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第一章 禁足地
◇嘘も方便と言うけれど。
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ゆらゆらと揺れる身体に麗らかな陽射しが降り注ぎ、長閑な安寧を運んでくる。それに輪を掛け、微かに聞こえる水を掻き分ける音と、それに合わせたような掛け声が妙に小気味好く感じ、ゆったりとした心持ちにさせる。その穏やかな心地よさが、微睡む意識の覚醒を拒んでいた。
だがその時、誰かの手のひらが、額を触った気がした。その感触に、意識が唐突に戻ってくる。しかし、まだ微睡んでいたいという思いが、その手を掴み顔をしかめさせていた。
「あっ……起こしたみたいで……すみません」
顔の直ぐ近くから、小鳥のさえずりのような可愛らしい声が聞こえてきた。
その聞き覚えのない声に、ようやく重い瞼を開ける。
目の前では、栗色の髪をした可愛らしい娘さんが、顔を真っ赤にして頻りに謝っていた。
――えっと、誰?
あぁ、確か……サラの侍女みたいな人で、カリナとか言ったっけ。
掴んだカリナの手には、濡れたタオルが握られている。どうやら、彼女が介抱してくれていたようだ。
――そうか、マーダートレントと戦った後、また魔力切れを起こして気を失っていたんだな。
こうして俺やこの娘が無事だという事は、どうやらマーダートレント自体は討ち取れていたようだな。その事に安堵して、ほっとする。そして、急速に覚醒する意識の中で、今までの出来事に、やっぱりあれは夢じゃなかったのかと何度目かのため息を溢していた。
それを勘違いしたのか、カリナがあたふたと栗色の髪を揺らして、「すみません」と、何度も頭を下げている。
それが、どうにも小動物のようで、思わず笑ってしまう。
「えっと、今起きようとしてたところだから、大丈夫だよ」
安心させようと笑顔で話し掛けるが、カリナは顔を真っ赤にしたまま、もじもじとしている。
「……あのぅ、手を……」
俺は、カリナの手首を握りしめたままだったのだ。
「あっ、ごめん……」
慌てて手を離す。顔を真っ赤にしたカリナを見ていると、こっちまで恥ずかしくなり、顔が火照ってくるのが分かる。これだと、まるで十代のガキだな。自分の事ながら、呆れてしまう。
「あっ、お嬢様を呼んできますね」
カリナも慌てて走り出そうとしたが、途中で立ち止まると踵を返して頭を下げた。
「えっと、昨晩はありがとうございます。あのままだと、私の失敗で皆が大変な事に……本当に、ありがとうございます」
――ん? 何の事だ。
俺が怪訝な顔をしていたのに気付いたカリナが、神妙な顔をして話し掛けてくる。
「私が回復薬を船に積み損ねたために、貴重な回復薬を提供していただいて……」
――あぁ、その事か。
「いいよ、いいよ」
霊薬は、まだまだ沢山あるからね。
片手を上げてひらひら振りつつ笑顔を見せると、カリナがもう一度深々と頭を下げていた。
「では直ぐに、お嬢様をお呼びします」
そう言って、今度こそ本当に走り去った。
うん、真面目な娘さんだな。サラが近付き難い美女なら、こっちはクラスに一人はいる、優等生タイプの可愛らしい娘さんといった感じかな。
確かに、霊薬の件は勿体ない気もするけど。
こうして、カリナのような娘さんに頭を下げられると、まあ、いいかって気にもなるよな。俺も健康な男だから仕様が無いよ。
走り去るカリナを見送りつつ苦笑いを浮かべ周りを見渡すと、俺は船の甲板で寝かされていたようだった。
俺が寝かされていた船は、密林を切り裂き流れる大河の上を、滑るように進んでいる。
船の中央に目を向けると、小さな小屋のような物があった。カリナがそこに入って行ったので、サラ達はそこにいるのだろう。
そして、その前方の船首には一人のヒューマンが、太鼓らしき物を叩いている。
その音に合わせて、舷側に座って並ぶヒューマン達が、「エイ、ホウ」と、掛け声を掛けながら櫂を漕いでいた。
微睡む間に聞いていたのはこの声かと思いながら、何気なく後ろを振り返る。と、そこには、にやにやと笑うタンガがいた。
「ヒューマン、意外と初心(うぶ)なところがあるな」
――げっ、もしかしてカリナとの事を見られてた?
