためだ。

俺はそのまま気付かれないように、彼らの後を追った。

相手の女性は明らかに竹本に気があるようで、時々盗み見るように彼を見上げ嬉しそうな顔をする。

どこに行くんだろう? まだ明るい時間だ。こんな時間からあの店に連れて行くとは考えにくいし……。
この先は……、ショッピングモールか?

どういうことだろう。こんな健全そうな場所にまで、あんな奴らが進出して来てるんだろうか?

とりあえず俺は行く先が決まったようなので、さっき教えてもらった連絡先にメッセージを送っておいた。

彼らは行く先々の店を冷やかしながら、どんどん先を歩いて行く。なんとなく竹本は、どの店に行くか事前に考えているような感じがした。
その予感通り、竹本の歩く速度が落ちて来て、可愛らしい感じの店で歩みを止めた。

ん? アクセサリーショップか。えーっと、ツインクル……?って読むのかな?
まあいいや、電話してみるか。

彼らから見えない位置に移動して、電話を掛けた。すると1コールもしないうちに女性が電話に出た。

「もう着いてます。どこに行けばいいですか?」
「二階奥のツインクルとか言うアクセサリーショップだ」
「了解しました。すぐ行きます」

テキパキとした返答に少し安堵して、俺はショップを窺った。傍から見た彼らは、初々しいカップルで幸せそうに見える。本当に許せない男だ。

「川口さんですよね。お待たせしました」
「いや、こちらこそ済まない」

声を掛けられ振り返ると、気の強そうな美人が立っていた。壊し屋というくらいだから、やっぱり綺麗な人が適役なんだろうか。

俺がそのショップに入ろうと歩き始めると咄嗟に彼女が止めた。

「待って下さい。あの彼女、見覚えがあります」
「え?」
「ちょっと待って下さいよ。確か……」

彼女は顎に手をやり眉間に皺を寄せてしばらく考え込んでいた。そしてハッと顔を上げる。

「自殺した子の親友です」
「え……。じゃあ彼女の目的は――」
「復讐か、真相を調べようとしているのか……そんなところでしょう」
「深入りさせたら危ないんじゃないのか?」
「そうですね、なんとかしましょう。ここで待っていて下さい」
「あ、ああ」

戸惑う俺を置いて、彼女は店の中に入って行った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

もう一度、貴方に出会えたなら。今度こそ、共に生きてもらえませんか。

天海みつき
BL
 何気なく母が買ってきた、安物のペットボトルの紅茶。何故か湧き上がる嫌悪感に疑問を持ちつつもグラスに注がれる琥珀色の液体を眺め、安っぽい香りに違和感を覚えて、それでも抑えきれない好奇心に負けて口に含んで人工的な甘みを感じた瞬間。大量に流れ込んできた、人ひとり分の短くも壮絶な人生の記憶に押しつぶされて意識を失うなんて、思いもしなかった――。  自作「貴方の事を心から愛していました。ありがとう。」のIFストーリー、もしも二人が生まれ変わったらという設定。平和になった世界で、戸惑う僕と、それでも僕を求める彼の出会いから手を取り合うまでの穏やかなお話。

尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話

天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。 レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。 ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。 リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

好きな人の婚約者を探しています

迷路を跳ぶ狐
BL
一族から捨てられた、常にネガティブな俺は、狼の王子に拾われた時から、王子に恋をしていた。絶対に叶うはずないし、手を出すつもりもない。完全に諦めていたのに……。口下手乱暴王子×超マイナス思考吸血鬼 *全12話+後日談1話

処理中です...