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第二章

揶揄われているだけだ…

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リビングに戻り一弥の横顔を見ている内に、ふと思い出した。
昨夜一弥は、俺の布団に入り込んできたんだよな。しかも寒いからと言って、俺にぴったりとくっ付いて……。

敷布団、もう一枚買うかな……。
痛い出費だが、毎晩毎晩ああやって同じ布団で寝る羽目になってはこっちの心臓が持ちそうにない。
パソコンの前で布団を物色しながら唸っていると、ひょいっと一弥が覗き込んできた。

「なに見てるの? 布団?」
「ん? ああ。座布団並べて敷布団代わりじゃ、眠り辛いだろうと思ってさ」
「……俺のため?」
「まあなぁ」

一弥のためとも思ってはいるが、一番は自分のためだ。
だってコイツ……、妙な色気があるんだ。俺はソノ気なんて無いはずだが、それなのにそんな俺でさえ妙な気分にさせられてしまう。
……あれは、いろいろと拙い。

「……いらないのに」
「えっ、はあ?」
「余分な出費だろ? ……2人でくっ付いて寝てる方が、暖かいじゃない」
「……っ、そういう訳にはいかないだろ! だいたいこっちが寝不足に……!」

口走ってしまってから、しまったと思った。
一弥が一瞬目を見開いて、嬉しそうな揶揄うような含みのある笑顔に変わっていったから。

……俺の悶々とした気持ち、絶対バレた。

「いいのに。……俺、健輔になら何されてもいいよ」

背後からピトリとくっ付いて一弥が頬を擦り付けて来た。声音も妙な色気を含んでいる。
しかも、なんだ、急に呼び捨て!

「……な、なに言ってんだっ。揶揄うな」
「揶揄ってないし、本心なんだけどなあ」

ぐうぅぅぅ……。

どうしてだか分からないが、絶対一弥の奴、俺のことを揶揄いがいのある面白いおもちゃだと思っているぞ。翻弄されてる俺も俺だが。

ぽちっ。

「ああっ、もったいない―」
「いいんだ。必要なものは買わないと」
「……いいって言ってるのに」

そんな唇を尖らせて俺を見るな。上目遣いなその表情も止めろ!

――随分懐かれてるよな。


……本当に、そうなんだろうか?
ただ揶揄われているだけのような気がするんだが。

何だか、ドッと疲れた俺だった……。
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