タンガが、「くっくく」と、含み笑いをしていたが、最後には破顔して大笑いしていた。
「参ったな……いたなら声をかけろよな」
俺は照れ隠しに、憮然とした態度になってしまう。
「はっはは、そう怒るな。それだけ、お前が素直で良いやつだという証拠だ」
「ちっ、言ってろ。それで、俺達は今どうなってんだ?」
気を失ってる間に船に乗せられて、どこかに向かってるようなのだが、訳が分からず尋ねてみた。
「あぁ、今は森都グラナダへ帰る途中だ」
「えっ、儀式は?」
確か、大祓の儀式とかいうものを行うために、ここまで来たとか聞いていたけど。
「大祓の儀式は、お前が寝てる間に終っちまったよ」
えっ、まじで……なんだよう、儀式には興味があったから見てみたかったのに……。
「それでお前の事なのだが……」
タンガが急に顔を曇らせ、歯切れが悪くなる。
言い淀むタンガを、不審に思い眺めていると、背後から声を掛けられた。
「その続きは私から話そう」
その声に振り返ると、相変わらずの神々しい美しさを全身から発散させる、美女エルフのサラがこちらに近付いて来る所だった。その後ろにはカリナや、クルスをはじめとする獣人達を引き連れていた。
しかし、獣人達の様子が、どうにも妙な感じだった。
「おい、タンガ! そいつから離れてろ。そいつは魔物だぞ!」
突然、クルスが俺を睨み付けながら怒声を放つ。
――んっ? 魔物って俺のこと?
カリナは申し訳なさそうな表情を浮かべているが、獣人達の半数は剣呑な様子で、中には剣の柄に手をかけている者までいる。残りの者も、迷っているような複雑な表情を浮かべていた。
まぁ、グイドについては良く分からないが……。
しかし、それにしても、俺が魔物とはどういう事なのだろう。その事に訝しく思っていると、目の前でタンガとクルスが言い争いを始めた。
「クルス、だから言ってるだろ。こいつは、能力に長けているが、普通のヒューマンと何も変わらない。実際に話をしてみて、今は友人になり得る男だと俺は思っている」
「はっ、ヒューマンの友人だと、お前は頭がおかしくなっちまったのかよ。それに、そいつはヒューマンどころか、魔物に違いない。俺が正体を暴いてやる!」
クルスはそう言うと、一歩前に出て剣の柄に手をかけた。それを見たタンガも、前に出てクルスと睨み合う。
お互いを睨み付ける二人は、たちまち一触即発な危険な雰囲気となった。
何故、こうなる。
原因は俺なのだろうけど、さっぱり訳が分からない。
俺って、頑張ってたよな。褒められることはあっても、魔物呼ばわりされて嫌われるような事はしてなかったつもりなんだけど。
俺が、そんな事を考えている間も、二人の争いは続いていた。
「クルス、頭がどうにかなってるのは、お前の方だろ。グールの時には、こいつにも責任が合ったかも知れないが、グールの大群に襲われた時にも、あのトレントとの戦いの時も、このヒューマンに助けられただろうが」
「だから、それが誑かしてるってことだ。何の目的があってか知らないが、こいつは俺達の中に紛れ込もうとしてる魔物に間違いない」
タンガは「馬鹿な事を」と呟き、クルスの後ろにいる獣人達にも目を向ける。
「お前らも同じ考えなのか? このヒューマンがいなかったら、お前達の中の何人かは……いや、それどころか、全員が命を落としていたかも知れないというのに……」
タンガの言葉に、クルスに同調して殺気だっていた獣人達が、視線を反らして顔を伏せる。
えぇと、俺には何が何やら、さっぱり話が見えてこないのだが。一体、気を失ってる間に、何があったのやら。
俺は呆気に取られて、二人の争いを見守るしかなかった。
しかしその時、周りの獣人達の様子を見ていたサラが、クルスの肩に手を置いて話し出した。
「二人共、もう、それぐらいにしておけ。それに、クルス。今は私が話をしようとしていたのだ」
「あっ、すまねぇ、お嬢」
サラの冷たい視線に射竦められて、途端にクルスがその身を縮めていた。そのサラが、厳しい視線を俺にも向けてくる。
「それで、ヒューマン。お前は本当のところ、魔物なのかヒューマンなのかどっちなのだ」
――はぁ……意味が分からん。
「どっから俺が魔物なんて話に成ってるのか、そこからが既に分からないのですけど」
俺のその答えに、サラが「ふむ」と頷くと、胡散臭そうに、じろじろと俺を眺め回す。
いやぁ、何か凄く居心地が悪いから、その視線は止めてもらえますか。
「……ヒューマンでありながら魔法を使えた事は、私の長年の研究テーマでもあるから、ある程度は納得ができる。しかし……お前は、トレントとの戦いの時に、その身体を分裂させた。そのような事は、ヒューマンどころか、我らエルフの一族であっても出来ぬ事だ。人である限り、身体を分裂させるなど不可能。それこそ、魔物でもない限り」
