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第四章

情の深い一弥

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佐孝さんが帰った後、一岡家の所有する別荘の場所を調べてみた。一時間もすれば行けそうな距離ではある。
パソコンを前に腕組みをする俺を見て、一弥も隣にやってきた。

「例の天女像?」
「……ああ。俺がこのひろ美の立場だと考えたら、真人のいる自宅に持ち込む確率は低いと思うんだ」
「うん、そうだね。万が一見つかったりしたら、最悪だもんな」
「……だけどなー」
「何? 家探しするのは不法侵入だとか、気にしてるの?」

今更?って顔で、一弥が俺を覗き込む。

「いや。……気にならないと言えば嘘になるけど。そっちじゃなくて。……気性の荒そうな女だから、もしかしたらその天女像をぶっ壊してる可能性もあるんじゃないかと思ってさ」
「ああ、そっちか」

一弥がポフンと俺に抱き着いてきた。
びっくりしたが、基本甘えたなところのある一弥だ。腕を回して頭を撫でると、気持ちよさそうに俺の腕に頬をこすりつける。

……ったく、可愛いんだよな……、こいつ。

「……俺がこの女なら、やっぱり壊せないと思う」
「え? うわっ! おいっ」

グイーッと全体重を俺にかけて、一弥が俺をソファの上に押し倒し馬乗りになっている。
びっくりして目を瞬く俺に妖艶に笑った後、ゆっくりと唇を近づけてきた。
そして何度も何度も啄んで、舌を差し込んできた。

……本当にこいつには。

グイッと一弥を抱き寄せて体を反転させる。
一瞬驚いた顔で目をぱちくりとさせた後、一弥は色っぽく目を眇めて俺の唇を受け入れた。

自覚している。
俺がこいつに溺れていることは。

しつこく執拗に一弥の甘い唇をむさぼった後、ギュウッと力強く抱きしめた。
一弥の唇から安堵のため息がこぼれる。手は、俺の背中に回したままだ。

「……たぶん、大丈夫じゃないかな」
「――え?」

「天女像だよ。いくら悔しくても好きな人が作った作品なら、俺なら壊せない。見るのは辛いから他所に置いておくにしても、……やっぱり壊せないと思う」

「一弥……」

一見冷めたように見えなくもない言動もあるくせに、たまにこうやって情の深そうな一弥の一面を見ると、切ないような胸が締め付けられるような何とも言えない感情に陥る。

「大好きだからな」
「……え?」
「俺は一弥のことが大好きだから、お前が逃げ出さない限り絶対離したりなんかしないからな」
「建輔さん……」

震えるような声で俺の名を呼んだあと、一弥は背中に回した腕に力を込めた。

「……げないよ。逃げるわけないよ……。俺も好き。すごい好き……」

震えながらしがみつく一弥が可愛すぎて、俺も力いっぱい一弥を抱きしめた。
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