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第一章
美少年の横顔
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行く当てもないから俺を頼ったのだろうけど、それにしても一弥は荷物の一つも持ってはいなかった。
「一弥、しばらくここに居るのは良いとして、コンビニに行って肌着と歯ブラシを買いに行こう。パジャマは一応貸してやるから」
「うん。……でも俺、金持ってない」
「それは気にしないでいい」
「……ごめん」
気にしないでいいと言っているのに、俯き項垂れる一弥。その姿は、どこにでもいる普通の少年のようだ。
やっぱり、彼はローザでは無いのだろうか?
一弥と一緒に、俺は歩いて五分ほどの位置にあるコンビニへと向かった。
明るい店内に入り、肌着を置いてある一角へと進んだ。ボクサーとトランクスの二種類が置かれている。
二人でそれを物色していると、通りかかった女性客がボソボソと何かを喋りながら、頬を染めて一弥を見ていた。
まあこれだけの美少年だ。女の子なら誰だって気になるよな。
一弥はボクサー派のようだ。その中から、濃いグレー1つとネイビー2つを手に取って俺を見た。
「3つ買ってもいい?」
「ああ、もうあと2つくらい買ってもいいぞ?」
「うん……。でもいいや。今穿いてるのと合わせれば4つになるだろ? ちゃんと洗濯すれば足りるし」
「そっか。じゃあ、後は歯ブラシだな。……ドラッグストアまで行けばもうちょっと種類はあるんだろうけど……」
「別にこだわりなんて無いからいいよ。……これ、コンパクトで磨きやすそうだからこれにする」
「わかった。じゃあ、買ってくるから待ってろ」
「うん」
それほど遅い時間じゃないせいか、結構客がいた。おかげでレジは混んでいて少し待たされてしまった。
急いで一弥を待たせたところに戻ったら、一弥の姿が無かった。
あ、あれ?
どこ行ったんだ?
キョロキョロと店内を見回しても探しきれなくて、ふと外を見ると、一弥が三十代くらいの男性に何かを話しかけられているのが見えた。
一弥の迷惑そうな表情が気になって急いで店外へと出た。
「だから連れを待ってるんだって言ってんだろ!」
「おい、どうした!」
切れる一弥に慌てて声を掛けると、向かいにいた男は一瞬ビクッとしてそのまま踵を返しどこかに足早に歩いて行った。
「……なんだったんだ、あれ」
「ナンパだろ? たまにいるんだよ。ああいう奴」
去って行く男に冷えた視線を送るその横顔に、ゾクリとした。
なんと言うか……、一弥には男をもその気にさせる魔性のようなものが備わっているのかもしれない。
それは決して外見の綺麗さだけではない。例えようのない得体のしれないものだった。
「一弥、しばらくここに居るのは良いとして、コンビニに行って肌着と歯ブラシを買いに行こう。パジャマは一応貸してやるから」
「うん。……でも俺、金持ってない」
「それは気にしないでいい」
「……ごめん」
気にしないでいいと言っているのに、俯き項垂れる一弥。その姿は、どこにでもいる普通の少年のようだ。
やっぱり、彼はローザでは無いのだろうか?
一弥と一緒に、俺は歩いて五分ほどの位置にあるコンビニへと向かった。
明るい店内に入り、肌着を置いてある一角へと進んだ。ボクサーとトランクスの二種類が置かれている。
二人でそれを物色していると、通りかかった女性客がボソボソと何かを喋りながら、頬を染めて一弥を見ていた。
まあこれだけの美少年だ。女の子なら誰だって気になるよな。
一弥はボクサー派のようだ。その中から、濃いグレー1つとネイビー2つを手に取って俺を見た。
「3つ買ってもいい?」
「ああ、もうあと2つくらい買ってもいいぞ?」
「うん……。でもいいや。今穿いてるのと合わせれば4つになるだろ? ちゃんと洗濯すれば足りるし」
「そっか。じゃあ、後は歯ブラシだな。……ドラッグストアまで行けばもうちょっと種類はあるんだろうけど……」
「別にこだわりなんて無いからいいよ。……これ、コンパクトで磨きやすそうだからこれにする」
「わかった。じゃあ、買ってくるから待ってろ」
「うん」
それほど遅い時間じゃないせいか、結構客がいた。おかげでレジは混んでいて少し待たされてしまった。
急いで一弥を待たせたところに戻ったら、一弥の姿が無かった。
あ、あれ?
どこ行ったんだ?
キョロキョロと店内を見回しても探しきれなくて、ふと外を見ると、一弥が三十代くらいの男性に何かを話しかけられているのが見えた。
一弥の迷惑そうな表情が気になって急いで店外へと出た。
「だから連れを待ってるんだって言ってんだろ!」
「おい、どうした!」
切れる一弥に慌てて声を掛けると、向かいにいた男は一瞬ビクッとしてそのまま踵を返しどこかに足早に歩いて行った。
「……なんだったんだ、あれ」
「ナンパだろ? たまにいるんだよ。ああいう奴」
去って行く男に冷えた視線を送るその横顔に、ゾクリとした。
なんと言うか……、一弥には男をもその気にさせる魔性のようなものが備わっているのかもしれない。
それは決して外見の綺麗さだけではない。例えようのない得体のしれないものだった。
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