そう言うと、サラはまた探るような視線を、俺に向けてきた。
――あぁ、あの【影分身の陣、千人掌】のスキルの事か。
確かに、あれは端から見ると、分裂したように見える……か。スキルで分身を産み出してるだけなのだが、どうやって説明すれば……。
俺にも、スキル自体がどういった現象なのか知らないのに、どう説明すれば良いの分からない。
迷っていると、サラが尚も話し掛けてくる。
「クルス達は、危険だからと、お前をあの場に置いていけと言っていたが、タンガとグイドが反対してな。私も助けてもらった者をあの場に放置して、魔獣に襲われでもしたらと考えると、どうにも寝覚めが悪いので、一応は船に乗せたのだ。で、実際には、どうなのだ。お前は魔物なのか? 今度は真実を話してもらおう」
サラが目を細めて俺を見詰める。獣人達も、タンガも、固唾を飲み俺を見詰めていた。その上、カリナをはじめとするヒューマン達も、素知らぬ顔をしながらも、聞き耳を立てているのが分かる。
――うぅん、参ったな。
そうは言っても、ゲームをしてたらこの世界に来ましたと、正直に話して信じてもらえるのかどうか。そもそも、その前提にある、ヴァーチャルゲームや俺のいた世界自体を説明するのも大変そうだ。だからと言って、前に話した、田舎で爺さんに育てられたと言っても、通用しそうにないしなぁ。
やはり、皆が納得出来そうな話を……。
俺は悩んだ末に、今までアニメや小説等で見聞きした話を繋ぎ合わせて、物語を作り上げ話す事にする。
「ふっ、仕方ない。本当の事を話そう。俺は、ヒューマンの上位種、ハイヒューマンなのだ」
「……ハイヒューマン?」
実際には、そんな種族はゲーム内にも存在しなかったのだが、とりあえず、それらしい事を言ってみる。
すると、サラが大きく目を見開き、驚いた表情をみせていた。しかし、それに構わず、俺は話を続ける。
「そう、お前達が分裂と言っていた技は、あれも魔法の一種。大気に漂う魔素を集めて魔力に変換する。それが俺達ハイヒューマンが使う魔法なのだ。その魔素で、自分の分身である疑似生命体を作りだしたのが、あのトレントとの戦いで見せた魔法だ」
俺は微笑を浮かべ、最もらしく適当に話をするが、クルスがその話に直ぐ食い付いた。
「ハイヒューマンだと、そんな種族は聞いた事もないぞ。嘘を付くならもっとましな嘘を吐きやがれ!」
「そうか、今のこの時代には、ハイヒューマンはもういないのか……」
少し憂いの含んだ顔を見せてやると、今度はサラがその話に食い付く。
「今、この時代と言ったのか。まさか、お前は……」
「そう……俺は遥かな昔より、時を越えてこの時代にやってきた。俺のいた時代では、邪神ザカルタが世界を滅ぼそうとしていた。しかし、世界中の人々が、それに対抗するために戦っていた。そう、ヒューマンも獣人もエルフ達も、全ての人々がな。それは苛烈な戦いだった。邪神率いる闇の軍勢との、世界の運命を掛けた最終決戦だったのだ」
そこで俺が言葉を切り皆を見渡すと、サラは大きく目を見開いたまま、獣人達は「おぉ」と、感嘆の声を上げて聞き入っている。
タンガに至っては、「それでどうなったのだ」と、続きの話を促してくるほどだ。
そこで俺は、『ゼノン・クロニクル』の中での半年に及ぶ戦いの日々を、他のプレイヤーの話も交え、微に入り細に入り渡って、あたかも真実かのように話した聞かせた。
「……というわけで、俺は遂に、『断罪の塔』の最上階にある“深淵の間”で、邪神ザカルタを倒したのだ。だが、邪神ザカルタの最後の足掻きともいえる力で、別の時代へと飛ばされてしまった。その際に、俺の力も大半を失ってしまったというわけだ」
俺が長い作り話を終わると、皆が呆けたような顔で固まっていた。
――しまった、ちょっと話を大袈裟に盛り過ぎたかな。
しかし、そう思った次の瞬間には、「おぉ!」と、皆が顔を輝かせ歓声を上げていたのだ。
「それは正しく、神話時代の……邪神ザカルタの話。切れ切れに伝わる話とも符合する。しかも……私の研究テーマでもある、かつては全ての人々が魔法を使えたといった話とも合致する。ハイヒューマン……いや、それなら、今のヒューマンが退化したと考えると……」
サラがぶつぶつと呟き、自分の考えに没頭しだし、獣人達はお互いの顔を見渡し驚いていた。
タンガに至っては、「すげぇなお前」と言って、ばしばしとまた俺の背中を叩いていた。
――あれっ、邪神ザカルタって、本当にいたの?
結局、半信半疑ながら、大昔から時を越えてきたといった話は、信じてもらえたようだった。俺が見せた様々な奇跡のような出来事が、決め手となったようだ。
過去には、長い時ではないが、魔力を暴走させたエルフが、数年の時を越えた事例が数件あったようで、その事もあってか、ある程度は信用されたみたいだった。
だから、概ね別の時代のヒューマンだと認めてもらえた。もっとも、邪神を俺が倒したくだりの話については、オーバーに話してるのだろうて思われている。
そして、ある程度認められた俺は、サラ達一行と同行する事となった。それから順調に旅は続き、1週間ほど経つ頃には森都グラナダへとあと少しの所まで来ていた。今回のサラ達の目的は不浄の森の調査と、大祓の儀式。その内の儀式については問題なく執り行われたようだが、調査に関しては色々と問題が残った。グールの大量発生といい、トレントの変異種も。それにあの黒いモノリスも、結局は謎のままだったからだ。
俺にとっては、ゲーム内では見慣れた物だったが、説明のしようがなかったので、黙ったまま秘密にしている。 だから、サラは装備や人数を揃えて、もう一度大規模な調査隊を組むと言っていた。
その際、不浄の森のある方向を見詰めて、意欲的な表情を見せていた。まるで、“アイシャルリターン”とでも言いそうな雰囲気だった。
その時は、俺にも一緒に来てもらうと言っていたが、リアルホラーと出会うのは、もう勘弁してもらいたいものだ。
そして、この1週間、途中の拓けた岸辺で野営を取りながら進むが、何の問題もなかった。
これだけの大人数の上に、川船にしては大きな帆船のお陰で、大抵の魔獣は出会う前に逃げ出すからだ。
それにしても、あの作り話を信じてもらえて良かった。この1週間は、人里と呼べる物がひとつも無かったからだ。延々と続く密林に、もし信用されず、この集団から放り出されていたらと考えるとぞっとする。
そんな事を考えていた俺は、船の前方を見詰めて驚きの声をあげる。
「おい、あれは海じゃないのか。確か、森都に向かうと言っていたよな」
船は河口を通りすぎ、洋上に出ようとしていたのだ。てっきり、森都と呼ばれるぐらいだから、森の中にある街に向かっていると思っていたのだが……。
不審な様子を浮かべる俺に、横にいたタンガが笑って答えてくれる。
「あぁ、お前は知らなかったか。俺達の国の首都グラナダは森都と呼ばれているが、実は森の中にはない。大昔は確かに、森の中にあったようだが、その大昔に大きな戦があってな、今は森の中にないのだ。ただ、昔からの呼び習わしで森都グラナダと呼ばれている」
ふぅん、もしかして不浄の森の呼ばれている、あの地の近くに有ったのかも知れないな。
「ここまで来れば、もう着いたも同じだ。あと少しで忙しくなりそうだから、今の内に昼飯でも食おうぜ」
そう言って、昼飯を誘うタンガとは、すっかりと意気投合している。
あの魔物に疑われた時も、タンガは気を失っていた俺の側から離れず、周りの悪意から俺を守っていたらしい。後から、その話をカリナから聞いて、少なからず感動したものだ。
タンガに礼を言うと、「なぁに、耳を再生してもらったからな」と、照れたように笑っていた。
本当に、タンガは良いやつだと思う。少々、雑で脳筋っぽいけど。
しかし、そんなタンガとは違ってクルスは、未だに疑いの眼差しで俺を見ている。
顔を遭わす度に、「いつか、正体を暴いてやる」とか言ってくるのには閉口してしまう。
そして、それよりも更に閉口するのが、カリナ達ヒューマン達だった。
まるでアイドルスターを見るように、目を輝かして俺の事をみている。中には「ハイヒューマン様」と、拝むやつもいる始末だ。これには、ほとほと困り果て、話を大袈裟にし過ぎたと後悔している。
そんな感じで、この1週間を過ごしていたのだ。
それから暫く海岸沿いを進んだ船が、ようやく森都グラナダに到着した。
皆の歓声に誘われ目を向けると、森から突き出た岬の突端に、天に届きそうな程の高い灯台のような塔が目に映る。
どうやら、その灯台の周りに森都グラナダがつくられているようだった。
俺は期待半分、不安が半分といった心持ちで、それを眺めていたのだ。
だがその時、誰かの手のひらが、額を触った気がした。その感触に、意識が唐突に戻ってくる。しかし、まだ微睡んでいたいという思いが、その手を掴み顔をしかめさせていた。
「あっ……起こしたみたいで……すみません」
顔の直ぐ近くから、小鳥のさえずりのような可愛らしい声が聞こえてきた。
その聞き覚えのない声に、ようやく重い瞼を開ける。
目の前では、栗色の髪をした可愛らしい娘さんが、顔を真っ赤にして頻りに謝っていた。
――えっと、誰?
あぁ、確か……サラの侍女みたいな人で、カリナとか言ったっけ。
掴んだカリナの手には、濡れたタオルが握られている。どうやら、彼女が介抱してくれていたようだ。
――そうか、マーダートレントと戦った後、また魔力切れを起こして気を失っていたんだな。
こうして俺やこの娘が無事だという事は、どうやらマーダートレント自体は討ち取れていたようだな。その事に安堵して、ほっとする。そして、急速に覚醒する意識の中で、今までの出来事に、やっぱりあれは夢じゃなかったのかと何度目かのため息を溢していた。
それを勘違いしたのか、カリナがあたふたと栗色の髪を揺らして、「すみません」と、何度も頭を下げている。
それが、どうにも小動物のようで、思わず笑ってしまう。
「えっと、今起きようとしてたところだから、大丈夫だよ」
安心させようと笑顔で話し掛けるが、カリナは顔を真っ赤にしたまま、もじもじとしている。
「……あのぅ、手を……」
俺は、カリナの手首を握りしめたままだったのだ。
「あっ、ごめん……」
慌てて手を離す。顔を真っ赤にしたカリナを見ていると、こっちまで恥ずかしくなり、顔が火照ってくるのが分かる。これだと、まるで十代のガキだな。自分の事ながら、呆れてしまう。
「あっ、お嬢様を呼んできますね」
カリナも慌てて走り出そうとしたが、途中で立ち止まると踵を返して頭を下げた。
「えっと、昨晩はありがとうございます。あのままだと、私の失敗で皆が大変な事に……本当に、ありがとうございます」
――ん? 何の事だ。
俺が怪訝な顔をしていたのに気付いたカリナが、神妙な顔をして話し掛けてくる。
「私が回復薬を船に積み損ねたために、貴重な回復薬を提供していただいて……」
――あぁ、その事か。
「いいよ、いいよ」
霊薬は、まだまだ沢山あるからね。
片手を上げてひらひら振りつつ笑顔を見せると、カリナがもう一度深々と頭を下げていた。
「では直ぐに、お嬢様をお呼びします」
そう言って、今度こそ本当に走り去った。
うん、真面目な娘さんだな。サラが近付き難い美女なら、こっちはクラスに一人はいる、優等生タイプの可愛らしい娘さんといった感じかな。
確かに、霊薬の件は勿体ない気もするけど。
こうして、カリナのような娘さんに頭を下げられると、まあ、いいかって気にもなるよな。俺も健康な男だから仕様が無いよ。
走り去るカリナを見送りつつ苦笑いを浮かべ周りを見渡すと、俺は船の甲板で寝かされていたようだった。
俺が寝かされていた船は、密林を切り裂き流れる大河の上を、滑るように進んでいる。
船の中央に目を向けると、小さな小屋のような物があった。カリナがそこに入って行ったので、サラ達はそこにいるのだろう。
そして、その前方の船首には一人のヒューマンが、太鼓らしき物を叩いている。
その音に合わせて、舷側に座って並ぶヒューマン達が、「エイ、ホウ」と、掛け声を掛けながら櫂を漕いでいた。
微睡む間に聞いていたのはこの声かと思いながら、何気なく後ろを振り返る。と、そこには、にやにやと笑うタンガがいた。
「ヒューマン、意外と初心(うぶ)なところがあるな」
――げっ、もしかしてカリナとの事を見られてた?
タンガが、「くっくく」と、含み笑いをしていたが、最後には破顔して大笑いしていた。
「参ったな……いたなら声をかけろよな」
俺は照れ隠しに、憮然とした態度になってしまう。
「はっはは、そう怒るな。それだけ、お前が素直で良いやつだという証拠だ」
「ちっ、言ってろ。それで、俺達は今どうなってんだ?」
気を失ってる間に船に乗せられて、どこかに向かってるようなのだが、訳が分からず尋ねてみた。
「あぁ、今は森都グラナダへ帰る途中だ」
「えっ、儀式は?」
確か、大祓の儀式とかいうものを行うために、ここまで来たとか聞いていたけど。
「大祓の儀式は、お前が寝てる間に終っちまったよ」
えっ、まじで……なんだよう、儀式には興味があったから見てみたかったのに……。
「それでお前の事なのだが……」
タンガが急に顔を曇らせ、歯切れが悪くなる。
言い淀むタンガを、不審に思い眺めていると、背後から声を掛けられた。
「その続きは私から話そう」
その声に振り返ると、相変わらずの神々しい美しさを全身から発散させる、美女エルフのサラがこちらに近付いて来る所だった。その後ろにはカリナや、クルスをはじめとする獣人達を引き連れていた。
しかし、獣人達の様子が、どうにも妙な感じだった。
「おい、タンガ! そいつから離れてろ。そいつは魔物だぞ!」
突然、クルスが俺を睨み付けながら怒声を放つ。
――んっ? 魔物って俺のこと?
カリナは申し訳なさそうな表情を浮かべているが、獣人達の半数は剣呑な様子で、中には剣の柄に手をかけている者までいる。残りの者も、迷っているような複雑な表情を浮かべていた。
まぁ、グイドについては良く分からないが……。
しかし、それにしても、俺が魔物とはどういう事なのだろう。その事に訝しく思っていると、目の前でタンガとクルスが言い争いを始めた。
「クルス、だから言ってるだろ。こいつは、能力に長けているが、普通のヒューマンと何も変わらない。実際に話をしてみて、今は友人になり得る男だと俺は思っている」
「はっ、ヒューマンの友人だと、お前は頭がおかしくなっちまったのかよ。それに、そいつはヒューマンどころか、魔物に違いない。俺が正体を暴いてやる!」
クルスはそう言うと、一歩前に出て剣の柄に手をかけた。それを見たタンガも、前に出てクルスと睨み合う。
お互いを睨み付ける二人は、たちまち一触即発な危険な雰囲気となった。
何故、こうなる。
原因は俺なのだろうけど、さっぱり訳が分からない。
俺って、頑張ってたよな。褒められることはあっても、魔物呼ばわりされて嫌われるような事はしてなかったつもりなんだけど。
俺が、そんな事を考えている間も、二人の争いは続いていた。
「クルス、頭がどうにかなってるのは、お前の方だろ。グールの時には、こいつにも責任が合ったかも知れないが、グールの大群に襲われた時にも、あのトレントとの戦いの時も、このヒューマンに助けられただろうが」
「だから、それが誑かしてるってことだ。何の目的があってか知らないが、こいつは俺達の中に紛れ込もうとしてる魔物に間違いない」
タンガは「馬鹿な事を」と呟き、クルスの後ろにいる獣人達にも目を向ける。
「お前らも同じ考えなのか? このヒューマンがいなかったら、お前達の中の何人かは……いや、それどころか、全員が命を落としていたかも知れないというのに……」
タンガの言葉に、クルスに同調して殺気だっていた獣人達が、視線を反らして顔を伏せる。
えぇと、俺には何が何やら、さっぱり話が見えてこないのだが。一体、気を失ってる間に、何があったのやら。
俺は呆気に取られて、二人の争いを見守るしかなかった。
しかしその時、周りの獣人達の様子を見ていたサラが、クルスの肩に手を置いて話し出した。
「二人共、もう、それぐらいにしておけ。それに、クルス。今は私が話をしようとしていたのだ」
「あっ、すまねぇ、お嬢」
サラの冷たい視線に射竦められて、途端にクルスがその身を縮めていた。そのサラが、厳しい視線を俺にも向けてくる。
「それで、ヒューマン。お前は本当のところ、魔物なのかヒューマンなのかどっちなのだ」
――はぁ……意味が分からん。
「どっから俺が魔物なんて話に成ってるのか、そこからが既に分からないのですけど」
俺のその答えに、サラが「ふむ」と頷くと、胡散臭そうに、じろじろと俺を眺め回す。
いやぁ、何か凄く居心地が悪いから、その視線は止めてもらえますか。
「……ヒューマンでありながら魔法を使えた事は、私の長年の研究テーマでもあるから、ある程度は納得ができる。しかし……お前は、トレントとの戦いの時に、その身体を分裂させた。そのような事は、ヒューマンどころか、我らエルフの一族であっても出来ぬ事だ。人である限り、身体を分裂させるなど不可能。それこそ、魔物でもない限り」
そう言うと、サラはまた探るような視線を、俺に向けてきた。
――あぁ、あの【影分身の陣、千人掌】のスキルの事か。
確かに、あれは端から見ると、分裂したように見える……か。スキルで分身を産み出してるだけなのだが、どうやって説明すれば……。
俺にも、スキル自体がどういった現象なのか知らないのに、どう説明すれば良いの分からない。
迷っていると、サラが尚も話し掛けてくる。
「クルス達は、危険だからと、お前をあの場に置いていけと言っていたが、タンガとグイドが反対してな。私も助けてもらった者をあの場に放置して、魔獣に襲われでもしたらと考えると、どうにも寝覚めが悪いので、一応は船に乗せたのだ。で、実際には、どうなのだ。お前は魔物なのか? 今度は真実を話してもらおう」
サラが目を細めて俺を見詰める。獣人達も、タンガも、固唾を飲み俺を見詰めていた。その上、カリナをはじめとするヒューマン達も、素知らぬ顔をしながらも、聞き耳を立てているのが分かる。
――うぅん、参ったな。
そうは言っても、ゲームをしてたらこの世界に来ましたと、正直に話して信じてもらえるのかどうか。そもそも、その前提にある、ヴァーチャルゲームや俺のいた世界自体を説明するのも大変そうだ。だからと言って、前に話した、田舎で爺さんに育てられたと言っても、通用しそうにないしなぁ。
やはり、皆が納得出来そうな話を……。
俺は悩んだ末に、今までアニメや小説等で見聞きした話を繋ぎ合わせて、物語を作り上げ話す事にする。
「ふっ、仕方ない。本当の事を話そう。俺は、ヒューマンの上位種、ハイヒューマンなのだ」
「……ハイヒューマン?」
実際には、そんな種族はゲーム内にも存在しなかったのだが、とりあえず、それらしい事を言ってみる。
すると、サラが大きく目を見開き、驚いた表情をみせていた。しかし、それに構わず、俺は話を続ける。
「そう、お前達が分裂と言っていた技は、あれも魔法の一種。大気に漂う魔素を集めて魔力に変換する。それが俺達ハイヒューマンが使う魔法なのだ。その魔素で、自分の分身である疑似生命体を作りだしたのが、あのトレントとの戦いで見せた魔法だ」
俺は微笑を浮かべ、最もらしく適当に話をするが、クルスがその話に直ぐ食い付いた。
「ハイヒューマンだと、そんな種族は聞いた事もないぞ。嘘を付くならもっとましな嘘を吐きやがれ!」
「そうか、今のこの時代には、ハイヒューマンはもういないのか……」
少し憂いの含んだ顔を見せてやると、今度はサラがその話に食い付く。
「今、この時代と言ったのか。まさか、お前は……」
「そう……俺は遥かな昔より、時を越えてこの時代にやってきた。俺のいた時代では、邪神ザカルタが世界を滅ぼそうとしていた。しかし、世界中の人々が、それに対抗するために戦っていた。そう、ヒューマンも獣人もエルフ達も、全ての人々がな。それは苛烈な戦いだった。邪神率いる闇の軍勢との、世界の運命を掛けた最終決戦だったのだ」
そこで俺が言葉を切り皆を見渡すと、サラは大きく目を見開いたまま、獣人達は「おぉ」と、感嘆の声を上げて聞き入っている。
タンガに至っては、「それでどうなったのだ」と、続きの話を促してくるほどだ。
そこで俺は、『ゼノン・クロニクル』の中での半年に及ぶ戦いの日々を、他のプレイヤーの話も交え、微に入り細に入り渡って、あたかも真実かのように話した聞かせた。
「……というわけで、俺は遂に、『断罪の塔』の最上階にある“深淵の間”で、邪神ザカルタを倒したのだ。だが、邪神ザカルタの最後の足掻きともいえる力で、別の時代へと飛ばされてしまった。その際に、俺の力も大半を失ってしまったというわけだ」
俺が長い作り話を終わると、皆が呆けたような顔で固まっていた。
――しまった、ちょっと話を大袈裟に盛り過ぎたかな。
しかし、そう思った次の瞬間には、「おぉ!」と、皆が顔を輝かせ歓声を上げていたのだ。
「それは正しく、神話時代の……邪神ザカルタの話。切れ切れに伝わる話とも符合する。しかも……私の研究テーマでもある、かつては全ての人々が魔法を使えたといった話とも合致する。ハイヒューマン……いや、それなら、今のヒューマンが退化したと考えると……」
サラがぶつぶつと呟き、自分の考えに没頭しだし、獣人達はお互いの顔を見渡し驚いていた。
タンガに至っては、「すげぇなお前」と言って、ばしばしとまた俺の背中を叩いていた。
――あれっ、邪神ザカルタって、本当にいたの?
結局、半信半疑ながら、大昔から時を越えてきたといった話は、信じてもらえたようだった。俺が見せた様々な奇跡のような出来事が、決め手となったようだ。
過去には、長い時ではないが、魔力を暴走させたエルフが、数年の時を越えた事例が数件あったようで、その事もあってか、ある程度は信用されたみたいだった。
だから、概ね別の時代のヒューマンだと認めてもらえた。もっとも、邪神を俺が倒したくだりの話については、オーバーに話してるのだろうて思われている。
そして、ある程度認められた俺は、サラ達一行と同行する事となった。それから順調に旅は続き、1週間ほど経つ頃には森都グラナダへとあと少しの所まで来ていた。今回のサラ達の目的は不浄の森の調査と、大祓の儀式。その内の儀式については問題なく執り行われたようだが、調査に関しては色々と問題が残った。グールの大量発生といい、トレントの変異種も。それにあの黒いモノリスも、結局は謎のままだったからだ。
俺にとっては、ゲーム内では見慣れた物だったが、説明のしようがなかったので、黙ったまま秘密にしている。 だから、サラは装備や人数を揃えて、もう一度大規模な調査隊を組むと言っていた。
その際、不浄の森のある方向を見詰めて、意欲的な表情を見せていた。まるで、“アイシャルリターン”とでも言いそうな雰囲気だった。
その時は、俺にも一緒に来てもらうと言っていたが、リアルホラーと出会うのは、もう勘弁してもらいたいものだ。
そして、この1週間、途中の拓けた岸辺で野営を取りながら進むが、何の問題もなかった。
これだけの大人数の上に、川船にしては大きな帆船のお陰で、大抵の魔獣は出会う前に逃げ出すからだ。
それにしても、あの作り話を信じてもらえて良かった。この1週間は、人里と呼べる物がひとつも無かったからだ。延々と続く密林に、もし信用されず、この集団から放り出されていたらと考えるとぞっとする。
そんな事を考えていた俺は、船の前方を見詰めて驚きの声をあげる。
「おい、あれは海じゃないのか。確か、森都に向かうと言っていたよな」
船は河口を通りすぎ、洋上に出ようとしていたのだ。てっきり、森都と呼ばれるぐらいだから、森の中にある街に向かっていると思っていたのだが……。
不審な様子を浮かべる俺に、横にいたタンガが笑って答えてくれる。
「あぁ、お前は知らなかったか。俺達の国の首都グラナダは森都と呼ばれているが、実は森の中にはない。大昔は確かに、森の中にあったようだが、その大昔に大きな戦があってな、今は森の中にないのだ。ただ、昔からの呼び習わしで森都グラナダと呼ばれている」
ふぅん、もしかして不浄の森の呼ばれている、あの地の近くに有ったのかも知れないな。
「ここまで来れば、もう着いたも同じだ。あと少しで忙しくなりそうだから、今の内に昼飯でも食おうぜ」
そう言って、昼飯を誘うタンガとは、すっかりと意気投合している。
あの魔物に疑われた時も、タンガは気を失っていた俺の側から離れず、周りの悪意から俺を守っていたらしい。後から、その話をカリナから聞いて、少なからず感動したものだ。
タンガに礼を言うと、「なぁに、耳を再生してもらったからな」と、照れたように笑っていた。
本当に、タンガは良いやつだと思う。少々、雑で脳筋っぽいけど。
しかし、そんなタンガとは違ってクルスは、未だに疑いの眼差しで俺を見ている。
顔を遭わす度に、「いつか、正体を暴いてやる」とか言ってくるのには閉口してしまう。
そして、それよりも更に閉口するのが、カリナ達ヒューマン達だった。
まるでアイドルスターを見るように、目を輝かして俺の事をみている。中には「ハイヒューマン様」と、拝むやつもいる始末だ。これには、ほとほと困り果て、話を大袈裟にし過ぎたと後悔している。
そんな感じで、この1週間を過ごしていたのだ。
それから暫く海岸沿いを進んだ船が、ようやく森都グラナダに到着した。
皆の歓声に誘われ目を向けると、森から突き出た岬の突端に、天に届きそうな程の高い灯台のような塔が目に映る。
どうやら、その灯台の周りに森都グラナダがつくられているようだった。
俺は期待半分、不安が半分といった心持ちで、それを眺めていたのだ。
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